最高傑作を退学に出来るわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?) 作:三次創作()
「─────先日はご協力ありがとうございました。後日、約束の額お渡しに向かいますので、後二日ほどお待ちください」
「焦る必要はないねぇ。私はあくまでレディを傷付ける美しくない輩を対処したに過ぎない。その褒賞は君からの誠意、だろう?」
「…………ええ、そうでしたね。では、また」
「ああ。また会おう、真弓ボーイ」
俺は高円寺六助との電話を切る。今日は四月十五日、試験の内容が明かされてから三日目の朝だ。南雲を脅したのが昨日。彼の人となりを月城から聞いた俺は、まず「女性を傷付ける男は美しくないのではないか」とカマをかけた。すると、案外あっさりと彼は同意した。だけど、それだけで繋いでおくのは正直不安が残る、だから彼が重要視していると考えらえるプライベートポイントを引き合いに出した。そしてその額は『五十万』。南雲から振り込まれれば、俺が今度は彼に渡す手筈になっている。
しかし、今日はあまり動きがない。強いて言うなら綾小路と七瀬が接点を持ったことをしてたくらいだけど、これはうちと2-Dの状況を考えれば当然だと言える。
今、宝泉がとっている戦略は2-Dに依存していると言える。資金面で余裕がない彼らは、2-A・Cで起きているマネーゲームに参加すること自体が不可能。よって、彼らは多大な譲歩をしてでも俺たち1-Dと組んでもらわなければならない筈、というのが恐らく宝泉の思考。だが、それは間違いでもある。現時点で他学年のクラスと協力関係を築いておけば、今後何かの役に立つかもしれない。その保険が理解できないようでは、学力B+も底が知れるな。
そんなことを考えていると、ふと目の前に人の気配がした。視線を上げると、目の前には揺れる金髪と豊満な胸。誰であるかは、それ以上上げなくとも理解できた。
「──────何か用かな。七瀬さん」
「少し、お話ししたいんですが、いいですか? 真弓くん」
彼女の顔には、いつも通りの真剣さが帯びている。今までほぼ接点のなかった俺へ接触してくるとなれば、目的は恐らくクラス関係。男女関係に現を抜かすようなタイプには見えないしね。
「ああ、構わないよ」
「でしたら、少し来てください」
「分かった」
七瀬に連れられて人気のない廊下の隅へと移動する。階段の傍のため、それも死角になっていて人に見られることはほぼない。ついでに言うと俺は耳が良いため、聞かれることもない。密談にはうってつけってわけだ。
「それで、何を話そうと?」
「クラスの方針についてです。もし私が宝泉くんの台頭を防ぎ、これから先クラスを指揮するとしたら、君は付いてきてくれますか?」
「君が掲げる方針次第、かな? 別に、何をしようと勝手だけどさ、俺に迷惑がかかる行為を正式に掲げるんなら、少なくとも賛同は出来ないかな」
嘘だ。別に、俺はクラスのリーダーが誰になっても特段気にすることはない。やろうと思えばいつでも政権交代できるからだ。だから、俺が否定しないのには当然理由がある。それは、七瀬がこの質問を何に利用するのか。そして、俺以外にこの質問をしているのか。それを暴くためだ。もし宝泉とは違う目的で動いているのだとしたら、止める必要が出てくるからな。
「────そうですか」
「因みに、俺以外にこの質問は?」
「既に何人かには。同意を得れたのは数名ですが」
「そ。まぁ、頑張って。否定はしないから」
「分かりました」
俺はそこで七瀬との会話を切り、教室に戻る判断をした。だけど、得れたものはある、まず七瀬は俺以外に接触などしていない可能性が高いという点。人は嘘を吐くとき、視線が動くから分かりやすい。だけど、じゃあ何故俺だけに質問をしてきたのか。それは恐らく、俺が彼ら彼女らを嗅ぎまわっていることに勘づかれたからだろう。昨日、一瞬だけ目が合ってしまったからね。
だけど、全て問題ない。どうせ宝泉とは接触せざるを得ないし、七瀬がそれに勘づかないとも限らない。だけど、あれが本心ならクラスの未来は変わるかもしれないな。宝泉が七瀬よりも強い証拠などないし、彼女が彼より弱い確証もない。
二日後。
午後六時、生徒会室にて。
「─────用意できたぞ。…………真弓」
「ご苦労様です」
俺は生徒会室にて、生徒会長である南雲雅と接触していた。理由は明確、話していたプライベートポイントの件についてのカタをつけに来たからだ。しっかりと2100万よういされているのかどうか。
「…………しっかりありますね。それじゃあ、また今度」
俺は自信のスマホにしっかりと全額が振り込まれていることを確認してから、彼に背を向ける。しかり、去ろうとしたら肩を掴まれた。反撃しそうになるのを堪えながら振り返る。
「…………なんですか?」
「待てよ。俺の前で証拠を消す。そういう‘‘契約’’だろ?」
「そうでしたね。まずは俺のから、でいいですかね」
そう言いながら、俺は音声ファイルを目の前で削除する。当然、バックアップなどはない。だけど、彼は致命的に頭が弱いのか、自分の危機を理解できていない。
「他には誰がいる」
「高円寺くんですかね。因みに、彼のスマホのは俺が削除しておきました。はいこれ証拠ね」
俺は高円寺の画面に音声データが収録されてないのを撮影した映像を見せる。だけど、ここからが問題だ。彼は焦っていたらしい。
「他の協力者はいませんよ。だから、これで全てです」
「信じられる訳ねぇだろ」
「でも、契約したのはあんたの目の前で、関係者毎の証拠を消す。この場合の関係者とは手続き上俺の判断になる。よって、あんたの理屈は通用しない」
「はぁ?!」
「でも、安心してください。これをネタにあなたを退学にする気とかはありませんから。ただ、今後も少しだけ協力をお願いするかもしれません。可愛い後輩の願い、聞いてくれますよね………?」
「──────ああ。そうだな、生徒会長として協力する」
「まいど」
これで、プライベートポイントと南雲関連の仕上げは終了した。あとは、そうだな。まず──────綾小路清隆のペアが決定するまで待つか。
綾小路清隆視点で今の現状を見れば、展開は自ずと見えてくる。まず、最高傑作は俺たちホワイトルームからの刺客とペアを組まされたら終わりだ。ルール的に、綾小路清隆が500点をとってもペアが0点なら退学だから。よって、ペア選びは慎重を極める筈。性別や体格だけでは、一般生徒とWR生を見分けるのは不可能だからね。次に、じゃあどういった基準でペアを選別するのか。それは、最早一択と言っていい。
それは──────『目立つことを恐れないか』どうか。
最高傑作が月城の発言に信頼を置くわけもないが、WR生には目立つなと指示を出していると勘ぐっている筈。というか、アイツの持つ知識ではそう‘‘予測して’’動く以外に選択肢がない。じゃあ次に、誰が状況とその選別方法的にペアになる可能性が高いのか。
それこそが──────宝泉和臣に他ならない。
何故なら彼は試験開始二日目に二年生フロアに突撃し、2-Dや2-Cとドンパチやっているからだ。加えて一夏から聞いている作戦を実行すれば、最高傑作視点WR生である可能性は限りなく低くなる。
更に、俺たちがもし誰ともペアを組まずに残っていた場合を考慮するため、アイツはペアを組まざるを得ない。性格も相まって、俺の予測する未来はほぼ確定事項だ。
だけど、懸念点はある。それは、宝泉自身の作戦が綾小路に止められた際の‘‘方法’’。もし宝泉和臣が綾小路自身に傷をつけてしまった場合、若しくは『傷をつけさせられた』場合。この場合、明らかに異質な事件が起きたとして件を公にされれば、月城も動きにくい。強行突破も視野に入れているかもしれないが、裁判が実際に去年行われたことを考えれば、即日退学とは行かないだろうね。
だからこそ、俺は南雲に協力を取り付けた。裁判は通例通り生徒会主催で行われる筈。だけど、宝泉だけじゃなく綾小路側も下手に注目されるわけには行かないため、生徒会と表立って対立することは出来ない。要するに『退学』と『身バレ』の天秤に懸けられる。
その場合、彼はどちらを選ぶのか。簡単だ。──────前者を選ぶ。
だけどまぁ、当然奴に弱みなど握られないのが理想。だからこそ、打てる手は全て打っておこう。俺から直接ではなく、一夏を通して間接的に彼の行動の予測を宝泉に教えておく。
いくらあの猿面でも、作戦を考える頭があるなら危険性くらいは理解してくれる筈
だ。
月城と南雲の権力コンビが無法すぎる…………