またしても何も知らない狩人さん〜異能バトルよりパンチラが危ない〜   作:概ね右翼

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続け様に第三話となりました。

第三話にしてやっと主人公の異常性が垣間見えるので、間を空けたくなかったのですよ。“鉄は熱いうちに打て“と言うように、好奇心も冷めぬうちが勝負ですから。

まぁ、実際の理由は私が三日坊主ならぬ、三話坊主になるのを防ぐためですね。


後書きに新キャラの容姿を書いております。


第三話 特影――収容対象X

 白い天井を、貴方は見上げていた。

 

 照明は一定の明るさを保ち、影ひとつ揺れない。

 どれほど時間が経ったのかは分からないが、まぶたは一度も落ちてこなかった。

 

 ──眠らない。

 正確には、眠れない。

 

 麻酔は効いていた。

 意識が薄れ、体の感覚が遠のくところまでは確かだった。

 それでも、目を閉じたまま「起きている」。

 

 拘束具の感触を確かめる。少し力を込めてもびくともしない。

 優秀な拘束具だ。これには少々、貴方も骨を折るかもしれない。

 

 そんなことを考えていると、ふと、ガラス越しに人影がある。

 こちらを見ているのではない。

 観測している。

 

 白衣の女が一人、端末を片手に歩み寄る。

 ガラスのそばに立ち、こちらを見てくる。

 

 うむ。実に短いスカートだ。タイツを履いているが、貴方からしたら露出が多いことに変わりない。

 

 貴方の顔を一瞥し、感情のない声で言った。

 

 「おはよう……は、違うか。

  初めまして。

   早速だが、我々は君のことをXと呼称させてもらう」

 

 一瞬、言葉の意味を測る。

 

 「君は自分を“狩人”だと名乗っていたそうだが、正式な名前を持たない以上、こちらで便宜上の呼び名を与える」

 

 女は淡々と続ける。

 

 「今日から君は──収容対象Xだ」

 

 記号。

 番号。

 意味を持たない文字。

 

 ──悲報。

 貴方の初めての名前、即日で取り上げられる。

 

 Aよりも、少しだけ不穏な記号だ。

 

 それでも。

 不思議と胸の奥が、ほんのわずかに温かい。

 

 呼ばれる。

 識別される。

 狩り以外の文脈で、誰かに認識される。

 

 女は貴方を見下ろし、続けた。

 貴方は女を見上げ、スカートを覗いた。見えんか…

 

 「なお、君は一切眠っていないそうだな。かなり強力な麻酔のはずだったんだがな…」

 

 端末に視線を落とし、付け加える。

 

 「まぁいい。安心しろ。眠らせる予定はないし、君には、起きたままでいてもらう」

 

 そう言って女はガラスの向こうで、記録が更新される。

 

 収容対象X──覚醒状態、継続。

 

 その後、貴方を取り囲む機械が検査を始めた。それぞれの機械について一応説明をしてくれたが、正味、貴方は白衣の女のスカートが気になって全く頭に入ってこなかった。

 

 流石に見えないか…

 

 貴方は見えないものに夢を馳せるのではなく。見えそうで見えないものに魅せられるのだ。

 貴方にとって、自身を魅せられないのであれば、ここに留まる意味がない。

 

 気を取り直して貴方は自身の身体をガッチリと固定する拘束具を見た。拘束具は全部で6つ。首、右手、左手、腰、そして両足。

 拘束具は、よく出来ていた。

 関節の可動域を潰し、筋力だけでは破壊できないよう設計されている。人間を相手にするには、理想的と言っていい。

 

 ──普通の人間なら。

 

 貴方は、まず力を抜いた。

 無意味に抗うのをやめ、拘束具の構造を“感じる”。

 

 どこに負荷が逃げるか。

 どこが固定点か。

 どこが「壊れる前提」で作られているか。

 

 工房の仕掛け武器を扱う際、最初に叩き込まれた感覚だ。

 

 次に、動かせる範囲だけを動かした。

 

 手首。

 肩。

 背中。

 

 金属が、わずかに鳴る。

 

 白衣の女は、それを見ていない。

 端末に表示された数値が安定していることを確認し、貴方のことをもう“観測対象”としてしか見ていなかった。

 

 だから、音が変わった瞬間に、反応が遅れた。

 

 ──ミシ、と。

 

 貴方は、一気に力を込めた。

 

 拘束具の一点に、全身の体重と筋力を叩きつける。

 痛みはある。骨が軋み、肉が裂ける感触もある。だが、構わない。

 

 獣狩りでは、もっと酷い。

 

 金属音が、ひとつ、異質な響きを立てた。

 左手が自由になる。

 

 白衣の女は、端末から視線を上げる。

 

 「……?」

 

 拘束具の破壊自体は、想定内だ。

 筋力測定、骨密度、神経伝達速度。

 収容前のデータから、“異常な身体能力”はすでに把握している。

 

 だが。

 

 女の視線が、貴方の左手に止まった。

 

 「……待て」

 

 声の調子が、わずかに変わる。

 

 貴方は、何の躊躇もなく“引き金“を引いた。

 

 ──パン、と乾いた音。

 

 首の拘束具が弾け飛ぶ。

 火花とともに、金属片が床を転がる。弾丸は首まで貫通したため、血がドクドク流れる。

 

 「……は?」

 

 女の口から、短い声が漏れた。

 

 腰、両足、続けて撃ち抜かれる拘束具。もちろん自傷は気にしない。

 銃声が室内に反響し、警告ランプが一瞬だけ強く明滅する。

 

 「……ちょっと待て

   その銃は……どこから出した?」

 

 端末を確認する。

 持ち物検査。

 金属反応。

 武装──ゼロ。

 

 記録上、貴方は完全に非武装だった。

 

 なのに。

 

 貴方の手には、確かに銃がある。

 

 「……おかしい」

 

 女の声に、困惑が混じる。

 

 「隠し持てるサイズじゃない……収納も、転送も確認されていない……異能の反応もない………」

 

 貴方は答えない。

 最後の拘束具が、床に落ちる。

 

 完全な自由。

 

 血が、首から床にぽたぽたと落ちる。

 だが、貴方はそれを一瞥もしない。

 

 「……X」

 

 女は、思わず呼びかけていた。

 

 「それ、自分ごと撃ったのか……?」

 

 貴方は、銃を下ろし、

 血の滲む手を軽く振った。

 

 気にしていない。

 本当に、気にしていない。

 腰はともかく、首まで撃ち抜いて平然としている。

 

 その事実が、女の背筋を冷たくする。

 

 「……っ」

 

 女は、無意識に一歩、距離を取った。

 

 「すぐに処置を…」

 

 最後の固定具が外れたとき、貴方は立ち上がる。

 拘束具が床に引きずられ、ガリガリと音を立てる。

 

 「!?…

  立位移行を確認。──あまり無理はするな。君の傷は──」

 

 言葉は、そこで途切れた。

 

 貴方が、強化ガラスの前に立ったからだ。

 

 分厚い。

 透明度は低く、内部に何層もの膜が見える。

 銃弾にも、爆薬にも耐える設計。

 

 貴方は、拳を握る。

 

 一度、呼吸を整えた。

 

 そして──殴った。

 

 衝撃が走る。

 拳の骨が悲鳴を上げ、皮膚が裂ける。

 

 ガラスは、割れない。

 

 だが。

 

 内部の層が、ずれた。

 

 「!……っ」

 

 白衣の女は冷や汗を流す。

 

 貴方は、もう一度殴る。

 同じ場所を、同じ角度で。

 

 鈍い音。

 蜘蛛の巣状の亀裂。

 次の一撃で、視界に白い線が走った。

 

 女が一歩、後ずさる。

 

 「待て」

 

 声の調子が、変わる。

 

 「それは──完全に想定外だ!X!、そのガラスは──」

 

 貴方は構わず、三度目の拳を叩き込んだ。

 

 今度は、肘も使う。

 体重を乗せ、骨ごとぶつける。

 

 強化ガラスが、崩れた。

 

 破片が床に散り、

 空気が流れ込む。

 

 白衣の女は、奥の壁まで下がる。

 

 「……嘘だろ」

 

 端末が、震える手から滑り落ちる。

 

 彼女の目に映っているのは、

 異能でも、

 計測不能な現象でもない。

 

 ただ、

 血を流しながら、

 正面から壁を壊す“人間“だった。

 

 破壊された強化ガラスの向こうで、白衣の女は完全に言葉を失っていた。

 

 貴方は、ゆっくりと歩み寄る。

 

 逃げない。

 追わない。

 ただ、距離を詰める。

 

 「──警報っ!」

 

 女は、ようやく我に返り、壁のスイッチを叩いた。

 

 直後、低く、腹に響く警告音が施設全体に鳴り響く。

 赤いランプが点灯し、施設全体が騒がしくなる。

 

 足音が近づいてくる。

 

 だが──

 

 その前に。

 

 貴方は左手で、女の白衣の襟元を掴んでいた。

 銃はいつの間にかしまった。

 

 ちょっと重い。

 貴方はそこまで力に自信がある方ではないが、不健康そうな女性ぐらい片手で事足りる。

 

 「……っ!?」

 

 首根っこを掴まれた猫のように、女の身体が宙に浮く。

 抵抗はない。

 女の首が締まる。

 

 女は苦しそうに息を漏らす。

 

 別に腰や腕を掴んでいいのだが、女性の体を触るのは、未成年の貴方にとっては刺激が強すぎる。

 

 足音。

 複数。すぐそこだ。

 

 扉の脇へ女を引き寄せ、貴方も影に潜む。

 

 右手に鉄製の杖を持つ。

 

 呼吸を殺す。

 気配を消す。

 

 ──狩の基本だ。

 

 扉が開く。

 

 三人だ。

 

 「収容室異常!対象──」

 

 言葉は、途中で終わった。

 

 闇から伸びた杖が、一人目の喉を貫く。

 二人目は振り向いた瞬間、首が落ちる。

 

 三人目は、何も理解しないまま床に崩れた。

 

 音は、ほとんど無い。

 

 血だけが、通路に広がる。

 

 一連の動作を、女を片手に持ちながら終わらせた。

 最初に白衣の女を殺すことができたが、貴方はしなかった。

 

 理由は単純。

 道案内が欲しかった。

 

 貴方は女に素直に道案内が欲しいとだけ伝えた。

 

 女は苦しそうに「……君っ」とだけ言った。

 まともな会話ができそうになかったので、女を地面におろす。

 

 女は顔から地面に落ち、必死に空気を吸う音だけがあたりに響いた。

 

 数秒もすれば、まともな会話ができるほどにはなった。貴方はもう一度、道案内をして欲しいと伝えた。

 

 「……君、ここが どこだか知っているのかい?」

 女が姿勢を変えながら尋ねてくる。

 貴方は「分からない。」と、首を横に振る。

 

 貴方は俵担ぎで女を持つ。その際女は「ぐえっ…」と声を漏らしたが、貴方は気にしない。強いて言うなら、思ったより柔らかい女の体にちょっとドキッとする。よくない感情が沸々と湧いてくるが、貴方は必死に堪える。

 

 収容部屋の入り口を出る。

 

 「この施設は、層構造で──」

 貴方は最短の道をだけでいいと伝えた。長い説明に耐えられるほど、貴方のコミュニケーション能力は高くない。

 

 貴方の足音と杖をつく音は警報にかき消される。

 遠くから、大勢の足音が聞こえる。

 

 「……研究対象に、こんな使われ方するのは初めてだ。」

 女は不満そうな声でごちる。思いの外、大丈夫そうだ。

 

 「次を右に曲がって、直進すれば君は制圧部隊に蜂の巣にされる。」

 

 貴方は迷わず右に曲がる。女は小さく「正気か…」と声をこぼす。

 

 「……質問を、していいかい?」

 

 無視。

 

 それでも、女は話すのをやめない。

 

 「X…君は、何者だ…?」

 

 貴方は短く、「狩人」とだけ伝えた。

 

 それに女はクスッと笑い。

 

 「そうか……

      私は、白石。博士と、呼ばれるが、私は好きじゃない。」

 

 貴方は思った。Xよりいい名前だと。

 

 

──────

 

 

通路の向こうから、慌ただしい足音が近づいてきた。

装甲服を着た部下が一人、息を切らして立ち止まる。

 

「伝令!お知らせします!」

 

声が裏返る。

 

「収容対象Xが現在脱走!既にBブロックは突破され、脱走間近です!」

 

一瞬、通路が静まり返った。

赤色灯の回転音だけが、規則正しく空間を刻む。

 

報告を受けた少女は、ゆっくりと息を吐いた。

 

「……はぁ」

 

苛立ちとも、呆れともつかない溜息。

 

「全く」

 

少女は肩をすくめ、装甲服の手袋をはめ直す。

 

「これだから、たいした異能しか使えない奴らは役に立たない」

 

部下の表情が一瞬、強張る。

だが、反論は出ない。

 

「拘束も、監視も、数だけ揃えて満足しているからこうなる

 “人間”を収容しているつもりで、“獣”を見ていない」

 

少女は前に出た。

 

「いい。オレが出る」

 

部下が慌てて続ける。

 

「し、しかし!相手は既にいくつもの部隊が制圧に失敗しています!通常の制圧手順では──」

 

少女は振り返らない。

 

「だから、オレが出ると言っている」

 

短く、切り捨てるような声。

 

「Bブロックは閉鎖しろ。射線は制限、異能は許可する。

 生死は問わん。止める。それだけだ」

 

装甲服の内部で、何かが起動する低い音が鳴る。

 

「……理解しました」

 

部下は敬礼するが、その動きはどこか硬い。

 

少女は歩き出す。

警報音の中、まるで散歩に向かうかのような足取りで。

 

「収容対象X、か」

 

口元に、わずかな笑みが浮かぶ。

 

「少しはオレを楽しませろよ。X」

 

赤い光の中、

彼女は真正面から“狩人”を迎えに行く。




キャラ紹介

白石(しらいし)
異能:不明
年齢:不明
身長:167(猫背)
体重:ちょっと気になる重さ

容姿:眼鏡を身につけたダウナー系の美人。
   目の下には隈が目立つ。
   茶色のセミロングの髪を、普段は後ろでひとつにまとめている。
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