Asyu-on Archive 作:非キヴォトス人のアコード
「クックック…やはり彼女ですか」
大人たちの会合。
議題はここに居ない大人2名についてである。
「少女たちが不要な畏怖をする対象は…それ以外にあり得ないでしょう?」
「マエストロ、接触したのでしょう。彼女はなんと?」
「どういうこった!」
「やはり基本軸にあるのは『奏でる用務員』ヒラサワ殿への敵意と殺意であった。そして、かの先生への懐疑心も持ち得ている」
「やはり永遠の淑女ではなく、永遠の童女では?それも醜悪極まりない利己心を携えた」
「クックックックックック……彼女に対しては常に手厳しい評価ですねぇ」
いつもより長めに笑っていますね。ツボでしたか?
「それでいえば、私は『先生』に対しても評定は厳しめであります」
「ほう…?やはり『ヒト科のヒト科たる姿』を『崇高』に掲げる貴殿には疑問符のつく部分がおありのようだ」
「ええ。本人に直接能書きを垂れさせて頂きましたが、ヒト科は必要に応じて必要なだけ責任は付き纏います。大人の為せる力といえども、子どもの為さねばならぬ責任を強引に引き剥がす行為は、搾取足り得るのでは?という提言および忠告をさせていただいた次第です」
「なるほど…それは『ヒト科としての成長』を阻害する行為にもなり得ますね。それをする可能性を憂慮するのは道理が通ります」
「そういうこった!」
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裏で会合はあったわけだが、表の面であるトリニティもゲヘナも少しずつ平穏を取り戻しつつあった。
それと、夢の中という岩戸へ隠れていた少女がようやく起きたらしい。
あとは仲深まった故に消えた口数を取り戻すだけである。
どうやら補習授業部が同じメンバーで再び集うなどもあったようだが。
そして件の事案へ介入した少女たちの学園もまた、平穏に時が流れる。
アリウスユニオン自治区。ここはかつてアリウス分校の自治区であった。
この学舎に集う者たちは、過去他者から与えられた憎悪を膨らませ続け、本来の自分たるものを失っていた。
しかしどうだ。今や自らが望んで学びたいものを学び、ヒトらしく生きている。
今まで得られなかった勉学に没頭する者、これまで禁忌とされ封じられた芸術を究める者、かつての他者から奪うための戦闘ではなく自分たちを守るための戦闘を習得する者。
朽ち果てかけていた校舎も建築を学ぼうと奮闘する生徒らにより整備され、見違える様相だ。
しかしアリウスユニオンの生徒は、これまでのアリウスの40%に達するかという程度である。
残りの60%の生徒はこれまでの教義から脱却出来ず、キヴォトスの外へ追放し損ねた『保護者』を気取る図体だけでかい童女に再び付き従っている。
その『保護者』が何処にいるかは、未だ掴めぬ。
****
以下に記すは、ある少女の独白である。
みなさんはこれからも、たくさんのことを学んでいくんでしょう。
これからもずっと、友人たちと一緒に。勉強して、努力をして、色んな可能性を見つけられるんでしょう。
……みなさんは強いから。
あのコンクリートの隅に咲く花だったとしても。
例えすべてが虚しくても、この世界が暗く寂しいものでも……。
アズサさん。サオリさん。ミサキさん。ヒヨリさん。
……アツコさん。
二度と会うことは無いかもしれないけれど。
どうか、幸せに。
「…左様でしたか。『代替品』が、逃げたのですね」
ロイヤルブラッドというものがある。
それは、概念的に定義される『貴重な血脈』のことだ。
『保護者』はかつて、自らの『崇高』のためにロイヤルブラッドをヒトの形で所有していた。
しかし現在ロイヤルブラッドは、秤アツコはただヒトとして生きている。
そこで『保護者』は自らの『崇高』を顕現させるべく、付き従う少女たちから『代替品』を選定した。
それが立木マイアである。
なぜ彼女であるのかということになるのだが。
それは梯スバルの存在が寄与している。
立木マイアは梯スバルを慕い、共に行動することが多くあった。
それと同じく梯スバルは立木マイアに目をかけていた。
つまるところが、その関係性を利用されているということである。
ただ都合が良かっただけ。
「捕まえてきてください。怪我のないように、丁重に」
それ以外のアリウススクワッドははっきり言ってしまえば駒でしかない。
程度の非常に低いものの見方だ。
配下の少女たちにマイアの確保と他3人の処分を命じている。
どこまでいこうと自己の為の犠牲とだけ見ているらしい。
本当に見苦しい限り。
(この妙な圧迫感、いつかのように『ステルス』がどこかから見ている…?忌々しいものですね…。未だ一部のメンバーとは繋がりがあるものの、本来あの者が座るゲマトリアの席は私のものだった。必ずや、奪い返して見せましょう…)