Asyu-on Archive 作:非キヴォトス人のアコード
『保護者』と『先生』。
相剋はなされる。
残念だが、かの者は2度目の敗北の間近である。
そして私は今度こそ仕留め切ってみせよう。
「しかし、儀式は日の出に行わなくても良いのですよ。ふふふ…既に儀式は始めております」
「……!?」
何処までも小汚い手段を使うものだ。
『保護者』は不意に、アツコへ…本来ならば贄とされる定めにあった少女へ卑しく語りかける。
「時にアツコ。あなたが正気を取り戻さないままであれば、マイアは生贄とならずとも良かったとは考えませんか?」
「バカな方便…あなたの極度に歪んだ精神と理念が私の代わりを生んだだけ、そこに私は関係ないよ。全ては低俗なガキなあなたが、ヒトを弄んだ結果なだけ」
「ガキ…?随分とモノを言うようになりましたね、子供の分際で」
そして、さらに物言うアリウスユニオンの子どもたち。
「なに言ってるんだか、アンタも子どもだよ。所詮やってることは、自分の思うようにならないからって喚き立てて癇癪起こしてる子ども。そんなんだからヒトを『代替品』なんて呼んで物のように使ってるんでしょ」
「…そうですね。マイアちゃんは…いえ、今の分校派のみんなは、本来それぞれ1人ひとつの存在です。道具という感情ないものなどではありません。それに気付こうと気付けなかろうと」
「マダム…保護者気取りの未熟な大人よ。我々アリウスユニオンが…かつてお前に付き従った子どもたちが…『全き人格の回復』を果たそうとする者たちが、その醜く矮小な野望を再び…いいや、今度こそ完全に叩き壊してやろう。裏切るという一歩を踏み出した者たちと共にな」
4人が4人、『保護者』を憐れみの目で見ている。
小汚いエゴを剥き出しにすることでしか生きられぬ様に対して。
悪意ある人間を見定められる力を持ったが故に。
「…そのような目で見るのをやめなさい!!どこまでも私をバカにするガキども!!」
怒りのままに、あの巨大な茨の態様となる『保護者』。
しかし、どうあがいてもそれは高位なる偉大な大人の姿などではなく、矮小で醜悪な童子の姿にしか見えないのだ。
「あれが…本物のマダム…」
「……そうかい、私たちはあんなもんを」
「なんや…急に醜く見えてきたわ」
「スバル、シアン、ソウカ。私たちはあの姿を一度見ている」
「…そうなんですか」
「ああ、あの保護者気取りをアリウス自治区から追放する時に奴はあの姿になり、そして返り討ちにした。あの時は5人と師匠だったから、7人と先生なら余裕だろう」
「サオリ、それを聞いて少し気が楽になりましたよ」
あるべき大人が鼓舞する。
“それじゃあみんな…私もついている、怖がることはないから”
「ええ、マイアを助け出します」
「おうよ、あのきっしょいのしばき回そか」
「はい、絶対に倒させてもらいます」
アリウスの精鋭たちが構え、そして配置へ散開する。
「まずは私たちだよ」
「ぶっ放す!」
先制する弾頭と榴弾の嵐が茨を捉えた。
「いい?これまでに教えられたことは、この時のためにあったんだよ」
「ああ、そうか…そう考えれば良かったんですね」
「受けた仕打ちの仇そのものだ、やりたいようにやってしまえ」
さらには展開したサオリ、スバル、アツコによる弾幕。
「さすがです、鷹の目でもしてはるんやろか」
『え、えへへ…』
避けきれぬ攻撃には狙撃手2人が対処。
かつての合戦よりも易く追い詰める結果となる。
態様は元のヒトもどきとなる『保護者』。しかし無駄な足掻きをまだ見せようとしているらしい。
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「…なんというか、すごいね。オジサマ?」
「気のせいであります」
デストロイギターの加護を背に一騎当千とも言える活躍をするミカ。
退きつつ戦っていると、ある場所に辿り着いた。
「……ここは…聖歌隊室かな?」
「…オルガンと楽譜でしょうか」
「蓄音機もあるね。……そっか、アツコが言ってたね。ユスティナ聖徒会に関係のある場所かもって。こういうのがあると、本当っぽいね」
蓄音機は動かない。長い時を示すように。
「……」
ミカは物を思う。
アツコがパテル派の少女たちを圧する姿や、アツコとコハルが自身が持っていた物たちを回収してきた時。詳細は省いているが先生の思いを聞いて決意を抱いた時。
それが不意をついて思い出された。
それが回答へと少女を導いた。
「……救われたいって思っても、いいんだ……ヒトによっては、私を救いたいと思って、手を差し伸べてくれる人もいて…そしてそんな私でも…誰かの救いになれる時が来るかもしれない。だから、そんな私だから…アリウススクワッド…あなた達のために、祈るね。いつか、本当の意味でヒトとして生きられる事を──あなた達に、未来が…次の機会がある事を──だから、私は…あなた達と生きていたい」
…男の姿がないことに気付くミカ。目で姿を探し、見つけると。
「あれ?」
聖歌隊室の指揮台に立つ用務員。さらにその脇には鉄の麒麟が阿吽のように立ち、それぞれが3本のレーザー光を放つ。
男から見て右上部のレーザーを瞬刻遮ると、現代を象徴するような電子音が鳴り始めた。
「…不思議な音なのに、この場所に合ってるね」
「左様でありますか」
目を覚ました少女は、再び独白する。
「……もしかすると、マイアを助けたあとにはオジサマという良い大人がついてくれるかもしれない。あるいは追われる運命にあるのかも…表を歩くことができないような人生が待ち受けているかもしれない。でも、それでも…あなた達の未来に、一筋の光明があると信じるのなら──マイアを助ける事が、自分自身を救うことになり得るはず。きっと私達には、時間が残されているんだって」
キミ達のその行く先に幸いが。
祝福があらんことを。
kyrie eleison,kyrie eleison,kyrie eleison.
criste eleison,criste eleison,criste eleison,
kyrie eleison,kyrie eleison,kyrie eleison.
少女たちのためのキリエ。
そしてそれに連なる少女たちのための亜種音。
聖女たちは、音楽に導かれるように聖歌隊室へ集っていた。