(◎n◎)<完結まで頑張ります。それではどうぞ。
▶【■■■■ ■■■■■■■】
あの日から、一体どれほど経ったのか。
そう思案する。
あの日、あの恐ろしい鬼から解放されて、どうにか生き永らえることができた。
あの時には考えられないほど、今は健康的だった。
全てが足りない日々はもうなく、心も体も満たされている。
何より……あの頃よりも強い肉体がある。
自由に身体を動かせる。
遠くに行ける。
手を伸ばすことができる。
そして今は、かつてのあの恐ろしい鬼……片割れには位として及ばないまでも、同じ存在に到達している。
それもこれも、
一人は<マスター>。名前は知らない。黒い大剣を持ち、時にはその大剣を黒の斧槍へと切り替えて片割れと戦っていた。
わたしに憧憬を抱かせ、人というものを教えた者。
一体は<UBM>。銘は【群狼王 ロボータ】。<UBM>でありながら下級モンスターにも負けるほどに貧弱で、それでも部下思いな小さな王。
わたしを拾い、モンスターとしてここまで育て上げた者。
どちらかでも欠ければ、わたしはきっとここにはいなかった。
だから【ロボータ】……ボスには恩がある。これまでの情がある。だからわたしはここにいる。
……ボスに出会わなかったら、きっとわたしはあの人を探しに旅をしていたことだろう。
会ってどうしたいのかとか、その辺りはわからないけど。でも会いたい。ボスのファミリーになった今でもそう思う。
いつか会えることを希い、わたしは今日も生きる。
この貰った命を、懸命に繋ぐ。
───のは、良いんだけど。
(絶対あとでわしゃわしゃする……!)
駆ける。避ける。止まって、また駆ける。
■□
事の発端はボスがいなくなったことから始まった。
「ボス、は?」
『この街にはいませんでした。臭いからして、あっちの方角でしょう。すぐに向かいますよ』
「……なんで、街の外に出たの、かな」
『大方予想はできますがね……はぁ』
部下一号に思わず苦笑する。わたしも、ボスがスヤスヤ眠っているところにどんぶらこと運ばれていく様が想像できた。
本当ならば一号が《人化の術》で街の中で待機しているはずのボスと合流するはずだった。
しかし探せど探せど見つからず、外にまで臭いを辿ってみたら案の定、というやつで。
わたしは《人化の術》は使えないから外で待機してたけど、街にいないとなればボスのところへ急がなくてはならない。
そういうわけで、わたしたちは一号の先導の元、ボスのいる場所へと急いだ。
急いだ結果、遠く離れたここからでも見える巨大な二足歩行の竜が見えた。
見ただけでわかる。ピリピリと肌に指すようなプレッシャー。圧迫感。
格だけで言えば間違いなく上。ボスの気配も近くに感じられるから、より急がなくてはならない。
……本当ならそうするべきなんだけど。
「X。ちょっと、迂回して」
『ギャウ?』
「行かないと、いけないところが、出来たから」
乗っていた【ナパーム・デミドラゴン】の部下Xの頭を撫でながら移動先を変更してもらう。
向かう先は、街の近くにいる巨竜ではなくその後ろにある山。
そこから感じられるプレッシャーが、わたしを否応なしにそこへ向かうことを強いてくる。
ただプレッシャーを放つだけなら、放っておくという手もあった。けど多分、アレはそういうのじゃない。
感じるプレッシャーは巨竜以上。それでいて、恐らく徒党を組んでいる。
放っておいたら、こちらに進行してくるかもしれない。
幸いにも、空中から見たら遠くからでも何かと争っているのが見える。
横槍を入れる形になるけど、介入すれば多少は楽に倒せるかもしれない。
だからボスのことは一号に任せて、わたしはあっちに行く。
「上についたら、わたしは降りる、から。ボスのこと、お願い、ね?」
『ギャーウ!』
Xの返事の鳴き声を聞いて、街の上空を通り過ぎて山へと向かう。
どんどん近づいてくると、その異様さと伝わるプレッシャーがよくわかる。
一言で済ますなら、
その中で戦っている者たちが見える。
<UBM>が二体と、人間が何人か。城の外にも人間がいる。
<UBM>は……頭の上に見える名前は、大きな獣の【磨刃超獣 キル・キル・バ】と、黒い水晶の【凍竜王 ドラグフリーズ】。
それと同じくらい強そうな、色をコロコロ変えてる人間らしき人。多分<マスター>。
その中でプレッシャーを放っていたのは……恐らく【凍竜王】。この中で一番警戒しなくてはならない相手だと理解できる。
「行ってくる、ね」
頭上に到着した段階で、乗っていたXから飛び降り、冷たい風を切って落下していく。
同時に、迎撃のためか氷の城から無数の氷の槍が放たれ始めた。
Xは……うん、すぐに離れ始めたから巻き込まれることなさそう。
なら、ここからわたしは死力を尽くす。
そうしなければ勝てない相手だ。
「《
命を燃やし、スキルの発動のために必要な
そして、展開。
伸ばした手の先から赤いシールドが現れ、迫る氷の槍を防ぐ。
そのまま勢い良く落下を続け、すぐに氷の城へと接触。
勢いを乗せて、拳で殴りつけた。
「……痛い」
壊れない。
分かってはいたけど、少しのヒビしか入らない。そのヒビも、もう直ってる。
腕にヒビが入った分、こっちが損をしてる気分になる。
……でもおかげで、これは自傷扱いじゃないらしくて、ダメージを負ってカウントが溜まった。
これなら、
氷の壁に触れれば、冷気が伝わってくる。
壁の形が変化して複数の氷の腕と化し、わたしを叩き潰そうと振り上げている。
けど、ボスのスキルで強化されてるおかげでその動きは遅く見える。
見えるから、間に合う。
「《
スキルを発動。
そして
出来た穴から落下し、地面に降り立つ。
それと同時に、冷気が身体を襲い始めた。
冷やす……どころじゃない。まさに極寒。ジリジリとHPが削られていく感覚があった。
けど、ボスの《自動修復》で回復と減りがトントン、といった所。
それでいてジリジリと削られては回復のループのおかげで、カウントも溜まってきている。
これなら大きなダメージを喰らうことなく《鬼瘴讐盾》や《罰鬼報撃》が使える。
「!」
目線を向ければ、こちらに迫る雪の結晶のようなもの。
その結晶が、まるでギロチンのように迫っている。当たれば無事では済まなそう。
それを、《鬼瘴讐盾》のシールドを軌道上に置いて防ぐ。
シールドは結晶と衝突し、
ギャリギャリギャリギャリ───!
と、まるでシールドを削るような甲高い音を響かせた。
この様子だと、ギロチンというよりもチェーンソーの方が近いのかもしれない。
多分、実際のダメージ量はそれほどでもなくて、冷気による凍結がメインだと思う。
だから《鬼瘴讐盾》で防げた。
シールドが防いでいる間に飛び退き、シールドは元々込めていたカウントも少ないこともあってすぐに砕け散った。
『ほう……? 《渦静銀雅》を防ぐか』
声が響く。そちらへ目線を向ければ、その声の主は黒い結晶の【凍竜王】だった。
その声は何処か楽しそうに見える。それでいて攻撃の手を一切緩めていない。
わたしも脳内に鳴り響く命の警鐘に従って避け続けている。
当たれば死ぬということがよーくわかった。
「……」
避けながら、少しだけ考えた。何か、喋るべきだろうかと。
伝えておきたいこと、聞きたいこと、そういったものが無いかを考えて……考えてみたら特にないことに気付いた。
だからそっちはいい。
それよりも話さないといけないのは……あっちは無理だから、
「ね、あいつ倒したいんだけど……協力しない?」
『──承諾した』
声をかけたのは、今は蒼い身体をしてる人。この中にいる人間の中だと一番強い。
一人では倒せないと分かっているのかすぐに返事をくれた。
これで協力者が一人増えた訳だけど……ここ、とっても嫌な場所だ。
何処を進もうと命の警鐘が鳴る。【凍竜王】のトラップだらけだ。
それと……【キル・キル・バ】の方は消耗が激しい。
そう遠くないうちに、倒されて死んでしまうのだと理解できてしまうほどには。
【キル・キル・バ】が倒されてしまうのは、不味い。
「出来れば、急ご。【キル・キル・バ】が倒されたら、【凍竜王】のレベルが上がる、から」
『!』
【凍竜王】は、多分神話級。
その上のランクはないし、これ以上ランクアップすることはない……と思う。
けどレベルが上がれば【凍竜王】はより強くなる。
強くなったら余計に手がつけられなくなる。
だから暫定的に、タイムリミットを【キル・キル・バ】が倒されるまでに設定する。
【キル・キル・バ】と協力は出来ないけど、
どうにかして【凍竜王】に───
『《渦静銀雅》を防ぐとなれば、こちらだろうなぁ』
響く。声と、脳内から、ほぼ同時に。
氷の壁や天井から氷で出来た竜や腕、槍などが突然生えて、わたしを攻撃し始めた。
(◎n◎)<名前はまだ内緒でいきます。
(◎n◎)<代わりにスキルについて少し解説。
・《鬼瘴讐盾》
(◎n◎)<赤いシールド。カウントを消費して発動。ダメージを吸収する。
・《罰鬼報撃》
(◎n◎)<触れた対象に発動。カウントを消費する。生物無生物関係なく消し飛ばせるけど、触れたものが対象のスキルによって生み出した、もしくは操作したものに限られる。
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