最高傑作を退学に出来るわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)   作:三次創作()

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3話:「ふざけるな」

 

 

 

俺たちがホワイトルームを離れてから、約一年が経過しようとしていた。季節は再び巡って春となり、桜が咲き誇っている。そんな光景を窓から眺めながら俺は、届いたメールに再び目を通す。

 

 

「今月は二十万、か」

「お小遣い?」

「ああ」

 

 

横に並んできた一夏の問いかけに、目を合わせず答える。先月から少し少なくなっているが、嫌がらせか? いや別に、全然足りるけども。もっと寄越せや、けち臭いな篤臣。

 

 

「もう三月かぁ、早いね」

「だな。この暮らしにも、慣れたものだ」

 

 

拓也はこの時間、まだ寝ている。といっても今は春休みだから、俺たちみたいに早く起きる必要は微塵もないわけだけどな。意味のない早起きというのも、悪くないと知った。

 

 

「…………ねぇ、綾斗」

「なんだ。一夏」

「私たちが普通の生活を送ってるよって数年前の私たちに伝えたら、どんな顔するんだろうね」

 

 

一夏の言葉で、俺は久しぶりにホワイトルームでの生活を思い出す。徹底されたスケジュール、逃げることの許されない閉鎖空間。たまに行われる『試験』と言う名の『選別』。どれもこれもが、今となっては懐かしい。

 

 

「きっと、驚くだろうな。もしかたら、自慢の武術で倒そうとしてくるかも」

「でも、流石に負けないと思うな~。これでも、まだ実力は残ってるし」

「いい勝負になりそうだ。ただ、流石に負けたらショックだな」

 

 

そんな会話をしながら、窓の外に目を向ける。芽吹き切っていない桜の蕾が、やけに鮮明に見える気がした。まるで俺たちみたいだと、心のどこかで思った。

 

こんな日常が、いつまでも続きますように…………

 

 

 

 

 

 

──────しかし、そんな俺の理想は、その約一カ月後に崩壊した。

 

綾小路篤臣から届いた、一通のメールによって。

 

 

『綾小路清隆が高度育成高等学校に逃げ込んだ。退学させて連れ戻すために、お前たちを来年度高育に送り込む』

 

 

突然の知らせだった。そしてその後届いたメールには、一週間後に迎えの者を寄越すから、営業を復帰したホワイトルームに帰還せよとのこと。つまり、俺たちの‘‘今の普通’’が、壊れたのだ。

 

 

「クソが」

「あの、綾小路清隆が…………」

 

 

拓也と一夏も、打つ手はないと知っている。それでも、やるせないよな。いくらアイツらの所有物だからって、譲れないものもある。中学校には既に仲のいい奴もいるし、二人との生活も名残惜しい。

 

 

「手はない、よね…………」

「分かんないぞ。一か八かで海外逃亡はどうだ? …………冗談だ」

 

 

それも、当然できない。知識も技能も大人以上であっても、年齢で言えば俺たちはまだ子供。義務教育を受けている世代だからな。三人でトンズラなんて、出来るわけもない。

 

 

「─────仕方ない。諦めよう、元の生活に戻るだけ。そうだろ?」

 

 

俺は二人に言い聞かせているようで、自分に言い聞かせていた。そうでもしないと、迎えに来たヤツをぶっ飛ばしてしまいそうだから。もう、ホワイトルームなんて、どうでもいいんだ。ただ、二人といられればそれで良かった。なのに、そんな小さな願いすら、叶わない。恨めるのは自分の運命だけ、ったく、ふざけた人生だ。

 

 

「ようやく手に入れたのに…………ふざけるなよ。僕は、赦せそうにない」

 

 

落ち着いてきたと思ったら、拓也がそう言った。だけど、当然そんなのは俺も同じだ。でも、だからこそ、最後まで俺と同じでいて欲しい。

 

 

「─────綾小路清隆を、恨むなよ、拓也」

 

 

俺がそう告げると、拓也はこちらを向いた。その眼はいつもみたいに真っすぐで、とても人を恨めそうな眼じゃない。それでも、拓也の気持ちは理解できた。

 

 

「…………分かってる。綾斗が僕に言ったんだろ。‘‘一度きりの人生なんだ。嫌なこと考えてないで、もっと楽しく生きよう。楽しいことして、仲間と一緒に笑い合う。それだけで、人生は色づく’’って」

「そうだ。人生、嫌いな奴を作らないなんて不可能。だから、割り切ろうぜ?綾小路清隆がムカつくんなら、来年退学させてやりゃいんだよ。それで──────」

 

 

俺は言いかけた言葉を止めた。自分でも、何故だかは分からない。それでも、今まで不明瞭だった俺の望みが、どこか形を得た気がしたから。

 

 

「─────それでさ、三年間また楽しくやろう」

「あたしも賛成~」

「…………いい案だな。乗ってやる」

 

 

 

 

 

 

 

そして俺たちは、綾小路清隆を退学させるためにホワイトルームへと舞い戻った。だけど、そこで言われたのは、綾小路清隆を連れ戻すための特殊カリキュラムの受講。ただ、これには脱落などはなく、ただ受け続けるだけのものらしい。

 

 

「コミュニケーション能力も鍛えるのか」

「それも、綾小路先生の御考えだ。黙って言われたことをやれ」

「はい」

「は~い」

「…………分かってる」

 

 

久しぶりに味わう、無力感。外では自由だったけど、ここでは俺たちに力はない。三人で全力で暴れれば脱走は可能かもしれないが、その後がどのみち詰む。選択肢なんて最初から、与えられていないのだ。不条理だが、これも現実だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~約一年後~~

 

 

「来週からお前たちは高育の生徒だ。生徒や学校の詳しい特色は向こうにいる月城に聞け」

 

 

そんな宣告の元、俺たちは再び自由の身となった。戻るのは、まだ残っている嘗てのマイホーム。だけど、この一年間で俺たちは変わった。悪い意味ではなく、いい意味で。

 

 

「…………綾小路清隆、か」

「感慨深そうだね。綾斗」

「勝てないと思っていた相手に、こんな形で挑むとは思ってなかったから」

 

 

俺たちに与えられた任務は、『綾小路清隆の退学』。そして、彼をホワイトルームに戻すことだ。正確に言えば退学に追い込めれば俺たちの役目は終わるわけだけど、多分これが厳しい戦いになる。

 

「入試のために色々聞いてたけど、行けると思う?」

「厳しい。だけど、無理じゃない。だろ?」

 

俺が答えるよりも先に、隣の拓也が答えた。後ろには閉められた窓と流れる景色。車での移動中に話す内容じゃないのかもしれないとふと思った。

 

 

「まぁ、そうだな。金さえ手に入れられれば、何でもできる学校だ。一応手を抜いたから、俺たちは全員違うクラスになる筈。そこからが問題だな」

 

 

戦力を分散させて違和感を消すために手を抜いたけど、正直違うクラスになっている保証はない。それに、向こうの詳しい校則も聞いていないし、綾小路清隆がどのクラスに所属しているのかも聞いてない。一応、A~Dで優劣順に割り振られるとは聞いてるけど。

 

「詳しい作戦は、向こうに行ってから考えよう。月城ってヤツとも、話しておきたい」

「そうだな。あの最高傑作を追い込むなら、しっかりとした作戦を立てないとこっちが狩られる」

「ああ。最大級の警戒をしつつ、情報戦を制す。それが、こっちに出来る最高の戦い方だ」

 

 

俺は窓の外に流れる景色を見ながら、内心で決意する。必ず、『綾小路清隆』を退学にする。勝つ必要はない、勝負を挑む必要もない。ただ、退学と言う事実を作るだけ。今までのカリキュラムに比べたら、難しい内容じゃない。

 

 

 

 

─────綾小路篤臣から言われたあの約束を果たすために、俺たちは全力でお前を狩りに行く。

 

だから、心して待っておけ──────綾小路清隆。

 

 




そういえば疑問なんですけど、二年最初のペア筆記試験で「低い点数の強要」とか「故意に手を抜く」とかって学年問わず退学処分ですよね

あれって、2000万ポイントを使用することで救済可能なんでしょうかね?それとも、一切救済手段無しで問答無用で退学なんでしょうか
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