Asyu-on Archive 作:非キヴォトス人のアコード
初めましてかな、先生。私の名前は百合園セイア。
そしてここはキミの夢の中だ……或いは、私の夢の中かもしれないがね。
セイア…。
まあ、キミにとって「初めまして」でなくともそこは関係無い。
こうしてキミと私が出会えていることこそが大事なことだ。
それではこの物語を、紐解いていこうじゃないか。
キミはキヴォトスの外部から来た者であり大人だ。となれば、契約、取引……そういった「約束事」の持つ重要性について、よく知っていることだろう。
たとえば「悪魔と契約する」、という言い回しがあるだろう?昔話においても「驚異的な存在が不注意な約束をしたがために敗北する」、あるいは逆のお話は幾つもある。
そこからはこうも読める…単純な紙切れや口約束だとしても、「約束」というものは時に何かを強く拘束し、定義付けることもある。
契約、戒律、約束…こういったものは、キヴォトスにおいても重要な概念。
ただ、あまりにも奇妙かつ面白い話が挟まってきた。
今回のお話はつまるところ、キミに「実質的に味方するゲマトリア」と「敵対するゲマトリア」がいて。
アリウスはその2名の「ゲマトリア」で起きた仲違いにより、これもまた味方するアリウスと敵対するアリウスに二分されている。
そして敵対する方のアリウスは倒れることも死ぬことも無い、強大な軍隊を手にした。これが現在の状況にして事実。
だが不思議かな、「味方するゲマトリア」という変数のあまりにも未知数さが為に。
私が見ていた惨憺たる悲劇の夢が嘘のような状況下にある。
「エデン」の名を冠する条約のもとにそれを手にしたとて…最悪な事態になると言い切れないことになっているということさ。
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いつかのデジャヴを迎えている。
少女とステルス某が相対するというこの時。
「まだ…まだ彼女を愚弄しますか」
「愚弄するまでもなく、例のは存在そのものが愚の骨頂であります故。そもそも私にも責任の端はあります。かの手引きをここキヴォトスで使用した際、何らかの因果により『キヴォトスの外』までは連れ出せなかったばかりにこうなった、という自責の念がないわけではございません」
未だ囚われのプレアデスは、かの時に続いてステルス某へ銃口を向けている。
「スバルさん、撃つんだけはよしてくださいよ」
「…何故ですソウカ」
「他所から睨んではるからです、ここで交戦になってまうと後の作戦に支障が出てまいます」
黒い服のスナイパー、鉄塊を構えた黒い服、黒い服を着た「聖徒会」の遠戚。
各自「自身の意思」を以てステルスの身に何かあった際行動できるよう、立ち振る舞っている少女たち。
「…チッ」
「『この行動を止めよ』、『こちら側に来い』など馬鹿げたことを言いに来たわけではありません。囚われた思考ながらも意思を持った行動故、否定したところで無駄であります。しかし、その先に何があるかを見ようともせずこうしているのか、はたまた見えていながらこうしているのか。どちらにしても疑問符の雨が降るばかり」
「いいえ、見る必要がないんです。既に手札は揃っていますから」
「鬼札を仕留めていないのによく仰る。あの教師気取りは、オマエの持つ意思よりも強大なものを持っています。オマエの意思は、かの者が持つ意思に対抗し得るものであると?」
「……し得るでも、し得ないでもありません。成すべきことですから」
「あ、そう」
まあ、痛い目見てもらわないと変わらないでしょう。
この件の終わり次第、アレがありますし。
「で、どないすんねんこの膠着」
「とはいえねぇ…『ステルス』は戦いに来たわけではあらへんみたいですし」
「ええ。『ステルス』、はなから目的は『先生の身の安全』だけでしょう?」
何やら例の童女から変な愛称で呼ばれてるらしい。
まあステルスなのはその通りなのでよしとする。
「はい、一旦目的は果たしております。果たした以上は離脱するのみ。ここから先、貴方たちが続けるも辞めるも貴方たちの意のままです」
「スバルさん、ここは予定通り行きましょ。いずれにせよ行く道は決まっとるんですから」
「…ええ、分かりました」
「またこんど!」
「二度と会いたくありませんよ」
ヨヨヨ。ジョシコーセーに不必要に嫌われてヨヨヨ。
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私のヘイローを壊しにくる役目も、アズサが担うはずだった。
そして立木マイアの役割も、本来は秤アツコが担っているはずだった。
…これによって引き起こされることがあるはずだった。
アズサが私に使わなかった「ヘイローを破壊する爆弾」で、
しかしそれがどうだ。発端が違うことで、襲撃には事足りるが
起こり得るべきことが、私も知り得ない技法でショートカットされているんだよ。
もっと突き詰めていくと、私の観測した中ではアリウススクワッドはあの4人ではないはず、というものさえある。
錠前サオリ、戒野ミサキ、秤アツコ、槌永ヒヨリ…この4人がそうであったはずなんだ。
それがどうだ、梯スバル、立木マイア、西空シアン、佃ソウカの4人でアリウススクワッドだって?
意味がわからない、後半の2人に至ってはどこから出てきたんだ。
…先生への八つ当たりになってしまったね、すまない。
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状況は進んでいく。
かの者たちは囚われの思考のまま地獄を行き。
事態を収束に向けて動く者もいて。
堰を切ったように混沌を生み出す者さえも現れる。
そこには邂逅を果たしに来た者もいた。
「久しぶりだね、お姫さま。セイアさんが大変なことになったってお話してくれて以来だったかな」
「…うん。本当にね、お姫さま。それで色々あってこうなっちゃった」
「そういえばこれから、バカなことを考えた子たちがあなたを神輿に担ぎに来るよ」
「…へぇ?」
「首を突っ込む必要もないんだけど普通に気に入らないから、その子たちをおど…落ち着かせに来たってところかな?」
「えー、じゃあアツコは私に会いに来たわけじゃないの?」
「えーじゃない」
「あははっ、あのオジサマが言いそう」
「ミカさ…えっ?だ、誰ですかあなたは!」
「こんな時に遠路はるばるミカに面会に来た人、かな。私も私で人のこと言えないわけだけど…貴方たちはこんな一大事に何をしているの?いや、一大事だからだよね。火事場泥棒っていうのはそういう時にするものだから」
圧するように追及する目がパテルの少女たちを追う。
「えっ…?」
「あ、今から隠そうとしても無駄だよ。もう全部情報は取ってあるから。ことが済んだら貴方たちも責任を果たしてもらうよ。…責任を取る度胸もないなら、何もしなければいいのに」
縁は切れるものもあれば、切れぬものもあるということ。
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先生が起きる。その身は傷ひとつなくある。
「あ、先生!目が覚めたんですね…!」
「お身体はもう大丈夫ですか…?」
“うん、大丈夫”
相剋のために、再び動き出した。