ようこそ!地獄から地獄へ─転生先がBLEACHだなんて聞いてない!─ 作:ブラックコーヒー
ぽちゃん···。
湯船からはほわほわと湯気が上がり、浴室の空気を温かく包んでいる。
ぽちゃん、と天井から垂れた雫が湯船に落ちて波紋を作ったそれをぼうっと眺めながら、体を肩まで湯に沈めた。
(今日のアレ···黒閃だよな···?)
風呂と言うのは、夕飯を食べて忘れかけていた出来事をどうして思い出させるのか。
虚に追いかけられて切羽詰まった状況で、黒閃を火事場の馬鹿力のように出したのは、何とも懐かしく···言葉に出来ない気持ちが巡った。
何で出せた?どうしてこの世界で黒閃は出せたのか。
黒閃が出せたのならば、術式だって出せるはずなのに、これだけは出来ないのだと確信がある。
まるで、見えない力を鎖でがんじがらめにされているような。
解けかけたパズルが溶けないような、気持ちの悪さが残るだけだった。
そう···気持ち悪い···。
「やべぇ···のぼせた···」
ざばっと湯船から上がって大きくため息を着いた。
♦
ゴオゴオと激しく燃え盛る
「··········はぁ、?」
要を中心に焰が辺り一面に広がり、オレンジと赤を混ぜたような世界が広がっていた。
体には白い死装束を纏い驚きに目を丸くしたが、不思議と熱さは微塵も感じがなかった。
(熱く···無い?)
「何処だ···ここは」
困惑気味に辺りを見渡す要は、何かにつられるようにしてフラフラと足を踏み出して歩き出す。
行き着く先もない、ひたすらに広がる焰の海。
でも、
産まれて自覚した時には、息を吸うように扱っていた術式。
何故、それが今領域展開のように広がり、自分を囲んでいるのか。
転生してBLEACHの世界に来た時には、自分からはもう切り離された物だとばかり思っていたのに。
一度は忌々しいと拒否した力。
しかし、いざ無くしてみると自分の中にかけたパズルのピースが足りないと、頭の中で自覚していた。
そして今、かけたピースの一部が心の中に埋め込まれた気がした。
自然と欲していた力に、今かこまれている。
「黒閃はきっかけぞ」
焰の奥で、炎の神のような格好をした男が嗤った。
「っ、····!?」
「何を驚いている。私はかつて、
先程まではいなかった人物が、要の前に立ちはだかった。
オレンジ色の夕焼けの色、全身に纏うのは業火の炎。
金色に細められた瞳はそらすことが許され無いかのようだ。
「·····」
要は息を飲んだ。
切り離されたもう一人の
「要、死神になれ」
「はっ、!?」
「でなければ、お前は死ぬ」
「死ぬって、何言ってんだ···!」
「お前はこの世界では中途半端すぎる」
「!!」
息を飲む要に続ける。
「呪術師でもない、死神でもない···けれどそうだな、死装束を着ていると言う事は、死神になりたいと少しばかりの思いがあるからじゃないか?」
「はっ、何言って···、まぁ···確かに憧れた事はあるさ、けどそれは夢みてーなもんだろ。子供のそれと同じようなもんだ」
(何考えてやがる、コイツ···それに術式が自我を持つって···)
「ほう?なら俺の手を取れ、要」
「とったらどうなる?」
「案外、面白い事が待ってるかも知れないぜ?」
「·····、ろくな目にあわなそうな事は確かだな」
何となく、自分の行き先がわかってしまった気がしたが、ここまで来たと言うことは、後戻り出来ないと言う事なのだろう。
若干の諦めと共に、要は差し出された手の上に自分の手を乗せた。
瞬間···。
「うわぁっ···!!!?」
焰に包まれた要は、黒い死神装束を纏い、右手には朱色の刀身の着いた刀が握られていた。
「·····、おかえり。加具土命」
揺れる焰の風が吹く中で、要はそっと呟いた。
一度、呪術で加具土命ネタで失敗したので、リベンジも込めて。
見切り発車でいつまで書くのか分かりませんが、よろしくお願いいたします。
ちなみに、死神化していない時は珠々玉になります。
特級呪具のような物だと思って下さればと···。