Asyu-on Archive 作:非キヴォトス人のアコード
どうしてこうなったんでしょうね
1.ハロー人類と立ち上がり
キヴォトス。
それは数多の学校が行政を成し、そして数多の生徒達が過ごすある種の方舟。
その成立は古く、とある学園は幾年も前の合一を起源とする。
「そのような場所で、あなたは『ヒトの進歩』の為に神秘を探求すると……」
「えー概ねその通りです」
私はキヴォトスでいうところの『外の世界の人間』、メタ的に言ってしまえばこの与太話を読んでいるお前達の世界の人間である。
そんな『外の世界』より確認した『神秘』というナニカ。それはそのヒトその一個体にひとつ内包される、一個体の証明。
このナニカはキヴォトスにおいても、そして私が本来いた外の世界においても、誰もが『己の己たる所以』をいついかなる時も思い出せるヒト科の持つ最大の武器たりえるのではないか…ひいては見せかけの指導者によって己を失ったヒトが、己を取り戻すヒントになり得るのではないか。
これこそ、某がキヴォトスに訪れた理由だ。
「クックックッ…それはそれは。あなたのような考え方もまた、新たな視座としては良きものでしょう…。是非とも『ゲマトリア』へお越しいただきたい限りですよ、『ヒラサワ』さん」
「よろしいのであれば、末席を預からせて頂こうかと」
外から来た男、そうあることとする。
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ゲマトリア。
キヴォトスに存在する『神秘』というナニカに対する探究を行う『大人達』の集会。
私が知り合った3名ないし4名は、各々のスタンスを以てそれにあたる。
「もう1名いらっしゃるという話ですが」
双頭のデッサン人形がその旨説明する。
「今そのもう1人の彼女は、故あって『教育』に御執心されている。顔合わせをされたいなら、こちらから出向くしか方法はないだろう」
「そういうこった!!」
これはどちらだ、無貌の大男の声だろうか。
「A・ROR?…それであれば」
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ゴルコンダ、デカルコマニーの一対に案内され至る巨大地下墓地。
8時着火の5分前、2人の少女が地下墓地から姿を出す。
あまりにも衣服以外がみすぼらしい。
あまりにも憎悪が隠せていない。
憎悪?
何に?
この地の果ての子らは、何に対する怒りを増幅させられているのか?
「ヒラサワさん?何か、彼女達の様子を見てから思考を回しているご様子ですが」
「…どういうこった?」
カタコンベの道中、一対に尋ねられる。
「この先にゲマトリアの先達がいるとしても、私の在り方との擦り合わせが非常に困難を極める可能性が見出されたというだけです」
面会の場に向かう間、異常な思索の視線を感じた。
『あの見慣れない者らも敵か』、『あんなのに気を取られる意味ないのに、何かを期待してしまう自分に辟易する』、『期することを表してはいけないが、あの人はもしや…?』、『あの人も私たちの辛く苦しいことに加担するんだろう』。
清廉の雨など無いとでも、この地の果てで生きる子らは教えられでもしているのか?
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「お時間をありがとうございます『ベアトリーチェ』、ゲマトリアに最新参が現れた故に」
「そういうこった!!」
「ええ全く。この忙しい時に何事かと思えば…新たな同志とのことでしたし、ご案内せざるを得ません」
なぜだろうか。
眼前の赤肌の女は見目こそ大人だが、私には卑しく権威を振り撒く醜悪な童子にしか見えないのだ。
「ごきげんよう。ヒラサワとお呼びくだされば」
「ゴルコンダよりご紹介預かりました、ベアトリーチェ…子どもたちには『マダム』とも。以後お見知り置きを」
ああ分かったぞ。
敬称を以て子どもたちに自身を『上位者』と錯覚させる常套トリックだ。それを以て地の果ての子らを、利己の為の道具にしている可能性を見出すのは易き事である。
「…さて!で…『アンタ』ここで何していらっしゃるの」
即ちこいつは『落っことしていいやつ』だ。
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一対は突如翻した態度に疑問を呈す。
「ヒラサワさん…?何か、ベアトリーチェに申し立てたいところでも?まあ、私としても思うところが無いわけではありません。しかしゲマトリアとしては、このキヴォトスに多大な存在感を与えている実績をお持ちの方なのですがね…」
「ど、どういうこった……?」
そもそも先達のゲマトリアの面々が、神秘を探究し何を見出そうとしているのか。それは神秘というナニカの先にある『崇高』というナニカの観測、そしてそれを以て行う『色彩』とやらへの対抗策の策定。
私から言わせれば『崇高』は神秘どうこう以前に『すぐそこ』にあると思っている。しかしてどうやら、それと違う崇高へ至る一助となる力が、神秘にはあるらしい。
「私はヒト科全てが『崇高』に至る力を持ち、かつ可能ならばヒト科全てが『崇高』に至るのが好ましいというスタンスを以てここに立っております。崇高というものがただ1人の手に渡るという悪しきルートを排除しようと思索しているのです。だから問うているのは至極簡単。別にそれはそれで勝手にやればよろしいけど、アンタのやろうとしてるのはそれでしょ?」
「はあ…最新参者が何を言い出すかと思えば。その通りですよ、私が崇高に至る為に子どもたちを『教育』し贄とするためにこのアリウスを利用しております。もう一度申しましょう、私は私の為に崇高を望みます。子どもは大人に搾取されるという道理の元に」
うんこいつダメ。臨終を与えてもその形は異常なまま輪廻を遂げる、どうしようにもない極度に歪んで汚い女だ。
「あそう、じゃ、私はこれで」
「どっ、どういうこった!?」
無貌の男は慄くばかり。背を向く男さえ動作はないものの…困惑を隠せていないのだろう、出す言葉が見つからない様子だ。
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あの細身な中年…壮年にも見える男性が聖堂から出てきた。
何処までも、何処まで行っても『自分』を生きているかのような一種の狂気が感じられる。
私達に『ないもの』しかない、アリウスに生きる私達に『ないもの』しか。
そしてそこには来訪した時になかった、表層に出ない明確な『怒気』がある。かつ理由は分からないけど、確信できる部分もある。
あの怒気は明確に『マダム』に向いている。
そして私も、知らぬ間にあの細身な壮年に『足が向いている』。
「ひ、ひとつだけ聞いてもいいか…?」
「おや」
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「『全ては虚しくとも、それはその1日最善を尽くさない理由になってはならない』…私はそう思ってこの地で生きている、けど…私は…間違っているのかな…」
有翼の少女が、自身含めアリウスの子らが教えられたモノの一端を指し示した。
しかしその中でこの囚われの娘は、刷り込まれた教義を自分なりに解釈することができ、そして自分のものにする力を持っているようだった。
「じゃ、1つだけ応答を返すのなら『タービンは回る』とだけ」
「た、タービン…?????一体それは…………………?………!!」
思案し咀嚼し、少女は新たな道筋の開拓に成功したようだ。
囚われの娘達の内が1人のようだが、どうやら揺らがぬ自我を持ち得ていたらしい。故に解も導ける。
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「申し訳ありませんが、私のゲマトリア参加にあたって1つ条件を追加させていただきたく」
緊急の会合を開き、承認をいただく場を設けた。
「凡そ予測は付く…『アリウス自治区への介入に対する黙認』であろう?貴殿の望む崇高の為には、ベアトリーチェの立ち居振る舞いが不愉快極まりなく、そして存在さえも可能であれば抹消してしまいたいといったところか。………難しい判断だが………まあ良い。それが貴殿の崇高の観測に役立つならば、殺し以外は好きにしたまえ」
双頭の芸術家は承諾。
「私も天秤にかけた上で、ヒラサワさんに内包された『文脈』を手放すのは惜しい。一旦はベアトリーチェもゲマトリアに名を残しておいて良いならば、私も承認致しましょう」
「まあそういうこった!!」
一対は対価込みで承諾、まあそのくらいの条件なら問題ない。
いずれあの保護者気取りの狂人は淘汰され、このゲマトリアにいることが不可能になるのだから。
「クックックッ…やはりなんとも面白いですね、あなたの『ヒトとしての在り方』…私もその条件、容認致しましょうか…」
『黒服』からも承認を頂く。
上司に許可は必要でしょう?ここでは末席に過ぎないステルス某ですので。平社員のヒラサワですので。
では全会一致も得たことですし、ここは例の『