Asyu-on Archive 作:非キヴォトス人のアコード
さて、「臨時自治区」に「90分」という単語と単位が出ていたがこれいかに。
この辺りを先生が尋ねると、西空シアンが説明し始める。
「それについては色々遡って説明せなかんな。分校派の大半は元のアリウス自治区…現在のアリウスユニオン自治区から、自分の足で出ていった。そして廃墟まみれのある土地を仮拠点とした、臨時自治区が生まれたわけや」
存在せぬ109区というわけだ。
「その場所はトリニティ地下のカタコンベを通過せんと行けん場所にある。ま、カタコンベはアリウスユニオン自治区にも行けるんやけど」
「そうだな、アズサの様子を見に行くときには使っていた」
「しかし…サオリらの話をまとめるとこっからがちゃうな。まずカタコンベの入り口は、分かっとるだけで約300はある。そん中で『臨時自治区』に行くための『本当の入口』は限られとって、残りは全て偽モン。入口間違ったら、カタコンベで迷い続けることになるわ」
「何かの因果が捻じ曲がっているのか、アリウスユニオン自治区へはどの入口からでも行けるようになっているのだがな」
私も理由は分からないが、これは「閉じた世界」であった「元のアリウス分校」が「開かれた学舎」の「アリウスユニオン」となったことによって起きた、テクストの置換が発生したためではないかと推測される。
ま、真実は闇の中で考察も与太話なのだが。
「なもんで私たちは正しい入口と、そこから臨時自治区に通じるカタコンベの内部ルートを暗号で伝え合っとるっちゅうわけや。……ともかくアリウスユニオン自治区にはどっからでも行けるのは不思議なんよ。カタコンベの内部は一定周期で変化しとるってのもあるからな」
以前通った道が行き止まりになったり、あるいは空間識失調にでもなったかのように、方向を見失うなどするのだ。
これに関してステルス某も全容を掴めていない。
「今の私たちじゃあ、どこが臨時自治区に行ける入口か分からんのです。暗号を教えてもらえんからね」
「逃げ出した猟犬に、帰り道を教える必要はないということです」
「ただね…ひとつだけ、まだ使える入口があるんです」
「それも今日の日付変更線までしか使えん。あと1時間もすりゃ、そこも閉ざされるっちゅうことや…そうなりゃもう…」
「臨時自治区には戻れなくなる、ということか」
「仮に戻れたとしても、マイアを助けられるかどうか…ということにもなるね」
「それなら急がないとですね…」
そこへ急襲が。
分校派の捜索隊だ。
「『スクワッド』だ!」
「ユニオン派もいるぞ!総員、戦闘準備!!」
「そら、あっちも同じこと考えるわな」
「戦闘準備です」
「はい」
アリウススクワッドとUncoded…「非コード人たち」の共演。
6人であろうと阿吽の呼吸が如き連携が繰り出される。
手負いの猟犬たちと自己を取り戻した番犬たちは、見事追手を振り解く。
「あれほど苦戦させられた相手が、こんな楽チンに片付けられるとは…」
「これが大人の力なんやねぇ…凄さと怖さが、どっちも感じられます…」
「さあ、先に進みましょう。まだ息つく暇はないですから」
****
トリニティの地下道まで来た。ここを通り、カタコンベの入口へ。
逃げ惑う群れとは反対へ行くように。
しかし先ほどの様子だ、『保護者』もこの行程をとることは予測できるのだろう。
「とはいえ、強行突破以外ありません。迂回路も他の入口探しもしている暇はないですから」
「……そやな。どうせ向こうもこっちも考えは同じ。けど私たちにはサオリたち、そして『シャーレ』の先生もおる」
「ええ、そうですね。引き続きよしなに」
“うん、もちろん”
「一気に私たちでカタを付けてきます。先生はその後に続いてください」
先程よりは訓練された兵が配置されていた。しかしそれであっても、少女たちは打ち倒す。
しかし妙だ、先程の戦闘より手応えがない。
「うん、ミカの予想的中だね」
「あ、あはー…」
この2人が、途中から参戦していたからである。
「な…なんやて!?」
「……ほーん?」
「聖園、ミカ…!?」
アリウススクワッドは聖園ミカの姿に戦慄するが、Uncodedはもう一人の姿に驚愕していた。
「アツコ…!?」
「師匠に『臨時自治区に行くのは身を危険にさらす』って言われていたはずだけど?…いや、そもそもどうやって来たの?」
「そ、そうです!もしも『彼女』に見つかったりした時が…!」
「私だけ除け者は嫌だよ?ともかく私たちお姫様2人が、『例の人討伐隊』最後のピースってこと」
「……こ、ことー」
「……ところで何故ミカは、困惑した様子なんだ?」
「私が檻の中からゆうか…連れて来ちゃったからかな」
「えぇ!?アツコちゃん!?」
「いやいや、本当に何やってんの」
ミサキの指摘は至極当然である。
そもそもの話として、生徒6名と先生で潜入する段階で、「本来のTimeline」から大きく逸脱しておりかつ物語は美しく飾られるはずだ。
さらには。
聖園ミカが発狂し再び敵対するルートではないことで更なる歪みが生まれているわけだが、これは良き方向への歪み。より良い分岐を進んでいると確信をもって伝えよう。
それを証明するように、ミカとスバルは面と向かい対話を行えている。
「えっと…スバル。とりあえず、敵になりにきたわけじゃないことは信じて欲しい、かな?まだあなたたちの暗号とかは分かるから、ここまで来れた。だけどそれはアツコから、あなたたちの身に危機が迫っているかもって言われて…それでここまで来たの」
「…そう、ですか。それならいいのですが…」
「あれ?そういえばマスク姿で無口なあの子は?」
「!!そ、それは…」
「とはいえ、そこまで私も愚鈍じゃないからね?ここにいる3人より大変な目に遭っている…それくらいはなんとなく考えつくよ」
「…!ええ、その通りです。…それで先生に、協力を仰いだ次第です」
「え?」
“ミ、ミカ!?どうしてここに…!?”
「あー…いないと思ったら…」
あとからやって来た先生も思わず驚天動地のように。