Asyu-on Archive 作:非キヴォトス人のアコード
腐乱する神に魅入られた結末をオマエタチは知っている。
滅私の娘よ、まだ戻れる。
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「ティーパーティー」のひとり、聖園ミカ。
アリウスの分校派の生徒たちを率いてその姿はある。
「まあ簡単に言うと、黒幕登場⭐︎ってところかな?私が本当の、『トリニティの裏切り者』」
「…そうなんだろう。まともにアリウスユニオンと連絡を取らなくなった辺りから、何か別の動きをしているんだろうとは思っていた。あちら側と繋がるとは思っても見なかったがな」
サオリはただ淡々と言葉を出している。
その表情は、呆れさえも通り越しているとでも言うのだろうか。
「そうだねー、色々と予定変更したってところかな?」
飄々と返すのはミカ。
先生はただどうにも言えない声色をする。
“ミカ、どうして…”
「んー?聞きたい?先生にそう言われたら仕方ないなぁ」
それは、子どものような簡単な理由と、アリウスの現状が重なったもの。
「それはね、ゲヘナが嫌いだからだよ。私は本当に、心から…心の底からゲヘナが嫌いなの」
「…故にエデン条約を取り消そうと。そのために彼女を…」
「何でサオリがここまでこの件に首突っ込んでくるのか分かんないけど…一応答えてあげるとその通りかな。だってナギちゃんが、エデン条約だなんて変なことをしようとするからさぁ。あんな角が生えたやつらなんかと平和条約だなんて、冗談にも程があると思わない?絶対裏切られるに決まってるじゃんね?背中見せたら刺されちゃうんじゃない?…そんなこと、させるわけにはいかない」
つまるところ、あの時先生と話した事柄には嘘と真実が平然と混然一体にされていた。
ナギサがエデン条約を武力同盟として活用するなど、出来るはずのない話だと。
そしてアリウスと和解したかったというのは、本心だということ。
「でも今のアリウスは少数派のユニオン派と、多数派の分校派で分かれている。そして分校派は、私と同じでゲヘナを憎んでいる。今も分校派の子たちは、トリニティの比にならない程にゲヘナに対して純度の高い憎しみを持ってると言えるかもしれない。そもそも憎しみを捨ててちゃんと立ち上がろうなんて急になる方が、おかしいと思わない?」
「……」
そう、故にミカは志を共に出来る分校派にこう言った、ゲヘナと平和条約を結ぼうとする者たちを打ち倒さないか、と。
サオリの表情はそれを聞けども変わらない。
「つまり私は……途中から、スケープゴートにする為の駒だったと…?」
対照的に、悲嘆の眼差しをしているアズサの悲痛な声。
「…うん、確かにそうだね。元々アズサちゃんはユニオン派との友好のために色々無理言って転入させてあげたけど、予定変更してからは分校派のやったことを押し付けるには、丁度いいスケープゴート役になってくれそうだったから。罪を被る生贄としての存在がいてこそ、みんながぐっすり安心して眠れるでしょ?」
思わず少女は涙目で唇を噛む…全ての行動は、トリニティとの正式な和解に向けてのものだったからこそ。
このような形で袖を分つなど思っても見ていなかったから。
「でもびっくりしたなぁ。ナギちゃんが正体不明の誰かに襲撃されたって聞いて、計画が崩れるかもと思って少し焦ってみたら…まさか補習授業部だったなんてねー、これは予想外だったよ、うん」
全てはティーパーティーのホストになるため。ゲヘナへの嫌悪感というエゴだけのために、その座を欲した。
トリニティの穏健派を排除し、その空席をアリウスの分校派で埋める。
新たな連合でも作り上げ、必要とあらば公会議でも開く算段だと。
そうして新たな武力組織を得て再編したトリニティで、ゲヘナへの全面戦争を画策していた。
それが計画だと、楽しげな児戯でも考えているように話す。
白けた目を向けるサオリ、なぜそこまでしてという目を向けるアズサ。
…そして、容認できないと怒りを表す先生。
「わぁ、色んな人の目が私を追ってる。…先生も、怒ってることはよく分かった。ごめんね、説明も何だか急いじゃったし、雑だったね?もっと丁寧にお話したいところだけど…まずは色々と邪魔なのを片付けてからにしよっか?」
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しかして、ミカが引き連れた増援部隊は音を立てて崩れる。
戦闘慣れしていないヒフミが、正義実現委員会の新入りのコハルが、後衛からサポートするハナコが、見事な連携を見せるアズサとサオリが、全て崩していく。
先生の指揮によって。
「……なるほどねー、そっかそっかぁ。そりゃみんな『シャーレ』『シャーレ』って言うわけだ。厄介だね、『大人』って。でも…まあ、問題無いかな。ちょっと時間はかかりそうだけど。セイアちゃんもナギちゃんもいなくなるんだし、これでようやく始められるっていうのに、変に邪魔しないでほしいなあ」
「ミカさん、1つ聞かせてください!セイアちゃんを襲撃したのも、あなたの指示だったんですか!?」
「……?あは、ハナコもそうやってヤイヤイと見てくるんだね」
ミカは何事もなかったかのように認める。しかしヘイローを破壊しろとは言っていない、ただ卒業するまで檻にでも閉じ込めておいと方がいいと思っただけだと。
「試しに分校派の子を潜入させてみたのが、ここまで事態が大きくなったきっかけだから、反省はしてるよ。とはいえその当事者は今、しばらく連絡取れないって言ってきてそれきりなんだけど。そこからもう色んなことがどうしようもなくなっちゃったわけで…まあ、仕方ないよね」
「………」
「アズサちゃん…?」
何かを知っている様子だが、ヒフミがそれを訪ねる間もなく事態が急転する。
「んー?」
「トリニティの生徒が一部、こちらへ向かってきています!」
戒厳令が出ていようと、動かそうと思えば動かせる独立的集団がある。
大聖堂のシスターたち。
シスターフッド、彼女らが動き出した。