Asyu-on Archive   作:非キヴォトス人のアコード

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15.遥かから 今すぐにすぐに応えよ

かの地まで今すぐに届けよ。

既に「良き事」と嘯く者は、再び動き出している。

 

****

 

「本当に、やっと生徒って言える子になったばかりでね。『何かを学ぶ』ことをようやく知れた生徒って感じで」

“ようやく知れた…このことを教えてくれる理由って?”

 

期待に満ちた目をしながら、穏やかな笑みが出る。

 

「あれこれ誤魔化しても仕方なさそうだし、端的に言おっか」

 

「あの子を、守ってほしいの」

 

“守ってほしい…”

「あー、ちょっと単刀直入すぎたかも。ナギちゃんの悪いところが移っちゃったかな」

 

そう言葉を出しつつ、本意であるのは瞳で見て取れる。

 

「最初の方から、色々説明してみようかな」

“うん、お願い”

 

****

 

そもそも『トリニティ総合学園』とは、『多数の分派が集い成立した学校』である。

主たる分派は、パテル、フィリウス、サンクトゥス…この3つの分派が、トリニティの中心となっている。

正確には、現『救護騎士団』の前身たる派閥、『シスターフッド』等を含めた大小様々な派閥が集っている。

 

その多くの派閥が、互いに互いを敵視し、紛争の日々を繰り返す時代があった。

そこで、これ以上の戦闘をやめ、友好を結ぶこととなった。

無益な戦いをせず、一つの学園として集う……そのように対話を進めたのが、かの『第一回公会議』である。

その会議を経て成立したのがトリニティ総合学園。

 

しかし、全てが円満であったわけでなく、最後まで反対した派閥があった。

それが、オマエタチもご存知だろう『アリウス』。

元は他の分派とそう変わりなかった1つの分派。

経典に関する僅かな差異があった程度で、他の派閥と似通っていたという。

だが、アリウスは連合体となることに猛烈な反発を起こし、最終的には戦闘に繋がってしまった。

 

連合となり強大な力を得たトリニティは、有り余る剛腕でアリウスを徹底して弾圧する。

不要にも思えるほどの絶大な力を持てば、その程度を確認したがるものであり、つまりはアリウスは丁度良い試金石とされたのだ。

そしてアリウスはトリニティの自治区より追放され、逃げ仰るに至る。

 

その後はトリニティに見つからない地へと辿り着き、連邦生徒会でさえも消息を掴めてはいない。

大半の生徒にとって、そのような学園があったことさえも忘れられ、そのような争いがあったことも知る由も知ろうともしない。

こうして表舞台から姿を消し、その影すらも見るも無惨たる存在…それが『アリウスユニオン』の前身、『アリウス分校』である。

 

****

 

“アズサはその、現『アリウスユニオン』出身…”

 

話題は一時転換する。

 

「それで、ナギちゃんが推進している『エデン条約』、あれはさっき話してた『第一回公会議』の再現なの。大きな二つの学園が、これからは仲良くしようねって条約」

 

随分と都合の良い話に聞こえるが、実際はいかがか。

その核心は、ゲヘナ・トリニティと武力を合わせたエデン条約機構(Eden Treaty Organization)、通称『ETO』と称される新たな武力集団を作ることにある。

 

「……そう。エデン条約っていうのは、言ってみればある種の武力同盟。トリニティとゲヘナの戦略を合わせた、一つの大きな武力集団の誕生が目的…」

 

そのような、圧倒的武力を持つ組織を作ろうとしている。

連邦生徒会長行方不明という、キヴォトスにとって混迷の時期に。

その大きな力を使って、桐藤ナギサは果たして何をしようとしているのか。

 

「会長不在の連邦生徒会を襲撃して、自分が連邦生徒会長にでもなるとか?それともミレニアムっていう新しい芽を摘んでおくとか?もちろん細かい目的は知らないけど…これだけはハッキリ言える」

 

そのような力を得れば、まずは自身にとって不都合なものを排除にかかるだろうか。

かつて、トリニティがアリウスへ行ったように。

 

「あるいはもしかしたら、セイアちゃんみたいに……」

 

ミカは自ら話を遮る。

これは失言だった、と脱線した話を戻そうとする。

先生はそれに追及すると、それでも踏み込むか、とこの件に関する警告を発した。

しかし半ば先程の発言の責任を取らせるように、ミカにとって味方の先生に『ミカの知り得るセイアの現在』を語る。

ヘイローを壊された、と。

入院中であるというのは建前であり、現在行方不明だという。

 

****

 

閑話休題し。

 

「『白洲アズサ』……あの子がこの学園に転校してくるきっかけは、私なの」

“ミカが?”

「うん、ナギちゃんにかなり無理言ってね……どうして?って、思うよね」

 

分かっているとは思うが、既にこのTimelineは極度に歪んでいる。

ステルス某が存在しているために。

 

「アリウスには、『師匠』って呼ばれてる人がいてね」

“…師匠?”

「あだ名みたいなものかな?その人は、キヴォトスでは珍しい生徒会長とは別枠の、学園長さんなの」

 

****

 

前章にあったと思うが、ミカは打算込みでアリウス分校と和解がしたかった。

これについてはナギサ・セイアより反対意見があったが、それを押し切り行動していたとミカは語る。

 

「初めてアリウス分校に行った時に、丁度色々なことが大きく変わるタイミングだったみたいで…今の『アリウスユニオン』は、トリニティのことを憎む前に自分の足で立つんだ、って少しづつ変わり始めてるの。そのきっかけが、『師匠』」

 

ミカは曰くその人は『学園長など名ばかりで、ただの用務員でありますから』と話していたとも付け加える。

 

「私は……『白洲アズサ』という存在に、和解の象徴になってほしかったの。アリウスの中でもかなり優秀な子だってことだったから、その可能性に賭けたかった。ナギちゃんを説得するのに、相当時間をかけたくらいには」

 

しかしエデン条約が締結されれば、その時は今度こそ、開きかけたアリウスとの和解も閉ざされるかもしれない。

 

「だから、どうにかその前に実現させたかった。アリウスの生徒とトリニティの生徒が、今なら仲良くなって一緒に幸せになれるって…みんなに証明してみせたかった」

 

しかしその最中、桐藤ナギサはトリニティの中に裏切り者がいると言い始めた。

 

「……ナギちゃんが、どうしてそんなことを考え始めたのかは分からない。私がそうやって動いてる時に、何かやらかしちゃったのかもしれない。それでナギちゃんら条約の邪魔をさせまいとして、『補習授業部』を作ったの」

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