シカバネは明日を夢見るか 作:第四東高等学校デビルハンター部
「どちら様で・・・?」
「……真白ヒナです。よろしくお願いします」
軽く頭を下げるヒナ。
「契約している悪魔は、狼、骨折、吐き気、寄生虫、鏡、迷宮、深海です」
ヒナの口から発せられる無数の悪魔の名前に気圧される呪鬼。
狼の悪魔。最古の悪魔として文献に名が残る偉大な悪魔であり、現世で500年生きながらえている。今では公安の地下収容施設に監禁されており、優秀なデビルハンターが契約する悪魔として名高い。
契約者に呼ばれると、青い毛を持つ巨大な狼として現れ、指示された命令に従う。
呼び出す者を狼が気に入るかも従うかどうかの判断基準だそうだ。
狐の悪魔と同時期に確認された悪魔で、義兄弟の契りを交わしているとかなんとやら。
「で、こいつは何の悪魔だったんですか?」
ヒナが街にのしかかるスクラップの山を指差す。
「車の悪魔だな。能力を見るまで何の悪魔かはわからなかったが、見た目を変えて再び現世に現れたようだ」
月宮が崩れた街を見ながら言った。
悪魔は現世で死ぬと地獄に現れ、地獄で死ぬと再び現世に舞い戻ってくる。
地獄には「超越者」と呼ばれる悪魔が存在しているという噂もあるが、真偽は不明である。
地獄からの生還者がいないためだ。
地獄、それは即ち悪魔の巣窟。地獄で生き延びる実力のある悪魔だけがそこにとどまり続ける。
人間が存在していい場所ではない。
現世と隔絶された異様異質の空間。この世と物理法則がかけ離れている可能性だってあるのだ。
◇ ◇ ◇
「呪鬼くんはまだわからないと思うけど……」
本部庁舎への帰り道で水上が呪鬼に話しかける。
「悪魔の被害って、何があると思う?」
しばらく考える呪鬼。
「建物が壊れたり、それこそ死ぬ人が出たり。あとは復旧の費用とかもかかりますよね」
「大正解!でも、そのうちの一つ、建物の破壊は、その4割が公安のデビルハンターによるものなんだ」
「え?そうなんですか?」
目を丸くする呪鬼。
「オブラートに包んで言うと、公安は法律と悪魔の間で板挟みなんだよ」
「ふ~む」
「だから、書類の整理を手伝ってもらいます!」
水上が笑顔でそう言った。
◇ ◇ ◇
流れるような手つきでハンコを押していく月宮。
「すごい……もう手が見えない」
呪鬼がぼそっと呟く。
「新人にしてこれを見れた呪鬼くんはすごいよ。とても特別だ」
「そうなんですか?」
「これを拝みに隊長室に来る隊員も少なくないんだよ」
噓だろ。
人のハンコ押してるところ見て何が楽しいんだ。
癒しでもなんでもない。というか月宮さんの瞳には今命宿ってないわ。
なんなん?Tiktokでも撮るんか?
#高速ハンコ押し
需要ねぇ~
「でも、ここに来たのはTiktokを撮るつもりで来たんじゃないんだ」
そりゃそうだわな。
「3課から移動してきた、ヒナちゃんのお姉ちゃんがいるはずなんだけど……」
その時、資料が並べてある資料室の中から轟音が響く。
「すみませ~ん!」
隊長室の扉を開けて、金髪でロングの女性が姿を現す。
「あ、新人さん。真白ハナビです~。よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします……」
頭を下げる呪鬼。
「てか!本棚倒しちゃったんで!手伝ってください!」