Asyu-on Archive 作:非キヴォトス人のアコード
「あら、スバルさん。お加減はいかがです?」
「動けないほどではなくなりました…ありがとうございます」
「ほな良かった。けど、本調子ちゃうのは忘れたらかんで」
スバルも復帰し、全員が集まって改めて目標を確認する。
当然だが全てはマイアの奪還である。
「だが目標地点まではどう進入する?人数はいるが、直線的に行くのはさすがに無謀だろう」
「ルートは既に考えています。──裏口があるんです」
「裏口ですか?…あそこは崩壊が酷くて放置しとった場所ですねぇ」
「遠回りにはなりますが、追手には見つからずに至聖堂までいけるはずです」
不可視に蠢く者3人。
『保護者』はこの臨時自治区において、全てを見透かせるはずであった。
しかしその3人は、如何なる形でさえ誰にも見られずに作業を進める。
それは小ロタティオンを発生させて生まれた時間流を制御し、特定の一帯の時間流を歪ませたことにより叶っている。
さあ、発芽し形成され結合が始まり、まもなく花は咲き誇る。少女たちの自己を目覚めさせるための、大ロタティオンが。
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まともな建物はそう残っていない。
かつての繁栄だけがただそこにあるだけの、枯れた土地である。
「……クリア。ここまではええで」
「…はい、大丈夫です」
「妙です、さすがに静かすぎる。多少は人が行き交う場所なのですが…」
「なんでしょう…知らんもんもいっぱい増えとるね…」
「ほんまにな…違和感をずっと感じとる。臨時自治区から長く離れとったにしても、様変わりしすぎや」
「それに今考えてみると、あのミメシスっていうのもすごく変やったね…なのに、なんも疑わんと受け入れとった気がします」
そうしていると、サオリが何かに気付く。
「待て、誰かいる。…二手に分かれて隠れよう」
アリウスユニオンの4名、スクワッドの3人と先生とミカに分かれた。
そこにいたのは…件の
「聖徒会…!?ユスティナ聖徒会の
「……何故?エデン条約が取り消された今、使役は不可能なはずでは」
「…そうやな。そもそも、私たちがエデン条約の会場を襲撃したんは、
「そうですねぇ…だから皇女サマは、古聖堂の地下で『お人形さん』の言う通りにしてました…」
「そうして確保した聖徒会の兵力も駆使して、トリニティとゲヘナ自治区を占領する…それが私たちの任務やった」
「あれ……?ねえもしかしてなんだけど…分校派のトップの人は、そのトリニティとゲヘナへの攻撃…本当はどうでもいいことだったんじゃないかな…?」
ミカがそんな推論を語り出すと、何かの叫びが聞こえてくる。
「アンブロジウスか?……ミカ、そいつはあり得る話かもしれん。
「そんな…彼女にとっては、どうでもいい事だった…?じゃあ…私たちの任務は……」
『一体何の意味があったのか』
…
ご丁寧にアリウスユニオンの4人が隠れた方にも。
「わあ、意地が悪いね」
「囲まれてまった…!」
「……やはり」
「想定内やけど、そら分かっとるわな」
ホログラムで、かの者の姿が現れる。
『ええ、もちろんです』
「…マダム」
『仮だとしても私の支配下にある領地。皆さんの位置や目的地、その経路に至るまで全て把握しております』
「……
「分かっとっても、なんだかな…」
『ともかくとして。あなた達の任務は最初から‘代替品を古聖堂に連れて行き、聖徒会を顕現させる事’…それだけです。
「……」
『まあ、アリウスユニオンの4人はとうに理解しているように、トリニティやゲヘナを占領するかどうかは些末なこと。かの自治区が長年抱いていた憎悪を統制するための方便ですから。私自身は何の遺恨もありません』
「……!!やはり…ですか」
残念だが、少女たちは『保護者』の任務を果たしたと言える。
『保護者』に
最初から契約など果たされることなどない。
ここで、正式に先生と『保護者』は接触をなす。
自身をゲマトリア唯一の成功者であると言った。
下劣な扇動と搾取、欺瞞で得た栄華如きを成功などと言いのける神経には呆れる限りだが。
一通りの能書きを垂れた『保護者』に、先生は啖呵を切る。
“あなたは生徒を、私たちを侮辱した”
“そして『教え』、『学び』を侮辱した”
“私は大人として、あなたを絶対に許すことはできない”
まあ、件の人はそう言うでしょうね。
『それは、宣戦布告だと思っても?いいでしょう、この先の地にて、決着を付けましょう……辿り着くことができればですが』
上位者気取り甚だしい。
『黒服はあなたを仲間と認識し、互いに競い合えると信じ。マエストロはあなたを理解者と認識し、互いに高め合えると信じ。ゴルコンダはあなたをメタファーと認識し、互いを通じて完成されると信じ。そして私はあなたを敵対者と認識し、互いに反発すると信じています』
「善意と悪意の狭間にある者と認識し、それでいて互いの目標の成就がためなら協働する者がいるのも忘れるな」
何者かにより、怒りを込めて咲き乱れる弾丸。
『…やはりいたのですね』
「ごきげんよう、アンチクショウな淑女様」
“か、『奏でる用務員』…!?”
その男の横には、長方形の異形頭をしたヘイロー無き何者かが2人。
共にサブマシンガンを添えて。
「アンタの成功は、少数によって多数を貶める醜悪かつ小汚い矮小なエゴのための成功。そんなものを成功などと定義してしまうならば、キヴォトスにも私のいた世界にも成功はないことになります」
そして私も扇子を持つ。
『保護者』の扇子は閉じられていて、ステルス某の赤い扇は開かれている。
ここで異形頭も言葉を紡ぎだした。
「成功は、自己が自己のために花開くもの」
「成功は、荒もうと己であると見定めるもの」
「「アナタの他者によって咲いた成功は、必衰の下にあるもの」」
言い終えると、ホログラムを投影するマシンへ銃撃する異形頭たち。
それが済むと男は扇子を閉じ、異形頭2人を引き連れ先へ進んでいってしまった。
「……えぇ?今の、なんなんです…?」
「もー。あのオジサマやっぱり変だよー」
「師匠…とうとう会人を連れ出したのか…!?」
スバルもミカもサオリも、ベクトルは違えど困惑しきりである。
「と、とりあえず、彼らのおかげで包囲は切り開かれています!このまま進みましょう!」