カルディナでの旅行を続ける<MDQB>一行。
様々なトラブルに巻き込まれるという事態が発生したものの、なんとか乗り越えて旅行を楽しんでいた彼女たち。
時に船に乗れば船がテロリストによりシージャックされ、さらに前には<UBM>が解放されるなど、かなりの頻度で遭遇していた。
彼女たちが今いるのはカルディナの首都、常に動き続ける世にも珍しい<UBM>【漂竜王 ドラグノマド】の背に存在する都市、首都ドラグノマド。
「はい、どうぞ」
「わー! うさぎさんだー!」
「今度は何がいい?」
「あのね、わたしはね!」
「クマがいい!」
「えー、ねこさんがいいよー」
そこで彼女───百々目は、ドラグノマドを放浪中に見かけた孤児院に寄って裁縫で様々な動物を造り子供たちに見せていた。
近くに仲間の姿はない。精々が偶然にも来ていた仮面を被った5人組の雑技団くらいのもの。珍しく仲間と行動していない彼女は、『たまには一人で回ってみよう』という提案で一人でここにいた。
とはいえここに来たのはただの偶然。孤児院という馴染みのない名前が、彼女の足をこの場所へと運ばせた。
そして裁縫で超音速のスピードで様々な動物を作ってみせたことを見られたことをきっかけに、孤児院の子供たちにせがまれることとなった。
現実の百々目からすれば
(たまにはこういうのもいっか)
子供たちのリクエストに応えて動物を作り出す。
幸い材料は多く持ち歩いていて、なくなれば金属を自身の<エンブリオ>に喰わせて金属糸を吐かせれば良い。
そう考えて裁縫を続けていた百々目。そんな彼女に近づいてきた影があった。
「君は……」
「ん……? あ、何処かで見たイケメン君だ。久しぶり」
聞き覚えのある声に顔を上げれば、そこには以前に見かけたことのあるユーゴーと白い少女のキューコが立っていた。
一旦裁縫の手を止めた百々目から、周りにいた少年少女たちはやってきたユーゴーたちに顔を向けた。
「しってるひと?」
「うん。前に顔合わせたことがあるから」
「ねぇねぇ、おにいさんもなにかげい、みせてくれるのー?」
「わたしはねー」
子供たちの話を聞き始めたユーゴーたちを尻目に、百々目は再び針を持ち裁縫で動物を作るのを再開しようとした。
しかしその前にユーゴーに声をかけられた。
「あの5人の雑技団、後から来た人はいるかな?」
「え、どうだろ。私が来た頃には5人ともいたけど……私も裁縫で動物を作ってて、ずっと見てたわけじゃないからわからない」
百々目の言葉を聞いたユーゴーは5人の仮面を被った雑技団を怪しそうに睨んでいる。
何か事件の犯人や犯罪者でも探しているのかとユーゴーを見て考えた百々目は、密かにパーティメンバーに
「わっ! なんか出てきた!」
「こわい……」
「怖くないよ。これは私の<エンブリオ>。私はハロって呼んでる」
紋章から出てきたのは鈍色の針金人形、【金喰糸吐 ハロモナス・ティタニカエ】
体長3mほどの大きさで文字通り『金属の糸で作られた人形』と称せる<エンブリオ>だった。
出した自身の<エンブリオ>に、百々目はアイテムボックスから取り出した古代伝説級金属を【ハロモナス・ティタニカエ】に食べさせ、ガリゴリと咀嚼音を響かせながらその体色を古代伝説級金属のそれへと変化させていく。
そうして準備を終えた百々目は改めて周囲を見渡し……子供になっているユーゴーを見つけた。
「……なにやってるの?」
「いやその、HENTAIを当てようとしたら失敗して……くっ、まさか声はブラフだったか……!」
「うわぁ、子供になるとかあるんだ。初めて見た」
初めて遭遇した状態に興味を示した百々目は自身よりも小さくなったユーゴーの周りを歩き、じっと見つめた。
子供たちからも視線を集めたことは気にした様子は見せず、同行者……自身の<エンブリオ>であるキューコに縋るような目を向けていた。
そして件のキューコは……百々目に話しかけてきた。
「ねぇ」
「何?」
「あとからきたこどもはわかる?」
「あとから……雑技団が来る前で良いなら、あそこのブランコに乗って遊んでる子供がそう」
「ありがと」
聞きたいことを聞き終えたとばかりにキューコは百々目から離れ……百々目が示したブランコで遊んでいる女の子へと近づいていった。
そして指を差し、一言。
「えるえす、みーつけた」
指を刺された女の子は、きょとんとした顔でキューコを見つめ、
「――みつかっちゃった♪」
そう笑いながら言った。
☆☆☆☆☆☆☆
なんだか百々目の知らない事情が進んでいたことは、百々目も理解できた。
多分隠れていた誰かを探すゲームとか、そういうことなのだろうと。
そうして何やら話しているのを聞き、特に話しかけることなく目線をそちらへ向けながらも裁縫を動かす手は止めずに作り続け……
そして
「?」
何が起こったのか、理解するのに一瞬必要だった。
少し考え、メニューウィンドウを開き……百々目は自分が状態異常に罹っていることを自覚した。
欄に見えるのは【精神休眠】という文字。そのせいで自分は今動けないのだと考えている間に事態は動く。
ユーゴーはマジンギアに乗り込み。
雑技団の5人の姿が異形へと変わり、動いている。
百々目にわかったのはそのくらいだ。
「あー、しまった」
見てみれば出していたはずのハロも、力なく崩れ去っていた。
確認してみればこちらにも【精神休眠】の文字が。皮肉にも備えとして出していたのが裏目となった。
しかし───それでも、予め仕込んでいた
「
最近になって聞き慣れた言葉が、聞き覚えのありすぎる声で発せられる。
途端、戦闘を繰り広げていた異形……ブーメラン持ちの鋼、毛むくじゃらの笛持ち、大口の両生類。それと二体の蜥蜴型が地面から生えた茨に縛られる。
そして現れたのは……<MDQB>のステータス担当、魔天シャワーだった。
「百々目さん、助けに来ましたよ!。あ、でもこの人たちで合ってます?」
「ナイス。それで良い」
動けないながらも口にして、シャワーは胸を張った。
───単独行動をしようという時に、予め決めておいた合図がある。
それはステータスの増強。
百々目の場合はハロをパーティ枠に組み込むことで異常を知らせ、シャワーが百々目を探して救助に向かって来てくれた。
おかげで時間は掛かったが間に合ったし、異形たちの動きを封じることにも成功した。
「そのまま押さえてて!」
「む、その声はいつぞやの……えっと、ユーさんですね! 承りました!」
動きを封じられた異形……改人に、マジンギアに乗ったユーゴーが迫る。
ブーメラン型の刃をジャグリングのように扱う鋼の改人は茨を切り裂き脱出したが、他の改人は藻掻いているが脱出の気配は感じられない。
故に対処するべき相手は一体に絞られた。
「《戦血之闘衣》全解放。《オーバーフィジカルリング》、《パワー》《ガード》《スピード》」
唱えるよりも殴るほうが早い──そう判断したのか、魔天シャワーは装備を切り替えステータスを大幅に増強。
これによりSTR、END、AGIの三つは三万へと到達。
超音速機動で駆けたシャワーの蹴りが、マジンギアの銃火器で動きを止めていた鋼の改人へと命中、その身体を陥没させた。
それでも死ななかったのは、改人として改造されていたからだろう。その傷も、時間をかければ回復する。
しかし身体機能を一次的とはいえ大きく損なった鋼の改人に、次の攻撃を避けることは困難だった。
「
蹴り飛ばされ倒れた改人は、跳んで落下し、頭部を踏み潰すというシャワーの追撃によって絶命。
「
未だに縛られていた武器持ち……特典武具を保有していた改人二体も、シャワーから放たれた見えざる礫が二体に穴という穴を空けて射殺す。
あまりにも短時間で、決着はついた。
「大勝利です! それで、あっちの二体はどうしますか? 殺します?」
「それは……」
「その必要はないのですぞー」
マジンギアに乗っているユーゴーに話しかけていたシャワーに、別の声が上がる。
そこにいたのはシャワーが来る前、キューコがゲームの最中に見事当てた相手。
名はLS・エルゴ・スム。
レジェンダリア所属の<超級>の一人、【呪術王】LS・エルゴ・スムだった。
……今は、彼あるいは彼女自身の<エンブリオ>により美形の子供の姿となっているが。
「あちらは俺の《カース・オブ・マリオネット》で身動きを封じてありますぞ。あとで尋問でもする必要がありますな」
「なるほど! ではあとのことはそちらにお任せします! 立てますか、百々目さん」
「平気。もう動ける」
既に元凶となる状態異常を付与する特典武具を保有していた改人が死んだ今、百々目の行動を縛るものはなかった。
他の子供たちも、気づいて動き出す者が増えている。中には両生類の改人に格納されていた見知らぬ子供もいた。
これで改人は倒され、子供たちも誰一人被害が出ることなく終結し───
「あ、死んでますね」
最初に気付いたシャワーにより、縛っていたはずの量産型と思わしき改人の死亡が、いつの間にか確認された。
☆☆☆☆☆☆☆
「───なんてことがあった」
「……事件が多い」
「あはは……」
その後、孤児院を離れた二人はQとブックと合流。事情を話して出てきた二人の言葉がそれだった。
「でも今日は良い感じの収穫がありましたよ!」
「収穫?」
「これです!」
そう言って取り出されたのは、十枚一組のブーメランの刃。
それは先ほどの戦闘で改人が使っていた特典武具。
【鋼転鋭星 サテライト】。
それが、今は魔天シャワーの手の中にあった。
「……え、<UBM>倒したんですか?」
「いえ? 倒した相手が特典武具持ってたので、貰いました!」
「貰ったって……」
「特典武具って、譲渡とか奪取とか……出来ない、って話だったよね……?」
「そうらしいですね。でもスポンサーなら出来たと思いますよ」
「あー」
「まぁ……」
「……同意」
一人の理不尽を思い浮かべた三人は、特典武具を奪った魔天シャワーと話し合った。
そして、このことは四人だけの秘密ということで<MDQB>の心に仕舞われた。
特典武具の奪取は余程のことがない限りはしないと、そうシャワーと約束して。
(◎n◎)<はい、こうなりました。
(◎n◎)<特典武具、ゲットだぜ。
(◎n◎)<ちなみに言及されたようにオールドポンドも斬ったら出来ます。
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