ようこそ!地獄から地獄へ─転生先がBLEACHだなんて聞いてない!─ 作:ブラックコーヒー
よろしくお願いいたします。
「うっ···、····」
まだ春の陽気が続く中。
とうに日も落ちて、時計の針が深夜の時間帯に差し掛かったころ、白石要は自室のベッドの上で寝苦しそうに額に眉を寄せていた。
何か、自身よりも強い強敵と戦っているような描写が夢の中で広がり、最後には頭から真っ二つに自身がぶった切られた夢。
かと思えば、空港の椅子で目が覚めて、頭を思い切り引っぱたかれた。
『お疲れさん!!オマエにしてはよくやったんじゃねーの?』
『お疲れ様、要。久しぶりだね』
状況が状況に頭の理解が遅れた、と言うかわけがわからない。
『···悟、傑まで!?』
傑は「やぁ」とヒラヒラと手をふっている。
『なぁーにビックリした顔してんだよ。周り見てみろよ···』
俺は驚愕した。
この空港には、″失った″関わりのある者達がいたからだ。
『どうして···、七海!灰原!りこちゃんまで···』
そうか。
そうだった。
俺は宿儺に破れた、んだったな···。
俺は悟った。
この世にはもういないのだと。
この空港は魂の集まりで、あの世の入口に続いているのだと。
『気がついたか?で、お前はどうすんの?南か北か···』
『悟···あのさ、もうちょい別れを惜しむとかねーの?』
『悟。自分はさっきまで喋っていたから良いと思うけど、俺は要とは久しぶりに会ったんだから、最後くらい話をさせてくれないか』
俺達からの視線に、悟は『悪い』と口を閉じた。
大人しくなった悟に薄気味悪い感じもするが、『要···』と傑がおもむろに口を開いた。
思い詰めた顔するものだから、傑が言わんとしている事が嫌でもわかった。
『謝んなくていい』
『え』
『それなら、俺達こそ···(原作知ってる癖に、何一つ変えられやしなかった)』
けど、最後にしみったれた感情でさよならすんのは嫌だ。
出来れば楽しい気持ちで別れたい。
『なぁ、最後に写真撮らね?撮れるか知らんけど』
『····は?』
『転生した時、こんな事あったなって思い出せるきっかけが欲しい。俺達、マブじゃん?』
『マブって今どき使ってる奴いねーよ!!』
死後にゲラゲラ笑う悟に、ポケットからスマホを取り出した。
『笑ってる奴は仲間に入れてあげませーん!!!はいチーズ!!』
『はぁ!?ちょ、待てよ!!』
俺と傑を入れて画面をタップすれば、慌てた様子の悟が画面に思い切りバレた形で映し出された。
『なにこれ、新種のポケモン?』
『だな』
その後はもう、ぎゃあぎゃあ騒ぎながらスマホの容量がいっぱいになるまで皆で写真を撮った。
そして、まだ地上に残る皆の様子を見届けてから、俺は北の道を選んだ。
選んだのは俺だけじゃ無く、他の皆も。
結局、皆同じ飛行機に乗って、各々の転生先へと消えて行った···。
『じゃあな!!』と見送る仲間に、寂しいような嬉しいような、切ない想いを残して。
そこで、心臓がどくりと鳴って一気に目が覚めた。
「っ、···!!!」
(思い···出した!!)
今世で生きてきて15年、思い出した記憶はあまりにも懐かしい物だった。
汗びっしょりかいて、俺はベッドから体を起こす。
現世ではブラック企業に務めて過労死して、呪術廻戦の世界に転生したかと思えば、楽しい青春時代を謳歌して大人になったら宿儺に敗れて、オマケに今世は······BLEACHの世界である。
部屋の壁には空座第一高等学校のグレーの制服がフックにかけられている。
どこをどう見ても空座第一高等学校の制服だし、入学式に物語の主人公である黒崎一護も見かけた。
なんだったらクラスメイト···。
てか、なんでまた漫画の中の人物に転生した?
つかさ···前前世から数えて中身いくつよ俺!
流石にオッサンに制服はキツイもんがあるだろ···外見が若いから許されているようなもんだし。
あー、マジかー···BLEACHかぁ···。
「···だよな」
手のひらに呪力を集めてみても、集まるわけもない。
転生した事実だけを痛感させられる。
···いや、待てよ?
何の力も無いのならば、今度は普通の人生が送れるんじゃね?
今度は、ジジイになるまで生き残れる可能性がある、って思ってもいいんだよな?
今度はもっとマシな会社に入って、趣味に没頭できるような···結婚は流れに任せればいいし、とりあえず今は勉強を頑張ってなりたい職業を選べばいい。
···。
皆、無事に次の人生を歩んでいるだろうか。
俺はその日、興奮気味で結局ろくに眠りに付けずに1夜を明かした。
そしたら、もう原作が始まってたってマジか。
朝のHRで、朽木ルキアがやって来た。