(◎n◎)<……まぁその前に戦争に関係ないのが出てきますけど。
【只今より、アルター王国とドライフ皇国での戦争を開始いたします】
【<Infinite Dendrogram>全域において、三〇倍の時間加速を実行】
【戦争結界の該当エリアは、都市部を除く王国全土。ランカー外の<マスター>は、直前の都市内セーブポイントに強制移動されます】
戦争が始まったことを知らせるアナウンスが脳内に響く。
<トライ・フラッグス>───王国と皇国の命運を決める戦いが、静かに始まったことを知らせられる。
『さて、と』
一人座り込み、状況を整理する。
この<トライ・フラッグス>の勝利条件は、指定された三つのフラッグを守りながら相手のフラッグを破壊すること。
<砦>、<宝>、そして<命>。
<砦>は指定した場所。
<宝>は指定したアイテム。
<命>は指定した<マスター>自身。
アルティミアから相談も受けたし、何なら信頼できるという理由で俺が<命>の候補に挙がっていたことも知っている。
それは俺が候補の片割れであったレイにしておけばいいと言ったので、王国の<命>はレイ・スターリングが担っている。
俺は遊撃を立候補したので好きに動いて皇国の戦力やフラッグを狙う予定。
何なら既にカバネを自由行動させているので、今頃<マスター>を相手に戦闘を行っているかもしれない。
ただ、俺が本格的に動くのは二日目以降となる。
アルティミアから頼まれたことだ。
なので一日目は動かず、状況を伺うことになる。
あぁそれと、今回の戦争では<MDQB>の四人はいない。
四人には、エリザベートの輿入れの護衛をしてもらっている。
今はもう王国にはおらず、迎えに来た黄河の<超級エンブリオ>である
さて、王国での俺の役割は遊撃と言ったが……その中でも倒して欲しいと頼まれた目標が何人か存在する。
まず一つが【獣王】。俺の剣なら致命の一撃を与えることは難しいことじゃない。
そして新たに皇国所属となったという個人生存型の<超級>二人。俺なら仕組みを暴いて……いや、一切合切を斬ってしまえるだろうから、という理由だ。
実際、俺ならどんな仕組みであれ斬れるし、なんなら視える。遠隔操作だろうが特定できるだろう。
とはいえそれもこれも、あくまで俺の出番が来るまでに目当ての<超級>が死んでいなければの話。
既にデスペナルティとなっていた場合、俺の目標は消えて……役割通り、遊撃で<マスター>たちを殲滅していくことになるだろう。
……テレジアのことも気にかかっている。三日目には王都に戻るつもりだとはアルティミアには伝えてある。
─────さて。
さて、だ。
『…………、なんとなくそうなる気はしてたよ』
ここに来た時から。
あるいは、カバネを行かせた時からか。
なぜそんなことを感じたのかと言えば……雰囲気だろうか。
なんとなく重く、
去り際のカバネを視て、俺はそう感じた。
どうやって、は正直わからない。
どうしては、考えるまでもない。
望んでいるから。きっと、ただそれだけだ。
「───おまたせ」
『待ってない』
立ち上がり、振り返る。
見覚えのある顔だ。
白くて、綺麗な乙女。
ただ、大きさが違う。手に持つ武器が違う。
幼い子供は少女となり、その手に持つ刀はどうにも機械仕掛けに視える。
カバネが成長したような───そんな姿。
頭上に見える名前には、こう記されていた。
─────【零落破器 ロスト・システム】
知らない<UBM>の名前が、そこにあった。
「三度目の正直。ね?」
『これで最後にしろよ、本当に』
「うん、わかってる。わかってるから──」
手にグラムを持ち、【ロスト】もまた刀を構える。
「今は、私だけを視て」
『───ああ、そのつもりだ』
【ロスト】──いや、もう言ってしまおう。
☆☆☆☆☆☆☆
時は、ほんの少し遡る。
カバネがオールドポンドの元を離れて十分ほどのことだ。
彼女は木の上で腰掛けて、
「……」
それを感じ取ったのは戦争が始まる少し前。
なんとなくだがわかった。わかってしまった。
彼女がかつて生み出した眷属。それが、自身の元を目指して向かってきていることに。
何のために。それもカバネは分かっている。
彼女は悩んだ。それを受け入れて良いものか、自問自答した。
このことを
これは自分で決着をつけるべきことであると、そう思ったから。
けれど、一度だけ。それとなく聞いた。
『したいことと、しなくちゃいけないこと。どっちを優先するのか』
それに対してオールドポンドは、
『知らんガメ。全部したら良いんじゃないガメ?』
とても投げ遣りだった。
本人もそこまで深く考えてなくて……でもきっと、そんな状況だったら本人が言った通りに
全部両取り。あの人らしいとカバネは思えた。
だから決められた。
じゃあそうしよう、と。
オールドポンドの言葉を後押しに、カバネの意思は固まった。
「──待ってた」
感覚が知らせてくれた。
その時が来たのだと。
ゆっくりと、茂みから這い出て来た異形。
肉の塊が動いているようなモンスター。
【蝕合混融 ユナイト・ゼロ】。
それがカバネの近くに寄り、静止した。
カバネは木から飛び降りた。
そして、ゆっくりと歩いて【ユナイト・ゼロ】に近づく。
そこに言葉はない。
語りかけるという行為は必要ではない。
既に【ユナイト・ゼロ】にそのような自我は残されていないし、それを同じアンデッドであるカバネは感じ取っていた。
しかし、それでも彼女は口を開いた。
手を差し伸ばし、
「来なさい」
───瞬間、【ユナイト・ゼロ】がカバネを覆い尽くした。
溶け合う感覚。
繋がりが切れる感覚。
前後左右の感覚が薄れていく。
溶けて、融けて、混ざり、交ざる。
時間感覚すら失われて、しかし一瞬で終わったようにカバネは感じられた。
目を、開く。
「……あ」
声が漏れ出る。
手を動かす。
足を動かす。
──立ち上がる。
改めて、自分の感覚に身を委ねた。
自身のリソースが増大したことが感じ取れる。
今までよりも遥かに強くなったのだと理解できた。膨大なリソースが、今なお形を求めて唸っている。
同時に、あんなにも心地良かった繋がりが消え去ってしまっていることも。
それも、覚悟していたことだ。
今すぐにでも向かいたい気持ちを抑え、カバネは自身の中で荒れ狂うリソースを形あるスキルへと変換していく。
リソースの再分配を執り行う。
今度こそ勝つために。
対等に戦うために。
今の彼女が持てる全てを、愛する人へぶつけるために。
☆☆☆☆☆☆☆
刀と剣がぶつかり合い───俺は
「───」
ステータスで劣っている。それはわかる。
だがそれだけだ。それだけなら、グラムが機械刀を斬り裂いている。攻撃力1000万オーバーは伊達じゃない。
それでもなお機械刀は健在だった。傷一つ視えない。
少し考えようとして……その隙をカバネは与えてくれない。
身体から吸収されていく感覚。カバネの《
既に慣れたそれを
それでも違和感が拭えない。
考えようとして、思考する余裕が与えられない。
高速で動き回るカバネの一撃一撃を、なんとか捌いていく。
しかし対応が追いつかない。
【だぶるかのん】の防御力を突破して、切り傷が増えていく。
幸いにもまだ肉には届いておらず、実際には肉体に傷一つない。紙一重で捌けている。
しかし考える時間が欲しかった。
『発射』
空に飛び、地面に向けて【だぶるかのん】に備えられている一対の砲身から砲弾を発射。
瞬間爆風に包み込まれ、俺も空中に吹き飛ばされた。
おかげで考える時間ができたので、自分を視る。ついでにステータスウィンドウも見る。
おかげではっきりとした。
『……そういうことか』
いつもより相手の動きが速く感じるとは思っていた。
いつもより自分の動きが鈍いとは思っていた。
いつもより斬れ味が悪いとは思っていた。
今のカバネの……【零落破器 ロスト・システム】のスキル。
『
ウィンドウから見れたジョブは、全てが灰色の文字で薄くなっているのが見えた。
あらゆる
それが今のカバネの正体だと、早々に理解した。
─────それでも。
『勝ち目はある』
空中から落ちていく間に、着ぐるみを自力で【だぶるかのん】から【グレイテスト・コア】に着替え終わった時。
跳び上がってきたカバネと、空中での斬り合いが始まった。
(◎n◎)<VS【零落破器】
(◎n◎)<最初の初戦にして最大のボスがこちらとなります。
(●_●)<私、ぱわーあっぷ。
(◎n◎)<オールドポンドじゃなければ初手で死んでるけど?
(●_●)<流石私の旦那様。
<【零落破器】
(◎n◎)<詳細な能力とかについては次回で。
(●_●)<……そういえばジョブ殺したのに、なんで《吸神権能》斬られたの?
(◎n◎)<オールドポンドだからでしょう。
(●_●)<それもそっか。