最高傑作を退学に出来るわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?) 作:三次創作()
「─────というわけだ。お前たちは今日からここに住むわけだが、下らんことを考えるなよ。俺たちだって、ガキを殺したくはないんだからな」
さて、暖かい春の日差しが心地よい今日この頃。俺、真弓綾斗は幼馴染とも言うべき一夏と拓也と共に、黒いサングラスをかけたイカつい人に面と向かって脅されています。
何故こうなったかというと──────
「私たちが三人暮らし?!」
俺たちがホワイトルームを出ることになる一日前。綾小路篤臣との会談を終えた俺たちが戻り、拓也が聞いた事実を一夏に話せばこの様である。
「ああ。なんでも、普通の奴じゃ適応できそうにないから断念した中学校に、俺たち三人だけは通うことになったらしい。そこで、まとめて監視できるように三人暮らしだとさ」
拓也は綾小路篤臣(以降篤臣)から聞いた事実を淡々と話す。驚きを隠せない一夏とは別に、俺はこれも運命だと考えていた。だってそうだろ?生まれて初めて巡ってきたチャンスに加えて、中学校生活が送れるんだ。最高じゃないか。
「やかましいの二人と暮らすとか、先が思いやられるな…………」
「ちょっと~、この可愛い一夏ちゃんと暮らせるんだから、喜びなさいよっ!」
「うわっ!ちょっ!離れ、ろっ!」
ふぅ、やれやれ。とわざとらしく演技をした拓也に対し、一夏が飛び掛かる。今日は急遽カリキュラムが停止になったために、自由時間だ。だからといって、何でもしていいわけじゃないんだけどな。
「…………楽しみだな」
俺は無機質な天井を見上げながら呟く。ずっと、見ない日はなかったこの天井とも、白衣を来た生き残りの同志たちとも、研究者たちとも、暫しの別れか。嬉しい筈なのに、どこか感慨深いな。
「まぁ、それは同感だな。もっと大事なこともあるが」
「素直になりなよ~。嬉しいでしょ?」
「んなわけない、だろ!ったくもう」
愉快な二人の掛け合いを眺めながら、今までの出来事を思い出す。自我が芽生えた時には既にここにいて、何の疑問も感じなかったな。だけど、知識を得ていくうちに、自分を不幸だと思うようになった。なんでこんな場所に、何で俺が、そう思った。
だけど、今ではここに生まれて良かったと思えてる。一夏と拓也に会えた。解放されることは今後ないかもしれないけど、それでも一生の友だ。だから、こんな普通の人から見たら異常な日常でもいい。綾小路清隆と比べ続けられたっていい。だから、だから──────
──────俺たちの普通が、いつまでも続きますように。
っていうわけで、翌日にはワゴンで市街地に運ばれてきました。因みにいうと、窓は閉まっていたせいでホワイトルームがどこにあるのかは確認できなかった。時間で言えば四時間ほど乗っていたけど、それも時間を誤魔化すために遠回りしてる可能性もあるし。
そして、俺たちとサングラスの前には大きな一軒家。かなり立派で、今まで住宅地を見たことがない俺でも、かなり大きな金を支払っているだろうことが分かる。外装はピカピカだし、二階まである。
「生活費。つまりまぁ、電気代とか水道代とかの諸々は上が払ってるから、お前らは一般人らしい生活を送ることだけを考えろ。食費は毎月俺が渡しに来る。今月は二十五万だ。育ち盛りだろうが、それで何とかしろ。足りるだろ」
サングラスの大男はそれだけ言うと、ワゴンに乗り込む。いや、ここで置いてくのかよ。通うことになる中学校やその他諸々はあとで連絡送るって言われてスマホそれぞれ一台ずつ渡されたわけだけど…………
「─────じゃあな。達者で。言ったこと忘れんなよ」
それだけ告げると、ワゴンはどこかへ走り去っていった。名前は忘れたけど、置いてくのは酷いだろ。スマホについても、簡易的な説明書一枚だけだし。これが5期生期待のホープにする扱いかよ。綾小路清隆には及ばなくても少なからずいい結果残してんだから敬えや。少なくとも篤臣、お前より知識入ってんだぞ。敬え。
「はぁ…………これがスタートかよ。酷いな」
「だね。期待されてるんだかされてないんだが分かんないよ」
拓也と一夏は愚痴を言いながらも目の前の一軒家に歩み寄っていく。鍵は先程スペア含めてそれぞれ一個渡されたけど、ぶっちゃけまずいよな。児童相談所とかに連絡されたらどうするんだろうか。それとも、この付近のそういう施設には根回し済とかか?いや、さっきのサングラスの人が親扱いってことなのかもな。
「まぁ、これで念願の自由だ。満喫するかね」
「お気楽なヤツが増えた」
「それあたしもお気楽な能天気バカって言ってる?!」
やっぱ、俺たちはこうじゃないとな。ホワイトルームの中と同じようなやり取りをしながら靴を脱いで家に上がる。木目にフローリングも綺麗だし、しっかりしてるな。
「まずは間取りの確認だな」
「じゃあ俺は家電類見てくるわ」
「え、じゃ、じゃああたしは寝室見る」
俺と拓也が役割分担をしながら別れると、一夏は慌てて自分も役割を捜そうと二階に駆け上がっていった。相場一階に寝室があると思うんだが、まぁいいか。どうせ、すぐに分かることだ。
ダイニングに向かうと、家電は大体揃っていることが分かった。まず冷蔵庫はすでにあるけど、中身は空。電子レンジもあるし、オーブントースターもある。ガスコンロもあるし、キッチンもある。十分だな。
奥にはリビングが広がっていて、ご丁寧に大型テレビまである。部屋の上部にはエアコンも設置されてるし、ソファも五人ほど座れそうだ。洒落たテーブルもあるし。意外といい扱い受けてるな、俺たち。
「二階には部屋が五個あったけど、それだけだったよ。あとトイレ」
階段から降りて来た一夏の報告を聞きながら、俺はソファに背中を預ける。かなり座り心地が良い。ホワイトルームで座らされてた金属製の椅子とは大違いだな。もっと他のとこに注意を払って欲しい。
「あたしも座ろっと」
「一夏は、楽しみか?」
「うん。二人と暮らせるのも楽しみ」
「そっか」
その後、二人で少し話をした。ただ、すぐに間取りの確認を終えた拓也が帰還したことで、引っ張り起こされたのもすぐあとの話である。
「まずは、周りの土地を確認することも大事じゃないか?」
「いい案だな。散歩ってヤツか」
「違う。偵察だ」
「どっちでも同じ意味でしょ~~」
というわけで、三人で散歩に行くことになった。勿論、サングラスからもらった大金は家にあるし、しっかり鍵もかけた。ただ、住んでるのが俺たち子供だけだと周囲に認知されたら、色々と厄介だな。空き巣に入られたり、下手したら強盗が来るかもしれない。いや、WR生が三人いるわけだから簡単に撃退できるけどさ。後処理も上がやってくれるのかな。
「あれが…………コンビニ」
住宅街の中を数分歩くと、コンビニエンスストアの文字列が見えた。あれは、一般人がよく使う店だと聞いてる。なんでも売ってるらしい、合法なものだけだけど。しかし、アメリカではスーパーマーケットに銃が売ってるらしい。いつか行って見たいものだ。
「大したことないな」
「初めて来る場所ってワクワクするよね~」
「『旅行』でも、こんな場所来なかったしな」
俺が挙げた『旅行』というのは、ホワイトルームでのカリキュラムの一環だ。VRゴーグルをつけて、日本各地の名所や首都を歩き回る気になるやつ。ただ、酔う人もいるから注意が必要だ。
「旅行は嫌いだ。眩暈がする」
ほら、ここに一人。
拓也はどうやら、酔う側の人間らしい。
「あたしは結構好きだったけどね。外行ってる気分になれるし」
「同感だな。もっと増やして欲しいくらい」
「よし。お前ら今日食事抜きな」
「はぁ? 絶対むりだし」
「同感」
初日の夜は、散歩から帰った足で家に直行し、もう一度金を三千円だけ持ってコンビニに行き、そこで買った弁当だ。
俺は食べてみたかった味噌ラーメン。拓也は蕎麦。一夏は唐揚げ弁当。
どれもトレードしながら食べたけど、全部美味しかった。
…………因みに、一階には寝室が三つあるけど、拓也は一人で寝たのに一夏がベッドにもぐりこんできたせいで、俺は中々寝れなかった。
次の次くらいで綾小路清隆が高育に入学します