Asyu-on Archive 作:非キヴォトス人のアコード
32.見慣れた景色のエッセンスには ボクを拒む訳がある
「見つからないか…」
「この辺りでの目撃情報も空振りかな」
「……辛いですねぇ…心が苦しいですねぇ…」
サオリ、ミサキ、ヒヨリの3名は、追われる身となった少女たちを捜索していた。
アツコがいないのは、奏でる用務員からの進言によるものであることは理解されたい。
……残念ながら、追われる少女たちを最悪の形で発見することとなる。
「待て!あれは…」
「……はぁ?最悪」
「そんな…」
物陰に隠れながら見るは、軍勢に袋小路へ追いやられる4人の姿。
救出のための戦闘をするにも無勢というやつであった。
「……あれ、マイアは何をしてるの?」
「前に出て…?」
場面を変える。
そのマイアが転進したところからだ。
「『彼女』が求めているのは私……そうですよね?私が行きます。だから、他のみんなは見逃してください」
「……」
「マイア!?…一体何を!!」
「もういいんです、先輩。ぜんぶ、無意味です。ここを切り抜けたその先は?一体どこに行きましょう?」
「っ……」
「トリニティにゲヘナ──そしてアリウスの分校派さえも私たちを追いかけてる。このキヴォトスで私たちが安心できる場所はありません。私達の命が尽きるまで、息を潜めて逃げ隠れる人生が続くだけ。でも、それも私がいるからの話。スバル先輩も、シアンさんも、ソウカさんも。私のせいでこうなってしまったから…。だから、私が終わらせます」
「……皇女サマ…」
「……お前」
「……ダメですマイア、戻ったら殺される…それくらい、分かっているでしょう?」
再び視点を変える。
「……本当に、これを見ているだけなんですか…?」
「やってやろうっての?あいつらの装備次第では、私たち死ぬよ」
「ああ…『ヘイローを破壊する爆弾』は携行していてもおかしくな……動いた?」
「マイアを連れて行ったね、護衛に結構割いてる……あれくらいなら、3人は助け出せそうだよ」
「…行くか」
「はいっ」
深夜のゲリラ戦。
少女たちを追っていた分校派は混乱に陥る。
ロケットランチャーと対物ライフルによる圧倒的な暴力に、かつての彼女たちの師による圧巻なる戦闘技術。
マイア以外の3人は事態から免れることとなった。
****
またも夢に籠ってどうされましたか?
また君かい?……まあ、色々と調べたいことがあってね。
夢からでなければ詮索出来ないことへ、わざわざ首を突っ込む意味が分かりません。
以前お話したはずです。「それはない」とすればそれは「ない」。
これは必要なことだと。私の直感が、あの光景はただの悪夢ではないといっているんだ。
ゲマトリア。
…!?なぜそれを…。
私も一応、ゲマトリアの末席を預かる身の上故。
な、何…?
確かにこの先の未来で、結果的にゲマトリアのうちひとりが厄災を呼び起こす可能性が現在往々にしてあります。私もそれに対して先手を打ち策を講じ始めたところです。
しかし仮にそれが起きた場合のことを言っておきましょう。
「本来のTimeline」でもその厄災は引き起こされるが、奇跡を手繰り寄せキヴォトスは1人の大人を軸に救われる。
「本来のTimeline」?…一旦置いておこうか。
ともかく、この先そうなる可能性に期待しろ、と?
残念ながらそれ以外にないので。だから起きろ外道。
今は錆色の腐れムーンを生み出さないために。
錆色の腐れムーン……ミカをそうしないように、ということかい?
確かに…なんの情報もない中であの夢に圧倒され、自分を見失っていたのかもしれない。
それに、今私に何か起きてしまえば…彼女がまた選択を誤ってしまう。
何よりも、ゲマトリアでありながら災厄が起きた時に向けて動いている存在がいるなら、多少は安心できるよ。
それは何よりで。
そういえば、もうそろそろ先生が来る頃だっただろうか…起きておいた方がいいかもしれない。
では、またこんど!
変なところで呑気なものだね…。
****
スバル、シアン、ソウカの3人は散り散りに逃げた。
その中で、スバルはかつての盟友と共にいる。
「……」
「あと出来る手立ては何がある」
「……何故ですか…何故!!どうして私たちを助ける!!そもそも元を辿れば……!!」
「私たちがそうしたいと行動しただけ。所詮お前から見ればエゴだろうことも分かっている。……アツコが自分の足で立ったのが直接の原因ということだって、分かっている」
ステルス某は現状の可能性をアリウスユニオンへ伝えていた。
アリウススクワッドは追われる身となっている。その上で彼女たちを皆はどうするか?
そうして出てきたの声は「元同胞を手助けする」という確固たる意志。
それがこの状況を生んだ。
「あとは…先生に頼るくらいしか、残っていない…」
「なら行くぞ。一緒に頭も下げよう」
「………」
****
…いけない。彼女が先生との対話の後に、「本来のTimeline」通りに余計な明晰夢へ迷い込んだ。
それは『保護者』と随筆家と随伴者の2人組、芸術家、そして黒服の集いだ。
「オマエねえ……」
ステルスはこの迷い狐を連れ出すためだけに突風のワゴン車に乗った。
「…!!」
「意図せず潜り込んだならとっとと帰れ外道」
「ネズミでも出ましたか?」
「あ…」
「ごきげんよう」
「おや、3度目でしょうか」
「今はやり合う意味もなければ、未だアンタがゲマトリアであることも最早些事。ともかく迷い子は私が送り届けるので」
「……ふん、左様ですか。ですが次に会った際は必ず」
「クックック…」
「……ふむ」
「……」
「……まあ、そういうこった!」
「…本当に、すまないね」
「いい加減にしなさいよアンタ」
ここまで世話を焼いたのはいつ以来か。
「丁度いい機会なのでここで宣誓なさい。予知夢は最早『ない』と」
「は…?」
「これ以上踏み込むと言うのなら。次は私の介入が叶うと思うなよ」
「……ない、か。これ以上は、もう予知夢を見ずに過ごせと?あの破滅を、奇跡を願って座して待てと?」
「予知夢を見ずに『過ごせる』と言うべきであります。それに過去と未来を行き交うことが現在などではない。現在を見なさい」
「そうだね。ミカのことが今は優先事項と、キミも先生も教えてくれていたというのに。ならばそうしよう。予知夢は『ない』ものであると」
宣言を果たした瞬間、百合園セイアは私の前から消えていた。
そう、これでよいのであります。
セイアが目覚めた時、聖園ミカは彼女の部屋に到着していた。
既にミカは先生との対話を行い、翌日の聴聞会へ出席する決意をしている。
その中でセイアとの対話を行うことも決意した。
「えっと、その…こんにちは、セイアちゃん…」
「…ミカ」
「……う、うん!そうだよ!連絡もらったから急いできたよ」
「……そうだね、少し頭が回らない部分があって話が色々飛んでしまうかもしれないが…話せるものを話せるだけ話していこうと思う。時系列も混沌としたものになって、キミの嫌いな小難しくて荒唐無稽な話になるかもしれないが…キミと様々な話題を共有したい」
「…そうだね、これまでがこれまでだから。こういう時間も必要だよね」
「本来のTitnline」から、さらなる変化を見せていく。
此度の話はオメガランディングへと向かい始めた。