Asyu-on Archive 作:非キヴォトス人のアコード
討伐を成した旅団もまた、地下より地上へ帰還した。
「おい先生、何を空見て……は?」
「ちょちょちょちょ…まだなんかあるんか!?もう終わったんやろ!?」
「彼女は…ベアトリーチェは…」
“……多分、もういない…のかな…”
「なんや気持ち悪いな…歯切れの悪い…」
“少なくとも、二度とみんなを苦しめる事はないのは確かだよ”
そう言うしかあるまい。
まさかあの、成層圏まで達した巨大な機甲にて打ち倒した仇が眠るなど、信じられる由もなかろう。
「…先生」
スバルが進み出る。
「約束通り、マイアを救ったので……あなたの好きにしてください」
“……?”
「全ては私が元凶でしょう…?エデン条約事件、セイア襲撃、ナギサ襲撃だって……シアンも、ソウカも、マイアも…みんな私のせいでこうなってしまった。何だって構いません。あなたの思う、一番適切な場所に私を送ってください」
「何言い出すんやオイ…!!」
「スバルはん…!?」
「……」
「っざけんなテメェ!!何一人で…!!」
「全くもってその通り」
ええ、全くもってその通りです。
相変わらず歪んだ認知だこと。
「……『奏でる用務員』…」
「少なくとも、結果的に誤った選択であれども、周囲の人間さえ落とさぬようにとやってきたのは確かなこと」
“そうだね。他人の面倒を見て、守り”
“耐え──責任を負ってきた”
「故に私がアリウスに介入して尚、詐欺に加担することを正しいと認知し、誤った選択を
梯スバル、西空シアン、佃ソウカ、立木マイアの4名は、罪を犯した生徒である。それは変わらない事実だろう。
しかし、それだからと艱難進化を選び続けなければならないわけではないのだ。
ヒト科が苦しむのは、その一個人にだけ責任がつきまとうわけではない。
“子どもたちが苦しむような世界を作った責任は、大人の私が負うものだからね”
スバルは、取るべきと認識していた「最低限の責任」を否定され困惑している。
そこへ足された発言は、「おい、オマエが取ろうとする責任の所在はどこだ?」と横槍を入れたくなったステルス某の溜飲をも下げさせるものであった。
“責任を負うのは、自分の人生そのものだよ、スバル”
案外分かっていらっしゃる。うっかり余計な口を滑らせなくて本当に良かった。
取るべきと思い込んでいた責任はオマエのものではないのだから、後は先々に取る選択の責任を取り切れということだろう。
何より一件の責任を取るべき者がもう取っている。
だがそれをすぐ分かるほど、プレアデスの少女は聡くない。
「……ど、どういう意味なのか、分かりません」
「では尋ねましょう。今あなたが成したい事は?」
「成したい事…?」
「そうですね、先輩。アズサさんは学ぶのが楽しいって言ってました。友達と一緒にいるのが幸せだって。スバル先輩の好きなものは何ですか?やりたいことは?趣味は?好きな食べ物は?私は今まで、ひとつも聞いたことありませんでした。先輩、将来の夢は?なりたいものはありますか?」
「……いや、そんな…そんなこと……わかりません…一度も、そんなこと考えた事がありませんでしたから…私自身が何をしたいとか…私は、ひとつもわかりません…」
これも仕方なきこと。ようやく蒙昧の霧から抜け出したばかり。
分からないのも致し方ないことだ。
「そうだな、スバルは責任感があり…決断力もある…それから」
「教えるのも上手ですね、いろいろ……教えてくれる時は、たまに怖い時もありますかね…」
「真面目過ぎるくらいに真面目だよね。今回のことで分かったけど、計画を立てるのも上手いし、指揮するのだって」
「あとはハーモニカかな?結構上手なんだよ」
「えっ…!アツコ、いつからそれを…」
アリウスユニオンの4人が客観視した梯スバル像を提示していく。
すると先生はこんなことを思いついた。
“そっか……それなら、スバルは今後……”
“いい先生になれるかもしれないね”
「は、はい!?」
「あらぁ、スバルはんが先生に?」
「…案外悪くはないんやないか」
「はい、そう思います。とっても似合いそう…」
「……そんな…私に…そんな未来が…?」
「その未来になるかは、あとはオマエがこの先する選択次第」
「…選択?」
“答えは、たくさんの選択をした末に見つかるからね”
「……そう、ですか。それを見つけるのが、私の…」
“大人の私が…私たちが保証するよ”
「はい。どれほどの時を要すかはともかく、その回答は自ずと現れるし見つけられる」
梯スバルだけでない。
西空シアン、佃ソウカ、立木マイアも、選択を多く行っていくことになる。
それは聖園ミカもまた同じく。
そうして何かを見出すことはいずれ叶うだろう。
「もしも望むなら、アリウスユニオンに戻るのもありだよ?私たちはいつでもあなたたちを迎え入れられるからね」
アツコが問う。
課題が見出される庭園にて、回答を探し出すという選択もあると。
「……いえ、一旦は…自分の足で、その答えを探してみようと思います」
今は、キヴォトス全土を課題が見出される庭園とするようだ。
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正義実現委員会に救護騎士団。
数多のトリニティの生徒が臨時自治区へ押し寄せる。
ミカはただそれに驚嘆するばかり。
「…正義実現委員会?ど、どうしてここに…」
「そんなの決まってるっす。先生とミカ様を待ってる人がいるんすから」
先導されてある場所へ。
そこで、再会は果たされる。
「先生……!!ミカさん……!!ご無事でしたか…!」
「な、ナギちゃん……?え、な、どうしてここに…」
「ここは、アリウス再興作戦の指揮本部です……」
「いやあの、どうやってここに来たのって…」
「私が教えたのだよ」
百合園セイアもまた、ここで再会となる。
「あ…セイアちゃん…」
「…まあ、何と言えばいいか…随分キミに似たお転婆なお姫様と友達らしいね、ミカ」
「あ、あははー…」
「私のことかな?」
さらにはトリニティとアリウスユニオンの、正式な邂逅。
これもまた果たされた。
「あなたが、アリウスユニオンの…」
「…初めましてだね。アリウスユニオン生徒会『Uncoded』会長、秤アツコだよ」
「トリニティ総合学園生徒会『ティーパーティー』ホスト、桐藤ナギサです。……それからアツコさん?ミカさんを誘拐した容疑については、嫌疑不十分につき不問と致しますのでご承知おきを」
「うーん?何のことかな?」
「…本当にミカに引けを取らないようだ」