ようこそ!地獄から地獄へ─転生先がBLEACHだなんて聞いてない!─ 作:ブラックコーヒー
「初めましてー、わたくしー朽木ルキアと申します」
教室に入り、教壇の横に立った朽木ルキアは一生懸命覚えただろう言葉遣いで挨拶をした。
小柄で色白で今でもポキッと折れそうな体躯をしていて、ひ弱な女の子にしか見えないのが正直な感想だった。
ちなみに、俺のタイプは井上織姫だ。
ただタイプってだけで、将来黒崎一護の嫁さんになるから俺は手を出すつもりもない。
恋愛感情もいだいている訳でもないし、別に独身だっていい。
将来、歳をとったら猫を飼うつもりだからだ。
もふもふの毛並み、遊んでたり、撫でたりしていると突然噛まれるツンデレ具合。
大きな口で欠伸をすれば、生臭い匂いが漂ってくる(だがそれがいい)
お腹に顔を埋めれば、迷惑そうな顔をされるけれども、あの上質な毛並みに柔らかなお腹の感触がたまらない。
やっぱり良いよな···猫。
「おーい、白石ー」
毛づくろいしている音も良いよなー。
「ふがっ!」
「白石ー!手上げろって行ってるだろー」
先生からチョークがぶっ飛んで来て、見事に額に当たった。
先生のコントロールすげぇな!
悟だったら無限で弾き返してたんだろうなぁーとか考えつつ、「すみません」と言いながら手を上げた。
「白石、あいつの隣が朽木の隣だ」
「白石、朽木はまだ教科書もらってないから見せてやってくれー」
「わかりましたー!」
朽木ルキアが俺の隣の席に来たのを見届けて、俺は隣の席に机を付けた。
「朽木ルキアと申します。よろしくお願いいたしますわ」
ご丁寧にどうも。
「俺は白石要、よろしくね」
差し当たり無い挨拶を交わして、1時間目の教科書を机の上に用意していると、ふと、隣から視線を感じた。
あれ、もしかして筆記用具とかノートとか忘れた?
「朽木さん、もしかして忘れ物した?」
「あらごめんなさい。何でもありませんわ」
何でもないなら何で見るんだ。
「あのー、一つお伺いしたい事があるのですが、黒崎一護くんはまだ来ていませんの?」
「ん、あぁ···まだ来てないみたいだね」
つーか、···ドラえもんよろしく黒崎家の押し入れに寝泊まりしとなかったか?
「知り合い?」
「顔見知り程度ですわ」
顔見知りねー。
まぁ、俺は原作に介入する気ゼロなので、「ふーん」とさほど興味無さそうに頷いといた。
俺は今世は爺さんになって死ぬし、猫と一緒に暮らすから介入はしたくはない。
ただ、···まぁちょっとだけ、あのオサレで厨二病じみた鬼道の呪文は言いたいと思うけれど。
···ぶっちゃけギガスレイブとか撃てたら尚更良いなって思うけど、物語違うしな···おっと、今日の俺は思考がブレすぎているらしい。
それから程なくして、教室に包帯をした黒崎一護が登校して来た。
この教室に朽木ルキアがいる事に驚き、そして彼女に連れらされて行った。
て事は、そろそろコンが出てくるのも時間の問題だろうなーと、他人事のように考えていた。
♦
外がギャーギャー騒がしい。
黒崎一護と朽木ルキアが教室から姿を消した後、視界の隅で黒い塊がのっそのっそ歩きながら学校へ近づいて来ているのがわかる。
いや、ちょっと待て···俺に霊力は無いはずだ。
元々似たような呪力はあったが、転生してからは全くと言っていい程だ。
なら何故、虚が見える?残像か?
気のせいか、気のせいだろうな。
昨日は眠れなかったから多分、これは夢だ。
···夢だ。
そうこうしているうちに校庭に入って来た虚は、次の瞬間には死神化した黒崎一護により真っ二つにされていた。
何もしなくとも物語は黒崎一護により解決して行く。
つまり俺が出る幕なし。
しかもこのクラスのモブと言う立場なのだろう、そう思う。
だってイレギュラーじゃん、俺。
いてもいなくても変わらないっしょ。
て思っていた放課後、俺は虚とリアル鬼ごっこをする羽目になるとは、この時露ほども思わなかった。