剣一つあれば良い   作:オルフェイス

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(◎n◎)<今日から金曜日に投稿しようと思います。


蒼白詩篇・<MDQB>と船

 

 <UBM>や【殺人姫】の騒動が巻き起こってから暫く。

 <MDQB>の四人は、船に乗っていた。

 エルトラーム号と呼ばれるカルディナの砂(・)漠(・)を進む大型船。海上ではなく砂上を航海……ではなく航砂する船。

 そんな船の中で、四人は─────

 

 

「つまり、やってることテロだよね?」

「……うん」

「どんな大義があっても、関係のない人を殺すのは駄目です」

「では制圧ですね! さあさあ出番ですよ!」

 

 

 ドライフ正統政府と名乗るテロリストと、戦闘を繰り広げていた。

 少し前まで、彼女たちは客室ブロックと呼ばれる場所でくつろいでいた。

 本当ならエルトラーム号で出会った見知らぬ<超(・)級(・)>のリソースを保有する──そう魔天シャワーが認識していた──軟派男にチケットを渡されていたのだが、彼女たちは丁度その時間帯で一度休息のため四人仲良く睡眠中だった。

 そして四人が起きる頃には、既に客室ブロックのテロリストは死(・)ん(・)で(・)い(・)た(・)。

 彼女たちは知らないが、その頃には【殺人姫】が客室ブロックにいたテロリストを殲滅していたのだ。彼女たちは戸惑いながらも生きていたティアンに話を聞き、事態を把握、その終息のためにも行動を開始。

 アイテムボックスやジュエルから取り出したゴーレムたちがテロリストと交戦、無力化していた。

 

 ─────貨(・)物(・)ブ(・)ロ(・)ッ(・)ク(・)と避(・)難(・)ブ(・)ロ(・)ッ(・)ク(・)で。

 

 理由は幾つかある。

 まず他のブロックには既にテロリストの鎮圧に動いている者たちがいたこと。

 彼女たちの方針が人を助けるため、そして逃がすためであったため、避難ブロックを制圧することを優先したこと。

 避難ブロックは貨物ブロックの隣にあり、それ故にそちらも制圧しようと動いたこと。

 それらの理由が<MDQB>を他のブロックへ向かわせず、ここにいるテロリストの制圧を行う理由となっていた。

 

 

「さて、これで全員でしょうか?」

「……見る限りでは?」

「他にも隠れてるかも」

 

 

 既にテロリストたちの制圧は終了している。

 大半は縛られ【気絶】状態に。

 中には起きている者もいたが、共有したステータスによる超ステータスとなっているゴーレムに囲まれ、動くことは出来ていない。

 戦闘を終了した四人は次の方針を話し合っていた。

 

 

「他のブロックに行きますか?」

「……動かないのも手」

「他のテロリストが集まるかもだしね。まぁ、ゴーレムがいるから問題ないとは思うけど」

「ゴーレムはまだまだ呼べますから、増やしたゴーレムはそちらに───」

 

 

 魔天シャワーが新たにゴーレムを増やそうとアイテムボックスとジュエルに手を伸ばし……止まる。

 

 

「……」

「……シャワー?」

 

 

 異変に気づいたQが話しかけるが、シャワーから返答はない。

 その視線は、一定に同じ場所を見続けていた。

 三人も視線につられて見た先。

 そこにあるのは扉。

 ただの扉。

 開け放たれたままの扉があるだけ。

 三人にはそれだけに視え───シャワーには別のものが視えていた。

 そして、次の瞬間にはシャワーの操るゴーレムが三体、超音速……AGIにして五万ほどのステータスのゴーレムたちが駆け出し、ある一点を同時に殴った。

 

 殴って、まるでパントマイムでもしたかのように空中で動きが止まった。

 そして、そのうちの二体が膝から崩れ落ちるように停止し、残る一体が光の塵となり消え去った。

 その異様な光景を目にした三人は、息を呑む。

 

 

「なに、あれ」

「敵(・)です。離れていてください!」

 

 

 そう言うや否や、シャワーは片手をそこにいる何(・)か(・)に伸ばす。

 

 

「Verteile das Wasser.(ヴ)」

 

 

 唱えられた言葉により、片手からは水球が発生する。

 そこから水が流れ落ち、フロアの足元を濡らして満たしていく。

 その水が何かのいる場所へと迫り……近づいた端から凍(・)っ(・)た(・)。

 パキパキと氷となり、氷となった氷面にパキンと片方だけの足跡がつく。

 まるで、そこに何かがいることを示すように。

 

 

「水は出しっぱなしにしてますので、足跡には近づかないでくださいね。多分、全部吸われてデスペナルティになると思いますから!」

「……何が通じる?」

「わかりません! でもこの感じだと───Wuchtig, wuchtig, Schicht um Schicht – die Kraft der Erde.(ワゥ・シ・エル)」

 

 

 説明の途中、見つめる先で凍る範囲が広がった。

 同時にこちらへと向かう片足の足跡。『けんぱ』でもしているような動きだが俊敏。

 シャワーは即座にそれを見て術を行使。

 床には亀裂が走り、人が入れる程度の窪みが発生。

 彼女の視界で捉えていた存在を、地に縫いつけた。

 重力にして、通常の約五〇〇〇倍。

 今の弱(・)体(・)化(・)したその存在を封じるには、十分な重力だった。

 

 

「……え、終わったんですか?」

「はい、多分終わりましたよ? 流石に重力まで吸ってたら地に足つけませんし、そもそも歩けなくなりますからね! さて、このまま重力で押し潰しましょうか。もしくは毒を用いて……」

 

 

 シャワーの視界に映る存在の魂は、そこに縫い付けられている。

 増大した重力で身体は動けず、少しずつ重さで押し潰されていることだろう。

 何もなければこのまま終わる。

 半(・)分(・)に(・)分(・)け(・)ら(・)れ(・)た(・)とはいえ、仮にも神話級であり<イレギュラー>であるはずのそれを、あまりに容易くシャワーは封じてみせた。

 

 何(・)も(・)な(・)け(・)れ(・)ば(・)、終わるだろう。

 何もなければ。

 

 

「じゃあ重力を追加で増やし、」

 

 

 ────パァン

 音にすればこんなものだろうか。

 遅れて響いてきた、銃撃音。

 ぐらりと傾くシャワーの身体。

 彼女の片足が、銃撃により千切れた。

 そう理解することができたのは同じ高AGIを誇った<MDQB>のメンバーと、もう一(・)体(・)。

 しかし<MDQB>は仲間の片足が千切れたという突然の事態に、咄嗟に動きを止めてしまっていた。

 だから、動けなかった。

 

 

「Eine Wand, die Beschuss standhält(エ・ダ・ス)───しくじりました!」

 

 

 続く第二撃を防ぐため、魔天シャワーは壁を形成した。

 半透明の幕のような壁。それは確かに続けて放たれた第二撃の射撃を防いだ。

 しかしバランスを崩し激痛を与えられ、四肢の一つを失った魔天シャワーはソレを封じていた重力の制御を失った。

 解放されたソレが、一目散に駆け出す。

 水浸しとなったフロアを駆け───凍(・)ら(・)せ(・)ず(・)に走った。

 最初に動き出せたのは百々目で、今まで待機状態だった自身の<エンブリオ>を紋章から解放、パーティ枠へと入れて……そこで止まる。

 既に水浸しとなっていたフロアを、ソレは抜け出していた。

 足跡が消え、敵が何処にいるのか判別できない。

 すぐに追うのを断念した百々目が次に目を向けたのは、欠損して立てないシャワーだった。

 

 

「っ……シャワー、傷は!」

「治せます! あと、もう警戒しなくて良いと思いますよ!」

「……………どういうこと?」

「そんなことより治療を! えっと、何が必要ですか!?」

「じゃあMPポーションを! それで、警戒しなくて良いって言ったのはもごもご」

 

 

 説明中のシャワーの口に詰め込まれたMPポーションを、極々喉を鳴らしながら飲み干すシャワー。そこにHPポーションも傷口にかけようとしてシャワーの手で防がれ、一息ついたように息を吐いたシャワーが床に座り、説明を始めた。

 

 

「けふっ。まず、敵は消えました。多分あの<UBM>を逃すことが目的だったんだと思います!」

「……<UBM>だったの?」

「あの、それよりも怪我……」

「とりあえず足持ってきたけど……どうするの?」

「ありがとうございます! じゃあ早速……Alle Lebewesen – bewahrt eure Verbindungen.(アレ・ヴェー)」

 

 

 シャワーが自身の欠損した足の傷口同士を引っ付き合わせ、圧縮魔言を発言。

 そして逆再生でもするように神経や血管、肉同士が繋ぎ合わさり、結合する。

 千切れた跡こそ残ったものの、シャワーの足は無事に繋がり動かせるようになった。それを確かめるようにシャワーは片足を動かし、立ち上がった。

 

 

「完治です!」

「……はぁー」

「良かったぁ」

「心臓に悪い」

「わー、ご心配おかけしましたー」

 

 

 安心したように脱力した三人。

 同時に思うのは『やっぱり私達は戦闘には向かない』というもの。元より生産職として活動してきたのだから当然と言えるが、それをより実感したと言えた。

 しかし、それでもやらなくてはならないときには動くのだろうとブックは思う。

 こんなことは当分御免だな、と百々目は考える。

 結局、襲撃してきたのは何者だったのかをQは思考する。

 そして、魔天シャワーは───何故だか楽しそうに微笑んでいた。

 

 

「あ、そうでした。有耶無耶になってましたけど、ゴーレムでの増援はどうしましょうか?」

「……任せる」

「動いてないはずなのにどっと疲れたから、ゴーレムたちだけ向かわせたい」

「シャワー。さっきのこともありますけど、お願いできますか?」

「おまかせください! ではでは改めて、出番ですよー!」

 

 

 ─────そうしてゴーレムたちが他ブロックへと移動を開始。

 しかし到着する頃には既に全ての勢力が鎮圧された状態だったため戦闘は未発生。

 代わりに中にいるかもしれない乗客の救助へと回ることとなった。

 

 

 




(◎n◎)<シャワーはあのまま介入がなければ倒せていたかもしれません。

(◎n◎)<呼(・)ぶ(・)のも手でしたが、大概デカいか被害規模が大きくなるのでやめてました。

(◎n◎)<……まぁ、被害を気にして呼ばなかったわけではないですけど。
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