▶【■■■■ ■■■■■■■】
そのモノは眷属である。
そのモノは<UBM>である。
そのモノは生きてきたモノである。
そのモノは負けたモノである。
そのモノは備えたモノである。
そのモノは元は人だったモノである。
そのモノは既に人ならざるモノである。
そのモノは諦めなかったモノである。
そのモノは─────
☆☆☆☆☆☆☆
『!?』
最初にそれを見つけたゴブリンは、驚き後退りした。
もし喋ったのならこう言ったことだろう。なんだこれは、と。
ゴブリンの見据える遠い先。
そこには肉の塊がいた。そう称するしかないモノだ。
腐った肉の色をした塊。それでいてボコボコとした感じはなく、むしろ表面は滑らかに見える。
あえて別の何かで例えるなら……『肉のスライム』。
それがドロドロとした動きで、ゆっくりと動いていた。
『……』
そのゴブリンは考えた。自分はどうするべきか。
しかし実際は悩むこともなく結論を出しており、すぐにその場を離れて他の場所で狩りをしている仲間たちとの合流を─────
そう考えていたゴブリンは、すぐにその意識を途絶えさせた。
ゴブリンが見ていた肉のスライムが、離れていた距離を瞬時に詰めてゴブリンを丸ごと呑み込んだのだ。
その速度は、超音速機動。
ゴブリンを従えていた<UBM>の力でステータスが強化されていても、そのAGIは超音速には届いていない。
それ故に対処などできるはずもなかった。
呑み込まれたゴブリンは肉のスライムにより取り込まれ……まるで
丁度、取り込んだゴブリン一匹分に相当するだけ、大きくなった。
そうして暫く佇んだ肉のスライムは最初と同じようにドロドロとゆっくり動き始め、
『うちの部下をやったのはお前ですか』
先ほどの肉のスライムよりも素早い動きで近づいた
血飛沫が地面に散り……しかし
肉のスライムを裂いた人狼。体毛に太陽の如き色と輝き宿した人の形をした狼。
【烈火迅狼 バーストライカ】
それがその狼の正体だった。
そして【バーストライカ】の見つめる先にいる、肉のスライム……の、少し上。
そこには名前が表示されている。
隠蔽能力でもない限り、誰であれ見ることのできるモンスターの名前。
この肉のスライムにも名前がある。
【蝕合混融 ユナイト・ゼロ】
それがその肉のスライム……【ユナイト・ゼロ】だった。
これで2体の<UBM >が対峙した。
片や成り立てながら主の<UBM>の力で強化され、片や長い年月を生き延びてきた存在。
互いに何もしないでいた時間は僅か。
次の瞬間、それぞれが超音速機動に匹敵するか、あるいは上回る速度で動き出し、交差する。
【バーストライカ】の爪が【ユナイト・ゼロ】の表面の肉を熱し削り、【ユナイト・ゼロ】が身体を広げて呑もうとしたところを危なげなく回避した【バーストライカ】。
【バーストライカ】の身体からは炎が出でて、交差の瞬間には【ユナイト・ゼロ】の肉を文字通りの意味で焼く。
【ユナイト・ゼロ】の身体には焼かれて爪で裂かれた傷があるが……それも次の瞬間には
超速再生。それが【ユナイト・ゼロ】の能力の一つ。再生にはSPを必要とするが、【ユナイト・ゼロ】には問題にすらならない。
(再生が早くて、単純な
一度でも捕まれば肉体ごと取り込まれ……どのような形であれ死ぬ。
【バーストライカ】はそれが分かっているからこそ慎重に動く。
(ボスの方には
そう内心で呟く。
ダメージを与えた感触と、実際にできた傷。
それらを合わせれば相手のHPの数値はわからなくとも、どれほど高いのかは多少は推測できる。
今の【バーストライカ】の攻撃力はボスのバフを踏まえて数万ほど。それにプラスしてスキルによる加算もいれると……推定で十万は超える。
それほどの攻撃を喰らっておきながら、【ユナイト・ゼロ】に与えられたダメージの割合は高くなく、むしろ瞬時に回復している。HP一〇〇万程度ではこうはならない。
となれば最低でもその十倍はあると推測して……それでいて再生に、急所がわからないなどを踏まえると──
(長期戦になる……相性悪いなぁ)
下手をすれば一撃で死ぬかもしれないことを考えれば、長期戦を行うのはあまりにも相性が悪かった。
しかしやらなくてはならない。
(部下Aでも連れてくれば話は変わるかもしれないけど……ボスの警護は残しておきたい。ここは一人でやりきるしかないか)
万が一、自身のボスのところへ向かおうものなら、全力で阻止しなくてはならない。
そう決意を固めて構えた【バーストライカ】に対し、【ユナイト・ゼロ】は、
『え』
脱兎の如く、とはこのことか。
逃走に微塵の躊躇もなく【バーストライカ】とは反対方向に逃げ出した【ユナイト・ゼロ】に思わず呆気にとられる。
しかしすぐに【バーストライカ】はそれを追いかけようか逡巡し……動かしかけた足を止めた。
これが向かう方向が方向だったなら、【バーストライカ】は止めていただろう。しかしそうではなく、むしろ群れから離れている。相手のスキルもわからない今、無闇に追いかけるのは悪手であると【バーストライカ】は考えた。
『一体何だったんだ……?』
既に影も形も去っていた【ユナイト・ゼロ】のいた場所を見つめながら、【バーストライカ】の吐き出すような呟きがこぼれた。
■□
ちなみ一方その頃。
『うーむ。心配であるなー』
「大丈夫、だよ。きっと。強いもん」
『それは知ってるのであるが……こういう時に単独行動するのはフラグというやつが立つのである』
「ここで、立つ、かな……あと、フラグってそういうのじゃ、ないと思う、よ?」
『む、そうであるか?』
「そうなの。はい、こちょこちょ」
『わわっ、くすぐるのはやめるのであるー!』
こんな会話が交わされたとかないとか。
■□
─────【ユナイト・ゼロ】には、既に自意識や自我と呼べるものは残されていない。
それは
死なないように治して、取り込み混じる。
それしか出来ない【ユナイト・ゼロ】に自我はないが、予め定められた
一つ、活きる者は全て取り込み自らの糧とすること。
一つ、生存・保存を優先すること。
一つ、自身が一定以上まで強くなったら、
それだけを目的として【ユナイト・ゼロ】は活動する。
だからゴブリンを取り込み糧とした。
だから【バーストライカ】と交戦し、勝ち目が薄いとなれば退いた。
どちらも目的を達成するために最適な行動をとった。
そこに怨念はない。
そこに感情はない。
そこに意思はない。
ただ……遺志だけが【ユナイト・ゼロ】を動かしている。
そして───今の【ユナイト・ゼロ】は、三番目の目的を最優先として移動していた。
目指すのは目的の存在を感じ取れる場所……
立ち塞がったモノたちは全て取り込み、そこにいる存在を目指す。
目的を……【ユナイト・ゼロ】の存在意義を達成する。
元眷属にして未完の<
「……」
その気配を、
そう遠くないうちに、
まるで確信したかのように知覚した彼女は……何をするでもなく待った。
いずれ来るであろう戦いに備えて。
【蝕合混融 ユナイト・ゼロ】
(◎n◎)<未完の<SUBM>。
(◎n◎)<単純なHP、MP、SPの量は<SUBM>中1位。
(◎n◎)<とはいえそれもいずれ来る融合のための蓄積でしかないので
(◎n◎)<目指している存在と融合すればリソースの再分配が行われて新生します。
(◎n◎)<その時こそ、【ユナイト・ゼロ】は<SUBM>として完成する。
ファミリー
(◎n◎)<言うまでもなく【ロボータ】。
(◎n◎)<何やら部下Aなる新しい配下がいるようで……?
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