またしても何も知らない狩人さん〜異能バトルよりパンチラが危ない〜 作:概ね右翼
──悲報。
貴方の二度目の名前、即日で取り上げられる。
「収容対象X」。語感も響きも、実のところかなり気に入っていた名前だった。それが、あっさりと返却されるとは思っていなかった。
再び、貴方の名は“狩人”に戻る。
少しだけ、名残惜しい。
「わぁ〜……おっきい。ねぇねぇ狩人さん、今日からここが私たちの住む場所ですよ!」
隣で小さく跳ねるようにしながら話しかけてくる少女──雨宮。
貴方がこの世界に来て、最初に出会った原住民であり、そして珍しく、今のところ一度も貴方に攻撃してこない存在だった。
この地は、例に漏れず貴方に優しくない。
突然銃を撃ってくる少女、ナイフを飛ばしてくる少女、果ては周囲のあらゆる金属を操って滅殺を図ってくる少女まで、まさに殺意のバーゲンセールである。
最後の少女に至っては、お気に入りの武器を没収された状態で相対する羽目になり、実に不本意だった。(仕込み杖は水盆の使者に回収してもらった)
それでも──不思議と、今の貴方の機嫌は悪くない。
いや、むしろいい。
理由は単純で、貴方の敵がことごとく可愛らしい少女ばかりだからだ。しかも露出度が高い(重要)。
普段相手にしている獣や異形と比べれば、目に優しすぎる。生きる意志が湯水のように湧いてくる。常時リジェネである。
「えーと……一号館は……あ、ここですね。六階が、私たちの部屋らしいですよ」
「……」
「えへへ。まさか出会ってすぐに同棲になるなんて、思いませんでした」
「……」
「これからも、よろしくお願いしますね。狩人さん」
この世界は、実に精神に優しい(迫真)。
気づけば、うら若き乙女との同棲生活が始まろうとしている。
かつての自分に話したところで、到底信じてもらえないだろう待遇の良さだ。
貴方も、昔──誰かと、こうして共に暮らしていたような気がする。
だが記憶は曖昧で、輪郭だけを残してすぐに霧散してしまった。
まあ、記憶が定かでないのはいつものことだ。
気を取り直し、貴方は雨宮の少し前を歩きながら、大きな館──寮の中へと足を踏み入れた。
この寮と呼ばれる建造物は、実に素晴らしい。
室内は明るく、天井も高い。閉塞感はなく、光がきちんと人の営みを照らしている。
そして、そこに住む少女たちは、貴方に歓迎の視線を向けていた。
「あれが例の……」
「本当に人型の召喚獣……」
「確か、あの黒鉄先輩に目をつけられてるらしい……」
「でっか……」
「何がとは言わないけど、デッカ……」
聞こえてくる言葉の数々は、驚きや好奇心を含んではいるが、どれも比較的穏やかだ。
少なくとも、貴方がこれまで向けられてきた言葉に比べれば、ずいぶんと心温まる部類である。
貴方のような余所者に掛けられる言葉といえば、本来は──
「死ね!!」
「出ていけ余所者!!!」
「この売女めが!!!!」
が、相場だ。
それを思えば、視線に好意と戸惑いが混じっているだけでも、ここは随分と平和な場所だった。
「さ、流石に視線が痛いです……は、早く部屋に行きたい……」
そう小さく呟きながら、雨宮は貴方の背中をぐいぐいと押してくる。
逃げるようでいて、なぜかその手つきは遠慮がなく、妙に近い。
踏まずに反応するスイッチ式のエレベーターに軽い驚愕を覚えつつ辿り着いた先は、
《621号室》と書かれた扉の前だった。
「ふぅ……緊張しますねぇ。
同室の子とも、仲良くなれるといいのですが……」
長い深呼吸を何度も繰り返す雨宮をよそに、貴方は躊躇いなく扉を開ける。
そこには、待ち構えていたと言わんばかりに佇む、気の強そうな金髪の少女がいた。
またもや可愛らしい女の子。素晴らしい。
「あんたが……私と同じ部屋に住む、雨宮って……や……つ……?」
雨宮より少し小柄なその少女は、貴方を爪先から頭のてっぺんまで、ゆっくりと見上げる。
先ほどまでの威勢はどこへやら、顔色はみるみる青ざめ、額には冷や汗が浮かんでいた。
「あ、あんたなんて別に怖くないんだから!
とりあえず、この部屋では私が先輩なんだからね!!」
恐怖を打ち消すように虚勢を張るその姿は、どこか必死で、そしてひどく可愛らしい。
足が小刻みに震えていることに、本人はまだ気づいていないらしい。
「わかったわね! 雨宮星空!!」
「ひゃい!」
情けない声を上げた雨宮に、金髪の少女は目を丸くし、思わず貴方の背後にいる雨宮を見た。
「もぉ狩人さん……開けるなら開けるって言って下さいよぉ……私の心の準備が……」
「あ、あんたが雨宮星空なのね……じゃ、じゃぁこちらの……方は?」
「一応、私の召喚獣です」
貴方は短く、「狩人だ」と名乗りをあげた。
「あ、はい…………え……えぇ!?
ちょ、ちょっと待って!? あんたが召喚獣なの!? どう見ても人じゃない!?」
その声には、表ふより困惑と混乱が滲んでいた。
どうやら、実に楽しそうな生活が始まる予感がした。
────ー
【雨宮視点】
「……こほん。とりあえず自己紹介するわね。
私の名前は白峰澪(しらみね みお)。趣味はお菓子作り。
部屋の左側は私のスペースだから、勝手に入ってこないでよ」
そう言って腕を組むミオちゃん。
短い金髪をツインテール──いわゆるバードテールってやつにしていて、私より少し小柄。
さっきまではいかにもツンツンした印象だったけど、狩人さんを意識しているのか、声の端がどこか弱々しい。
(あ、これ……強がってるタイプだ)
「ミオちゃんね。私は雨宮星空。ソラって呼んでくれたら嬉しいな。
ミオちゃんって呼んでいい?」
「……聞く前からもう呼んでるじゃない。
仕方ないわね。いいわよ、ソラ」
「やった! ありがと、ミオちゃん!」
第一印象は、かなりいい。
この感じなら、きっとすぐに仲良くなれる──そんな予感がした。
「……というか。
狩人……さんは、立ちっぱなしで疲れないの……ですか?」
「……」
「別に、敬語じゃなくていいって」
「……なんでわかるのよ」
そりゃあ、わかりますとも。
私たちですから。(出会って三日)
「はぁ……じゃあタメ口で話すけど。
狩人、部屋の中でもその格好って暑くないの?
せめて帽子くらい脱ぎなさいよ」
「ミ、ミオちゃん……なんて破廉恥なことを……」
「……」
じとー。
「な、なんでよ!?
今のどこが破廉恥なのよ!?」
私ですら、狩人さんの素顔は見たことがない。
それなのに、初日から帽子を脱げだなんて──。
(ミオちゃん……思ったより……大胆……)
「あーもう。見てるこっちが暑苦しくなるから、勝手に脱がせるわよ」
「え、ミオちゃん!?」
まさかの実力行使。
私は咄嗟に両手で目を覆う。……覆うけど、指の隙間はしっかり空いている。
「ちょっとは屈みなさいよ! ……見てなさい!!」
そう言って、ミオちゃんは椅子に乗った。
必死に腕を伸ばすその背中が、小刻みに震えている。なんか可愛い……
「あと……ちょっと……」
ガタッ
「ひゃ──!?」
椅子が揺れ、ミオちゃんの身体が前に崩れる。
「危ない!」
そのままミオちゃんは狩人さんの方に倒れ──
──ポヨン
「っ!!??」
ミオちゃんが、狩人さんの胸に埋まってしまった。
「ひゃ────ー! ミオちゃんのエッチィィ────!!!」
私の狩人さんに!! 私の狩人さんなのに!!!! 許すマジミオちゃん。
「こ、これは事故よ!!」
ミオちゃんは言い訳をつらつら述べるが、いまだに狩人さんのπを堪能している時点で有罪。ギルティ!
「……」
「ほら! 狩人さんも恥ずかしいって!!」
「言ってないでしょうがー!!
てゆうか狩人! 元々あんたのせいなんだからね!!」
半ばヤケになったミオちゃんは、叫びながら狩人さんの帽子とマスクに手を伸ばした。
狩人さんの帽子が落ちた。
バサッ──
「……んっ」
「」
時間が止まったかのような感覚に襲われる。
私とミオちゃんは目を見開いた。
単刀直入に述べるなら、狩人さんの顔はとても美しかった。
私の国語47点の語彙じゃ到底足りないほど。
まず、この世の穢れを知らないかのような“白さ”
白と表現することにすら、迷いが生まれるほど色がなく。そんな髪が流れている。
目元だけでも綺麗な顔なことはわかってた。
だけど、
ぷるんとした唇がとっても甘美で……
ミオちゃんか私からか、息を呑む音がした。
数分から数時間。もしかしたら数秒かもしれないけど、それぐらい私たちは見惚れていた。
「……ん」
狩人さんがいい機会とばかりに服を脱ぎ出したときに、ようやく私たちは動き出した。
「ちょちょちょ!! 狩人さん! それ以上は刺激が強い!!
「私が悪かったから!! R18になっちゃう!!」
そう叫ぶ私たちを気にも留めず、コートを脱ぐ。
「わわわわっ私たち後ろ向いときますから!!」
「着替えたら着替えたって言ってね!!」
ミオちゃんと玄関の方に振り向く。
パサッ……
ガチャガチャ……
パサッ……
狩人さんの服やベルトなどが地面に落ちていく音がする……
心臓がとってもうるさい。
ミオちゃんも耳まで真っ赤にしてる。
私女なのになんでこんなにドキドキするのよ……
今……振り返れば、一糸纏わない狩人さんが……
いやいやダメダメ……
痴漢は犯罪……性犯罪は罰金1000万または懲役50年(てきとう)
ちょっとだけ……
いやいや
「……ん」
背後から音が鳴らなくなった。つまり、狩人さんが着替え終わったのだ。
意を決して振り向く。
エッッッッッ!!!!!
ふぅ
なんか狩人さんは今までとは違い、ぴっちりとしたスーツ姿*1になっていた。
わー、今までのコート姿だと体のラインが分かりづらかってけど、
狩人さんってドスケベな体してますねぇ。
ミオちゃんには刺激が強かったのか、鼻血まで垂らしてるし……
もちろん、私も鼻血を垂らしてる。なんなら涎も垂らしている。
こうして私たちの、
少し騒がしくて、少し危険で、
とても甘美な同棲生活が始まった。