崩壊した世界で   作:社畜戦隊サラリーマン

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宝くじ当たりました。
300円。


三話

 

「走れぇぇえ‼︎」

 

でっかく音が鳴ったため、大量に奴らが姿を現した。

おぅおぅ、10や20じゃきかないな。

 

「小室、井豪!お前ら2人で先頭走れ!全員バスに乗り込め!殿は俺が……」

「私も手を貸そう!」

 

バール二刀流で構える俺の隣に毒島が立った。

木刀を容赦なく奴らの頭部に叩き込んでいる姿に、その技量の高さが窺える。

これ持ってるのが真剣なら、脳天から股先まで一刀両断してそう。

そらスポーツ剣道してるやつらじゃ勝てんわな。

全国一位になるはずだよ、ガチの剣術家じゃん。

 

「よくもまぁバールをトンファーのように操れるな」

「器用なんで」

 

相当な数の奴らに囲まれているのに、軽口を叩けるだけの余裕がある。

すげえ安心感。

集まる奴らをひたすら潰す作業はもぐら叩きというかワニワニパニックというか、幼き頃に幼児向けのゲーセンで遊んだ思い出が蘇る。

こんなグロくはなかったけど。

この状況でちんたら歩くやつもいないわけで、小室と井豪が道を開き、続く女子を石井が腕につけた鍋蓋と鉄パイプで守り、平野の杭打ち機が中距離の敵の眉間を撃ち抜いている。

良いチームワークだ。

すぐに全員無事にマイクロバスに乗り込んだようだ。

俺達も乗ろう、となった段階で「待ってくれ!」と声がした。

あぁそうだ。確かここで疫病神の紫藤とかいう教師が……

 

「あぶなーい‼︎」

 

ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!

紫藤の顔を認識した時には、彼の顔面に向かって防犯ブザーが投げられていた。

 

「痛っ⁉︎ えっ、ちょなに……ひぎゃあああ⁉︎」

 

えぇ……と振り向くと、バスから降りてきた宮本が「新しい顔よ‼︎」とバタコさんがあんぱんを投擲したようなポージングをしていた。

 

「えぇ……」

「えぇ……」

「ちょ⁉︎ 何やってるんだ麗‼︎」

「まぁいいや、いやよくないけどとりあえずバスに乗ろう」

 

あれはもう助けられん。

 

「……そうだな」

 

苦渋の選択、といった顔をする毒島を連れてバスに乗り込む。

外を見れば、紫藤とヤンキーが奴らに群がられて貪り喰われている。

多分ヤンキーは我先にと走り出して巻き込まれたんだろう。

その背後にも何人かいたが、悲鳴をあげて校舎内に逃げ込んでいた。

せめて迂回でもしてこっちにくれば乗せてやったものを。

あれじゃ助からないだろう。

 

「危ない時だったから投げたのよ!ちゃんと味方のいないところに投げたでしょ‼︎」

 

あぁうん、そうね。

確かに投げた場所に味方はいなかったね。

ちゃんと俺のいうこと守って防犯ブザー使ってるね。

こんな所で問責しててもしゃあないし、とりあえず発進した方がいいだろう。

 

「そうだな。鞠川校医、出してくれ」

「わ、わかったわ……でもどこに?」

「あー、ひとまず警察署でも目指しますか」

 

バスの中の空気が最悪なまま発進する。

少なくとも危険思想なやつも死んだし、バスの前を奴らに囲まれなくて済んだし、原作よりはかなりマシな滑り出しである。

ただ紫藤は嫌いな奴だったが、これで完全に原作の流れが変わったな。

井豪が生きてる時点で今更か?……うん、今更やな。

百合エロコンビも助けてるし、なんか小室が拾ったのも脱落してないし気にしたらあかん。

なるようになーれ。

とりあえずほら井豪、お前の彼女だろ。

お前がなんでこんな事したんか聞いてみ?

俺は原作知識あるからなんとなくわかるけど、他の皆はわからないのだから、このままでは麗が孤立してしまう。

 

「わ、わかりました」

 

どしたん、話聞こうか?と悩む女子を飲みに誘ってお持ち帰りするかの如く優しく声をかける井豪。

おぉ、流石プレイボーイ。リア充は伊達じゃ無い。

ほれほれお前らも、傷心してたりヒスってたりする女子はああやって接するんだよ。

小室が凄い苦虫を噛み潰したような顔をしている。

そして語られる内容。

父親が公安で働いており、紫藤の父親について捜査しており、その妨害として娘の自分が成績を操作されて留年させられたこと。

数々の嫌がらせを受けたこと。

複数の女生徒を手籠にしているらしいこと。

資金集めのために手籠にした女生徒に売春までさせていたこと。

最近は男子もいけるようになったのか、複数の男子生徒にまで手を出していたこと。

生粋のケツ穴スキーで、抱いた生徒の菊穴写真まで収集していたこと。

思ってもみなかっただろう内容に、皆絶句している。

確かにそのような者が何食わぬ顔でチームの中に入ればどんな事になっていたかわからない。

ちなみに、後ろ4つは今俺が適当に思いつきで付け足した。

「そ、そんなことまで?」と初耳らしい宮本も驚いている。

そうだろうな、俺も初耳だもの。

男子達も顔を青くして尻に手を当てている。

死人に口無し。嘘も方便。

このままチームワークがぐだぐたになるくらいなら、紫藤に全部かぶってもらおう。

どうせ悪人なんだし、最早法律が意味をなさない世界となった今、罪状のひとつやふたつ増やされた所で問題ないだろう。

それよりも、あいつは助けなくてもいい人間だったと周囲に思わせる、そういう事に持っていける方が大事だ。

なんで紫藤の問題を知っているのかと聞かれたら「ニンジャですから」で納得されんの便利すぎワロタ。

以前の倫理観なら、それでも助けるべきだと言うだろうが、これからはチームの不利益となるなら助けず見捨てる選択肢は絶対に必要になってくる。

今回の事例はそういうものなんだと割り切ろう、という空気にシフトさせた。

あーでも、紫藤グループになる予定だった女子達は少し勿体無かったな。

確かセクシーギャルと地味眼鏡っ娘がいたはず。

……まぁ、ええか。

 

「何よこれ……」

 

その言葉は誰のものだったか。

学園を出てしばらく、街の様子が見えてくる。

あちこちから煙が立ち上がり、悲鳴が木霊する。

主要な道路には複数の事故を起こした車がつらなり、至る所に屍人となった奴らが溢れていた。

まさに地獄というやつだ。

警察署は川向こうのため、橋を渡らなければならないが果たして無事に渡れるのか。

無理だって知ってるけど。

しばらく事故車が道を塞いでいない場所を選んで橋を目指して車を走らせれば、自然と渋滞に捕まった。

限定的ではあるがマイクロバスの中という安全が確保され、時間が経過すると、自然と家族の安否が気になりだす。

 

「お父さん、お母さん大丈夫かな?」

 

あえて誰の言葉かと言わずとも、ほぼ全員の共通の想いだろう。

俺? 書類上の親はいるみたいだけどこの一年で会ったことはない。

神様の不思議パワーである日この世界にニョキって生えたようなもんだし、実際はいないのかもしれない。

同じ街の中だったから生徒手帳に記載の住所にも行ってみたが空き地だったしな。

 

「小室の家は?」

「僕の家は御別橋の向こう。高城と麗、永もそうです」

「ふぅん。毒島は?」

「私の家族は父一人だけだし、その父も今は国外の道場にいる。気にしなくても大丈夫だよ」

「あ、僕も両親は海外なので……」

「私も両親はもういないし大丈夫」

「北郷先輩のご家族は?」

「父は網走刑務所、母は火星にいるって聞いた」

「……真面目に応える気が無いのはわかった。気にしないでいいってことね?」

 

なんか平野と鞠川先生がついでに答えてくれた。

気にしなくて良いから他を優先してあげて、という気遣いか。

まぁ聞かなくても原作主要メンバーは知ってるけどな。

俺の適当なアンサーに高城が呆れ顔になる。

「この辺で家が徒歩20分圏内の近いやついるか?」と尋ねると、おずおずと手を挙げたのが三名。

一条と二木、東だった。

東ってだれやねん、という方に説明すると、小室が拾った男女四人組の一人だ。

HIGASHIではなくAZUMAと読む。

タオルを首にかけた、俺がキレそうになった戦犯じゃないほうだ。

ちなみに他が西村(♂)、南原(♀)、北島(♀)だった。

俺の中での呼び名が方角カルテットになった。

 

「大橋もあの状態だし、御別橋もこの様子じゃ渡れるかわからんしな。なんだったら俺が様子を見に行ってもいいが….」

 

窓の外、先ほどから市民の怒声と車のクラクションが響いているのが大橋である。

学園から川を渡るのに一番近い車用道路のある橋で、避難しようとする市民と、感染拡大を恐れてか封鎖している行政側で睨み合いになっている。

かれこれ一時間この調子だ。

俺一人なら、川の上を走って渡ることもできるが、流石に他の皆には無理なので絶賛立ち往生中。

じっとしてても仕方ないので、時間を有効活用してみるかと思ったわけで……

ぶっちゃけ他のやつの家族の安否確認てのは建前で、原作で小室と宮本が警察官の死体から回収した銃と手錠を探しに行きたいってのが本音。

 

「お、俺も行きます!」

「なら私も!」

 

東が立候補すると、黒髪女子の方の南原が声をあげた。

なんか二人付き合ってるらしいよ?

両親にも紹介済みで仲は良好。

卒業したら結婚する気だったとか。

モブ顔なのにすっごいリア充じゃん。

まぁ意気込みは買うし、気になるのもわかるけどねぇ。

家族が無事でも既に避難してもぬけの殻なんて事もあるだろうし、無駄足に終わるかもしれんぞ?

……無事でなかった場合の処理もあるからあまりお勧めはしないが。

むしろ俺一人の方が事故ったパトカー探せるし良いんだけどなぁ。

 

「もし両親が奴らになってたら、せめて俺の手で!」

 

ふむん。それだけ覚悟決めてるならええか。

 

「それに、先輩がいるなら安心ですし」

「ほほぅ」

 

そこまで言われては否やはない。

 

「な、なら私達もお願いします」

「敏美が行くなら私も!」

 

二木と一条も声をあげる。

そうなるよね。

家族の安否確認、できるならしたいよな。

だが東みたいに、もしも最悪の場合はやってみせると言えるのか?

無言であっても俺の問いたいことがわかったのか、二人とも神妙な顔で頷いた。

全員で行くと流石に守りきれないからこの5人でいくか。

 

「毒島、二時間で戻ってくる。その間はこのバスの指揮を頼む」

「私はついていかなくていいのか?」

「大丈夫だ。少人数の方が動きやすい」

「フッ、そうだな。君は忍だものな」

 

なんかニヒルに笑うのも様になるのね。

もし二時間で戻らないか、奴らが現れて危ないと判断した場合は出発してくれていい。

その場合はあらためて明日に警察署で落ち合おう。

 

「了解した」

 

よし。それじゃお前ら確認するぞー。

時計で現在時刻確認よーし。

武器よーし。

奴らに出くわしたら、逃げられるなら逃げる。

戦う時は距離を保って、素手での対応禁止。

極力音をたてず静かに。

オヤツは一人300円まで。

俺との約束を守れないやつには帰ってきたら罰を与えるぞー。

 

「ば、罰って……?」

 

うーん。

皆の前でお尻ぺんぺんの刑と、みさくらなん◯つ先生の本の朗読のどっちがいいかなぁ?

ほとんどのやつは意味がわからなかったようだが、平野と井豪と西村が恐ろしいことを聞いたとばかりにぎょっとしている。

ほほーん。井豪も実はオタク趣味のわかるやつだったか。

まぁ2000年代ってオタクはまだまだキモいって風潮だったし、隠れオタクのむっつりさんは結構いたもんだしな。

原作でも冒頭でゾンビ映画のお約束を理解してる様子もあったし。

少なくとも知識はあるのだろう。

cv宮野さんだしな。

むっつりさんめ!

 




東卓造
方角カルテットの東担当。
タオルを首にかけ、バットを持っている。
原作ではバスに向かう所でタオルを奴らに掴まれて噛まれ死亡してる。
モブかおだけどリア充。
苗字はてきとーにつけた。
何気に声が若かりし頃の「爆豪のかっちゃんだ‼︎」さん。


西村
方角カルテットの西担当。
下の名前はないモブ。
原作でも今作でも盛大に音を鳴らした戦犯。
原作では紫藤チームに入って乱行楽しむだけ楽しんだのち、なんか急に紫藤に楯突いたら雑に死んだ。
苗字はてきとーにつけた。

南原直美
方角カルテットの南担当。
黒髪スレンダーで卓造の彼女。
原作では卓造が喰われたのを見て、高城が止まるも彼の元まで引き返して死んだ。
苗字はてきとーにつけた。

北島
方角カルテットの北担当。
茶髪のモブ女子。
原作では紫藤のチームに入り、なんかよくわからんうちにバスの中でレズセしてる百合になってた。
なんかその後雑に行方不明というか、たぶん死んだ扱い。
今作はまともだけどモブ。
苗字はてきとーにつけた。

みさく◯なんこつ先生
何故かこの世界にもいるしゅごぉおおおっほーい作家。
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