Asyu-on Archive 作:非キヴォトス人のアコード
「…今度こそやめにしとき」
「そうですねぇ…これ以上やっても……」
しかし彼女をそれでも突き動かすのはなんなのか。
未だ足掻く様は、最早憐れみの域である。
「…まだです……まだ古聖堂の地下に……」
「あらまぁ…シアンさん、とりあえず追いましょか」
「はぁ、あいよ」
「スバル…!?」
「古聖堂の地下か…?恐らくまだ手段でもあるのだろう、止めるぞ」
最後の足掻きに応えるように複製のユスティナは来たる。
「まだ、これほど力がありましたか…」
「……行こう」
「アズサちゃん…私も……!」
「…これは、元は同じ『アリウス分校』だった者としてのけじめだと思う。私たちだけで、行かせてほしい」
アズサはアリウスユニオンの4名を背に強く語る。
“…私はついていくよ”
「うん。ありがとう、先生」
“それに、君たちを支えてくれる人も来てくれるようだし”
「当然です、此度の結末を見届けるのは用務員の務め」
「師匠も…!ありがとう」
「分かりました…その心、受け止めました!気を付けて…!」
「うん。ヒフミ、ハナコ、コハル…行ってくる」
「はいっ!」
「待ってますよ」
「き、気を付けてね…!」
全てはステルスの介入によって起きた事態の混迷化だというのは承知である。
しかし故に新たな分岐を経て、新たな縁は生まれた。
あるはずのない最終決戦が始まる。
「アズサさん…」
「スバル、もう終わりにしよう」
「……良いでしょう。全てをかけて、最後の戦いとしましょうか」
分校派、アリウススクワッドの面々もこうなればと躍起である。
「…しゃあないのぅスバル、私もやったる!こうなりゃヤケや!」
「そやねぇ。やり切った方が、ちいとばかりは気は晴れるかもしれへんし」
「………」
そしてユニオン派の少女たち、Uncodedも腹はきまっている。
「…こうなったのは仕方ないことだ」
「やれるのは、あいつらを止めることくらいだね」
「正直心は辛いですし苦しいですが…」
「それでも、無理言ってお膳立てはもらったわけだから」
不要な感情に振り回される憐れな少女はまたも吠える。
「何もかも片を付けましょうか…あなたたちも、その大人も!全てが虚しいこの世界で、真実を思い知れ…!!」
「では」
“行こう、アリウスユニオンのみんな”
3本2対の光線が現れる。
此度の結末の果てに訪れる運命の行く末を案じつつ、この都々逸を奏でよう。
あきらめに行こう 人魚の信者の船で
人の世は赤い 太古の噴火のエコー
love you ホラ吹き 夢も見えたはずに
おみやげは吹き矢 バスの駅から放つ
明日までに消える 石の橋の上で
折り紙に折った 長いダイヤグラム
love you ホラ吹き 空も飛べたはずに
おみやげは磁石 夜の砂場で回す
…アリウスユニオン側の勝利であった。
先生という絶対的変数は覆すに難い。
「ぐ………こん、な…」
「あぁ、ほんっまに…完膚なきまでってか…」
「もうなんにも、文句も出ません…」
「……」
割れた仮面から、その瞳が結末を見ていた。
立木マイア。本来はこのような重要な立場になかったはずの少女。
「げほっ…!マイア、何故逃げなかったんです…」
「負けを認めましょう、スバル先輩」
初めてマイアから言葉が紡がれる。
その音色は酷く憂いが乗っていた。
「だ、ダメです、皇女!喋ると、彼女が──」
「大丈夫です、もう全部終わりですから。それにどちらにせよ、彼女は私を生かしておくつもりは無かったはず。だから、良いんです」
「………」
「もうやめましょう、先輩」
「やめる…?帰るわけでもないなら、どうするんです…」
「…適所脱出」
「そういうことです、奏でる用務員さん。逃げましょうスバル先輩、一緒に」
「逃げる……」
マイアはここに来て思い出した。
分校派の面々が未だ持つ憎しみは、自分たちのものではないと。
憎しみを習い、心に刻み続けた。自分たちのものと思い込み続けた。
「ユニオン派のみんなは、それに気づけたんですよね?用務員さんから考え方を学んで、そこから色々な経験を得た…アズサさんは先生とも出会えて。良い大人に出会えたんですね、ユニオン派の皆さんは。そして、自分の在りたい姿を見つけた…。だから、スバル先輩…逃げましょう」
この場より、アリウス分校という場所から。
そして、自分たちのものでない憎しみから。
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……仮にも近くに同胞がいながら、その輝きに魅入られてしまったらしい。
“どうやら、反則みたいだね。出さないで終わらせたかったけど…”
「ランタンなら不要」
“…!?”
「大人のカード」という一種「児戯の極地」は、私としてはあまり好きではない。
知恵の木より編み出したものでないために。
「アリウスユニオンよ、私に続きたまえ」
先生が困惑する中、私を筆頭に5人は右の人差し指と中指を合わせ、天へ掲げる。
スカラープールからペルーへ行くための回路にしてしまおう。
「な、なんと……例の『カード』に勝るとも劣らないものが…!!ヒトの根源と限界は果てしないと讃える機械、実に美しくも不可解なものではないか……!!ゴルコンダならどう呼称したであろうか…やはり先生と同様に面白い存在だ、ヒラサワ殿……見せてくれたまえ、そなたが培ってきたヒト科の果てなき力を……そうして見出した輝きを!!」
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「あのねぇ」
「いやはや、誠に申し訳ない。そして心より感謝しよう」
討伐後。
芸術家を見つけ出し、さすがに遺憾であると伝える。
「しかし、本来のTimelineでもこれで正解らしいので」
「Timeline…その概念も注目したいものだ」
「ではいずれ」
「また会合にて」
その後、アリウススクワッドは古聖堂のいずれかの地下通路より逃げおおせたようだが…行方は誰も追い切れなかった。
「げほっ、げほっ…!!」
「ほんまに…もうちょいの辛抱です、スバルさん」
「…で、どこ行くねん」
「……臨時自治区へは戻れません…彼女に、殺される…」
「…それもそれでええんやけどな」
「さすがにそれではい終わり、は…悲しすぎます。とはいえそうでなくても…」
「…所詮それがヒトってもんやろ」
「……」
乾いた音が地に落ちる。