Asyu-on Archive 作:非キヴォトス人のアコード
詐欺に加担してしまった少女たちはこの日、虹を見る。
有り得ぬ日は始まりの日となってやってくる。
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全てあり得ぬことだ。
「本来のTimeline」では全くもってあり得ない。
この段階から、セイアとミカは対話を始められている。
「私がよくミカがこういうことをするとか、誰かがこうするとかを言い当てていることがあったと思う」
「うん…ちょっと怖いくらいにはね」
「あれは、私が能力的なものを持っていたからだ。簡単に言えば…予知夢のようなものだよ」
「そうだったんだ……あれ、持ってた?今は?」
「…今しがた、その力を捨ててきたところさ」
とてつもない回答に面食らっていらっしゃる。
そんなにいとも容易く捨てられるものかと。
「すて、た?え?」
「ある意味では、それに振り回され続けてきた結果がこの様だと思うんだ。本当の意味でナギサやミカを見ていたのか。本当の意味で、キミたちと仲を深められていたのか。だから…捨てる機会をもらえたのは、良い機会だったと捉えているよ」
「良いことって思ってるなら…良かったね、って言っておこうかな?捨てる機会をもらえたっていうのは?」
「夢の世界で会った人だよ。彼がその機会をくれたのさ…これまでに見てきた予知夢から察するに、キミも会ったことのある人ではないかな?」
「……それって」
「「アリウスユニオンの学長」」
「あー…やっぱり?あの人ほんとに神出鬼没だね」
根も歯もない噂はやめて頂きたいものである。
ま、この寓話の中では事実だけど。
「しかし今…その彼に、いや、もしかすれば先生にもか…?大きな危機が近づいている可能性がある。もちろんこれはキミのせいではないとしっかり言っておこう」
「……え?先生も…?」
「ミカ。キミは元々のアリウスを束ねていた存在は知っているかい?」
「あの学長さんの前……?うーん…わからないかも…」
「では、分校派を束ねる存在は?」
「それも分からないかなぁ…スバルとは話したりしたけど、多分違う…?」
「そうか……元々のアリウスを束ねていた存在と、現在の分校派を束ねる存在は、恐らく同一人物だ。そしてどうやら、その人物は彼と先生に対して強い敵対心を抱いている。何らか抱いている目的の邪魔になるからとね」
「…それ、どうして…?」
「すまないがその辺りを探ろうとしたタイミングで、彼に予知夢を捨てるべきと提言されたんだ…そこから先は分からない」
「………そっか」
「ただ、ここからは私の直感的なものによる勘でしかないが……」
ミカも一件に絡むことになると思う、心しておいた方がいい。セイアはそう告げた。
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私物。
秤アツコが持つそれらは、聖園ミカの私物たちだ。
残念ながら救い出すことの叶わなかった品物もあるが、おおよそは奪還せしめた。
それを持ってこの夜、彼女の元へ来たということ。
「虚しい。虚しい。虚しい。虚しい。虚しい。虚しい。虚しい。虚しい。虚しい。虚しい。虚しい。虚しい。虚しい。虚しい。虚しい。虚しい。虚しい。虚しい。虚しい」
これが「虚しいラッシュ」というやつですか。
どうしてアツコがやっている?
「……ど、どうしたのアツコ?呪いの言葉みたいにつぶやいて」
「下らない私刑をすることで自己を見出しているつもりの馬鹿共こそ、虚しい存在だと思うなって」
「うわー、すごく言葉が強い。ところでそれ何?」
「ミカが持っているべきものたち」
「…え……?」
「必要以上の処罰はいらないから。各所かけ回って、回収できるものはしてきたんだ。あと、この子もミカを助けたいと思って動いてくれたよ」
「……」
アツコの背に隠れながら顔を見せる少女がいる。
「…コハルちゃんも?」
「その…あの時より、もっと出来ることがあるって思って…」
「あぁー…そういえば。先にアツコがいて、あのすごいの見ちゃったから先生を呼んできてくれたのがコハルちゃんだったっけ。でも、そっか…」
(アツコもコハルちゃんも、私のために……お返しできること、あるかな…?)
確かに未だ「魔女」などという物言いはあるが、しかして良き方向へ思考を始めるミカ。
その彼女へアツコが言付けをする。
「スバルたちも、形は違えどミカと同じ」
「……ん?まああれだけのことをしたし、そうじゃないかな…?」
「一緒に助けに行かない?今彼女たちは、殺される可能性の下にある」
「え…」
「今から私がミカを誘拐する、そしてその道中で彼女たちを助ける行動をすることになる。そしてそのお土産を持って聴聞会に行くことになる」
「え…え?ちょっと??」
(セイアちゃんが言ってた勘、当たってない!?)
黒会人のような仮面を装着するとアツコは、仕掛け花火に火を付けた。
発破により、監獄に大穴があく。
近くにいたメディアの囚われものたちは、巻き込まれて気を失っている。
「わ、わーお……」
「じゃあコハルちゃん、手筈通りにね」
「わわっ…え!?本当に行くの!?」
仮面の少女はミカの手を引きつつ、盛大に出来上がった風穴より颯爽と立ち去っていく。
「わ、わかった…!うぅ…こんな呼び方したくないけど…ま、魔女がさらわれたー!!」
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その頃、先生は送り主不明のメッセージを頼りにある場所へ来ていた。
“この辺りかな………いた”
錠前サオリが、梯スバルを従えて立っている。
「そう時間は経っていないが、久しく感じるものだな。先生」
“色々あったからね。サオリが、メッセージを送ってくれたの?”
「…いえ。送ったのは、私です…」
“スバル……?”
そうすると2名は銃を地面へ置き、その頭を大地へ。
“………!?”
“……そ、揃って……”
「……先生。マイアが…連れて行かれました。他の仲間もアリウスの襲撃に遭って…サオリたちの助力のおかげで、生存はしている様ですが……。あれからなんとか、逃げてきましたが……。私では彼女を止められなかった……。このままでは…マイアは…あの子は、死んでしまう……明日の朝…夜明けと共に『彼女』に殺されてしまう…」
これは真実である。
『保護者』は「本来のTimelie」通りに、人死にを以て力を得ようなどという蛮行に出ようとしている。
「マイアは、本来そのように育てられてなんていませんでした……。元々は、秤アツコ…彼女がそう育てられていました。しかしユニオン派と分校派で仲違いした後、いつしかアツコの…『生贄』の『代替品』とされてしまった……。『彼女』は……皇女の運命を変えたいなら、彼女の命令に従えと……そうすれば、あの子だけでなく…他の仲間も助けてやると」
しかし結果はどうだ。
エデン条約の強奪も、トリニティとゲヘナ自治区の征服も、ましてや仲間を守ることも、何ひとつとして手より落とした。
今、梯スバルという少女は落伍者である。まともに取り合うのはアリウスユニオンくらいだが、仲を違えたことに対する引け目もありその手を取るのを恐れている。
「だから、頼れるのはもう、先生しか……」
「私からも頼みたい。スバルは私たちの手を取れないと言うが、これはどこまで行こうと同胞だと思っている故の行動だ。アリウスユニオンの名にかけて、頼む」
“それでサオリも……”
「私は……私の命を賭けて約束します。どんな指示であろうと従います。最後の手段として取っておいた『ヘイローを破壊する爆弾』、これも預けます。信用できないと判断したら、使ってもらって構いません…だから、お願いします」
少々の間が雨音で埋められる。
“立って、2人とも”
「で、ですが…」
「対等に話したい、といったところだろうか」
“うん。そういうこと”
大地に置くその身を起き上がらせ、銃も拾い上げる。
この者の前では、隷属の元にある約束は為されない。