「決闘を見たのは初めてですけど、見応えありましたね!」
「どういう装備が欲しがられるのかとか、インスピレーションが湧く」
「基本オーダーメイドですからね私達。素材が足りると良いんですけど……あの、スポンサー?」
「……よろ」
『その時は任せるといいガメー』
さて、早いもので”トーナメント“六日目。
初日の”トーナメント“を進んだシャワーだが、惜しくは決勝にて敗れた。
相手は確か……そう、”酒池肉林“のレイレイ。なんか知り合いと名前が似てるが気にしてはいけない。
正直、惜しいところまでは行ったんだ。
シャワーの持つあっち由来の技術でレイレイのエゲツない<エンブリオ>の効果を打ち消し、高いステータスで三分以内での撃破を目指した。
MPも存分に使い倒しあと一歩のところまで来たのだが、レイレイの必殺スキルを使われて敗れてしまった。
物理で押す今のシャワーとは相性が悪かった【剣王】も初日に参加してたみたいで、それがレイレイに倒されたからもしや、なんて思ったのだが……でも<デス・ピリオド>所属らしいし、戦力増強にはなったと思うから良いとしよう。
「───あれ、良いんですかね?」
『ん?』
シャワーが隣で話しかけてきたので応じる。
あぁ、シャワーが勝てなかったことを良しとする、というさっき考えていたことではない。思考を読んだわけでもあるまいしな。
……考えてみたらシャワーなら出来るな。いや俺には【ドラグウォール】あるから意味ないけど。
「……何が?」
「確かに今の私達……というか、シャワーさんならモンスターを倒して素材を集められますよね」
「あ、違います! 今日の優勝者は【抜刀神】カシミヤって子ですけど……相手がアレですから、逃げられそうだなぁって」
『あー、それか。まぁ確かにそうガメ』
【抜刀神】カシミヤ。
見た目も実年齢もほぼ変わりない、恐らく俺と同じように単純な技量のみで超級職に到達した猛者だろう。<マスター>としては珍しい部類に入る。
そういった手合いは天地にいる、今は確か”
あー話が逸れたな。
ともかくカシミヤは六日目の”トーナメント“に優勝。珠に眠る<UBM>と対峙し、特典武具を得る権利を得た。
で、その相手にする<UBM>が問題なわけだ。
『神話級よりも上だしな、今日の<UBM>』
「「「え?」」」
百々目、ブック、Qの声が重なる。
神話級よりも上、と言われてもあんまりわかんないだろうな。何せゲームの公式として存在するのは神話級までで、あとは<SUBM>くらいだ。
いや、だから<SUBM>が封じられているのかと驚いてもいるのか。
『ちなみに<SUBM>じゃないガメ。特典武具は複数貰えないが、<SUBM>に匹敵する<UBM>は両手の指じゃ足りないくらいにはいるガメ』
「そうなんですか!?」
「初めて知った……」
うんうんと頷くQ。二人に同意している。
三人とも、そういった知識は持ち合わせていなかったらしい。誰かに教えられることもなかったようだ。
多分そういう教える枠が俺なのだろうが、聞かれてこなかったし機会もなかったからなぁ。
「でも、なんか変なんですよねぇ」
『ふむ。というと?』
「いえ、魂に異常はなさそうにも見えるんですけど……
『おう、俺にもそう視えるガメ』
実際、視た限りでは半分になってる。
当時の【龍帝】が封印する時に半分に割って別々で封印したのだろう。そのおかげでリソースも半分になってしまっているが……それでも等級は神話級だ。
当然、生半可な相手ではない。
見下ろす先、カシミヤと【伏姫】狼桜を含めた……えーっと確か、<K&R>のメンバーが武器を構えてその時を待っている。
闘技場の周囲、観客席などには他の予定の空いていた<超級>や準<超級>が備えている。
万が一、<UBM>が逃げ出した時のための対策だ。
……今日の相手に通じるのかは、不明だが。
「あ、始まりますよ」
音声が聞こえ、カウントダウンが始まる。
十秒後には遠隔で珠を砕き、<UBM>が解放される。
どんな奴が出てくるのかはだいたい把握しているが、中々面倒な相手だ。
俺としては初手で《神装》を使って仕留めたいくらいには厄介だ。
『三、二、一、……点火!』
アナウンスが時間を知らせた直後、珠が砕け散る。
そして、
奇襲を行った狼桜が
つまりデスペナルティとなった。一瞬の出来事だった。
「雷ですかね?」
『聞いている話を考えるに、他にも出来そうガメ』
「……説明プリーズ」
「えっと、何が何だか分からないんですけど……」
「私はギリギリ見えた」
最後に見えたと口にした百々目を見てみれば、その手には糸と布と裁縫道具が保持されている。
その手は高速で動いており、しかし視界は手元には向けられず、見ずに裁縫を行っていた。
試合が始まったと同時に奥義を使ってAGIを高め、超々音速状態の視界で捉えたようだ。それなら確かに視認することは可能だろう。
『説明したいのは山々なんだが……ちょっとそんなことをしてる暇はなさそうだ』
グラムを手に持ち、いつでも振れる状態にする。
珠から姿を現したのは、漆黒の龍鱗に包まれた人型……の、
腕も、足も、顔さえも。
頭上に見える銘は【蒼■■返 ヘイロン・■■■■■】。
明らかに異常な<UBM>。
そのリソース量は、元の分を推測すれば<イレギュラー>に到達している。
能力は推測するにカウンター。それも、奇襲を仕掛けた狼桜を認識していないにも関わらず発動する全自動カウンター。
もう半分があることも考えれば……分類としては多重技巧型か?
正直、面倒な相手だ。
これがカシミヤの試合じゃなかったら既に手を出していた。
そして件のカシミヤだが……攻め込めていない。
互いに脅威を認識し、
だからカシミヤと【ヘイロン】は攻撃に転じられず……次の行動を起こしたのは、【ヘイロン】だった。
「おや? 逃げそうですね!」
「えっ」
シャワーの呟きが聞こえるのとほぼ同時。
【ヘイロン】は頭上に手を翳し──純白の熱線を放った。
噂に聞く【グローリア】の光線。それを思わせる威力。
それは展開されていた頭上にある結界を、僅かな拮抗を経て破壊し……【ヘイロン】は、姿を消した。
ただまぁ……
傷が治らないようにしたから、暫く身を潜めて回復に専念するだろう。
倒せなくもなかったが、下手に倒したらもう片方がどう動くのかわからないからな。そうするよりも、相手の動きを制限するほうに俺の天秤が傾いた。
こうして六日目の”トーナメント“は、<UBM>が逃げ出すという事件が発生して幕を下ろした。
☆☆☆☆☆☆☆
光線を使い逃走した【ヘイロン】は、峡谷に降り立っていた。
そこに降り立ったことに意味はなく、敢えて言うならエネルギーを喰らう半身の手がかりがあるかもと、無意識に考えたのだろう。
しかしそこには何もおらず、誰もいない。
居るのは降り立った【ヘイロン】のみで、
『……ごふっ』
その【ヘイロン】は、傷口を片手で押さえて吐血していた。
先程、逃走を選んだ時。一瞬だが【ヘイロン】は悪寒を感じていた。
命を脅かされようとしている、そんな悪寒。
そのようなものを感じたのは、【龍帝】との戦闘時に半身と別れさせられた時以来だった。
防御の要であった半身がいない今、攻撃を受けることもあり得てしまう。だから咄嗟のこともあって、避けることも叶わなかった。
【ヘイロン】は自身の傷を見下ろす。
その傷は斬撃の跡に見えた。
血が流れ続け、癒える様子もない。
このまま放置していれば出血多量で死ぬかもしれなかった。
【ヘイロン】は悩む様子を見せることはなかった。
『ぐっ……』
悩むことなく、自身の傷口を熱量で
傷口をさらに焼く。その行為によって傷口から激痛が走る。しかしこのまま死んでしまい、半身を残してしまうよりははるかにマシだった。
【ヘイロン】は傷口から手を離し、痕を見る。
そこには斬撃を喰らった部分だけ、漆黒の龍鱗が消えて肌に火傷の痕が残されている。
『……』
それを見ても【ヘイロン】に思うところはない。
こうでもしなければ傷が塞がることはなかっただろうと【ヘイロン】は直感していた。
火傷は残り続けるが……半身を探すのに支障はない。
念のため戦闘を避け、半身を探すことを最優先にする。
【ヘイロン】は自身の片足を使い、半身を探すために動き出した。
(◎n◎)<シャワーは頑張りましたが、レイレイの必殺スキルに敗れてしまいました。そういうことにします。
(◎n◎)<流石に【エデン】の必殺スキルは何なのか分かりませんけどね。
<【ヘイロン】
(◎n◎)<最適解を選んで最小限に抑えた。
(◎n◎)<【アルター】と同じように『その状態が正常』となるように斬りましたが、『正常を異常で上書き』すれば、最低限血は止まる……と考えました。
(◎n◎)<痛みはありますが、動くのに問題はなさそうです。
(◎n◎)<次回は【殲滅王】……を飛ばして十一日目、十二日目となります。
(◎n◎)<【シング】と、もう一体の<UBM>が賞品となって出てきます。