Asyu-on Archive   作:非キヴォトス人のアコード

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16.陸を焼く蛮人の矢に 神聖の名は書かれ

雷鳴は全てを見る。

そして全て見る雷鳴はオマエと知る時はすぐ。

 

****

 

前話から続くが、そもそも補習授業部のメンバーは如何様にしてかの4名となったのか。

 

「あそこにいるのは、ナギちゃんが疑った子」

 

浦和ハナコは、何故そのような極度に歪んだ結論を見出して奇行に走っているかは現状不明だが、実のところは非常に優秀な生徒である。トリニティの生徒会、ティーパーティーの候補にいとも易く上がる程度には。

シスターフッドも、低調な結果となったがスカウトをかけていたという。

礼拝堂へ水着姿で現れ、なんとも言えぬ空気にする程度には理解もしたくない奇行をするが。

そうしているうちに、此度のように勉学の成績は大暴落の一途を辿る。

この状況だが、各所と関係を持つ存在を桐藤ナギサは無視できないのも理解はできよう。

 

下江コハルは、当人自体は陰鬱な政治などとは関わりがない、正義実現委員会の一介の委員である。

何故そのような立場の者が、ということにもなるが、直接的理由は副委員長羽川ハスミらにあるのだ。

武力を持ち、かつゲヘナへの懐疑心敵対心を強く持つ存在が統制下に無い不安感や、まだ起こってもいないことへの疑念。それに対しての備えとして、謂わば人質のようなものを欲した。

そして補習授業部という看板に見合うコハルが選ばれた次第である。

 

阿慈谷ヒフミは、その見目のとおりといった具合である。桐藤ナギサからの信頼も得るくらいには。

しかしそれでも疑いの余地はあり、トリニティの生徒は出入禁止のブラックマーケットなどへ立ち入っていたという話がある。

果てには、なんらかの犯罪集団との関わりがある話まで出ているそうだ。

この件は先生に思い当たる節があるらしい。ぷ。

 

「それで、ナギちゃんの中にあった『トリニティに裏切り者がいるかもしれない』という疑いは、色々と情報が集められ進められていく中で、『あの中の誰が裏切り者なのか?』っていう疑念に変わったんじゃないかな」

 

最早いるかどうかなどという話もせず、桐藤ナギサにとって裏切り者は確定路線の現実問題にしてしまっている。

それが様々と事情込みで話されたミカの説明であった。

 

“………裏切り者”

「裏切り者っていう言葉が何を指すのか。それを多少はっきりさせた上でなら、ちゃんと解答は出せるの。まずナギちゃんは今きっと、『トリニティを騙そうとしている者がいる』って思ってる。誰かがスパイなんじゃないかって」

 

そういう意味では、今桐藤ナギサが言っている『裏切り者』は、白洲アズサには完全な白判定を出しきれないものの、現状は『いない』とも言えるというロジックになる。

 

「あの子はさっき話した通り、『私以外のトリニティ目線では』敵対しているアリウス出身の子だから。正規の手段で転入したとはいえね。あの子は私のせいで何も知らないまま、こんな複雑で政治的なな争いのど真ん中に立つことになっちゃって……でも、こんな形であの子を退学なんてことにさせちゃいけない」

 

ここまで幾分と長くなったが、故にミカはアズサを守ってほしいのだ。

そして、もう一つの暴露が出た。

 

「それから、ある意味では…ナギちゃんにとっての『裏切り者』は、私でもある。私は、ナギちゃんが進めてるエデン条約に賛成の立場じゃないから。ホストじゃないから何の力もない以上、邪魔も何もって感じだけど」

 

または視座を変えてしまえば、こうも言えるだろう。

 

「それは、ナギちゃんが裏切り者とも言える。そう思わない?」

 

これまで調和を保っていたトリニティを、巨大な怪物へ変えようとしている存在。そのような見方があっても、おかしな話ではない。

 

「…まあ、これも含めて全部全部、私からの一方的なお話でしかないよ。だから、もちろん最終的には先生が決めて。白洲アズサを守るのか、裏切り者を見つけるのか……ナギちゃんを信じるのか、それとも私を信じるのか」

“ミカは、それだけで大丈夫?”

「あの子のことについては私に責任があって……でも、私にはただお願いすることしかできないから………あれ?そうじゃなくてもしかして今のって…私のことを心配してくれてる?」

 

それに対して軽く戯けつつあしらいつつ、聖園ミカは去っていった。

 

****

 

先生はその後、補習授業部の元へ戻る。

その間どうやら、自主的に模試を行っていたようだ。

 

ハナコ:8点

アズサ:70点

コハル:49点

ヒフミ:68点

 

「…上々の結果を得られたみたい」

「私よりも点数が上ですよ!すごいです!」

 

とはいえ相変わらずの奇行少女である。ちょっとナニですね。

ステルス某なら、「事が起きる前に適所脱出しない、オマエの怠慢以外に何がある」と突っぱねてしまうかもしれない。

どう考えても彼女の責任でしょう?

…ステルスの持論はよくて、どうやら合宿を行う別館に来客のようだ。

 

「侵入者か。大丈夫、準備はできてる」

「アズサちゃん、準備って…──」

 

トラップは連鎖した。

初手のブービートラップから回避した方でも起爆。

 

「アズサちゃんっっ!?!?!?」

 

入口の方は硝煙の香り。

 

「きょ、今日も平和と、安寧が……けほっ、……あなたと共に、えほっ、ありますように…」

「まずご自分の安寧を心配してください!?」

 

来客はシスターフッドの伊落マリーであった。

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