Asyu-on Archive 作:非キヴォトス人のアコード
そもそもとしてここにトリニティが大挙したのはなぜか。
監獄で爆発騒ぎがあったという話になった深夜、セイアは即断で動いた。
「直感レベルでも、ここまで当たるんだね…。ナギサを、そしてシスターフッドと正義実現委員会に救護騎士団も呼び出してくれ。急を要すが、先生とミカの元へ向かわなければならない…」
そうしてセイアは、シスターフッドと救護騎士団、正義実現委員会を招集しこの場へ出動させた。
さらに…確かなのは、桐藤ナギサは聖園ミカを見つけ出す、救う為なら自身の持つ全ての権力を手放しても構わぬ覚悟で総動員させたということだ。
アリウスユニオン自治区ではなく臨時自治区への出征ということもあり、「本来のTimeline」以上にカタコンベの変化パターンを探るのに手間取ったようだが、それであれど集合知というものは時に絶大な力を発揮する。
生徒という存在であれど、先生の力を借り続けるだけではヒトとしての進歩はない。彼の人の道先に光を灯せてこそ、理想的な関係足り得る…とはセイア談。
だから、キミを探しに来たとも。
「…セイアちゃん、少しは分かるようになったけど…やっぱり何言ってるか分かんないことのが多いよ。変わらず偉そうだし。何度も懲らしめたいと思ってた…──それでも大好き、セイアちゃん」
「……まったく」
口とは裏腹にセイアの表情は穏やかである。
「それとナギちゃんはなんというか、色々考え過ぎ!ていうか、こんな所まで紅茶を手放せないのちょっとどうかと思うよ?──でも、そんなナギちゃんが大好き」
「い、いえ、これは…緊張してしまって………えっ?!」
親愛の意味であっても、突然好意を示されて驚愕するナギサ。
「うん、本当に、ふたりとも大好き。ふたりともありがとう……そして、ごめんね……」
果たされる対話と懺悔。
これこそが、星の姫の救済である。
「ミカさん……」
「いや、謝るのは私の方だよ。…すまなかった、ミカ。いつもキミに謝ろうと思っていたが、子どもみたいな意地が邪魔をして、果たす事ができなかった」
「…セイアさんは、アリウスとの和解はできないと思ってたんだよね?」
「…ああ、そうさアツコ。ミカが、アリウスと和解したいと言い出した時、私は…」
「ううん、何も言わないで……大丈夫だから。アツコもセイアちゃんのこといじめないでよ?」
「ふふ、そうだね。ごめん」
「それにお聞きしましたよアツコさん。ミカさんの私物を回収して回ってくださったと…」
「うん、それについてはコハルちゃんのことも褒めてあげてね。私は燃やされる前のものをごうだ……回収したんだけど、燃やされなかったものを影で回収したりしたのはあの子だから」
「……今何か、物騒なことを言いかけなかったかい?」
“ともかく、お互いに色々と話す時間をとったほうがいいね”
「ああ、そのようだね」
「では、そろそろ参りましょうか。ミカさんの聴聞会まで、もう時間がありませんから」
アツコが再び口を開く。
「その聴聞会、私も参加していい?」
「え?ま、まあ、問題ありませんが…」
「参考人としてね」
「…え?」
****
さて、その頃アリウススクワッドの面々。
4人は一度、自分たちの足で世界を見ると先生らと別れた。
その後のことだ。
「はー…初めての道は意外と楽しいですなぁ」
「呑気なこと言っとるなオマエ…」
「この先どこまで進んでも、初めて歩く道ですからね。私も楽しみです」
…強烈な違和感を感じたソウカ。
後ろを振り返り、辺りを見回す。
「…………あらぁ?…ちょっと!?スバルはんは!?」
「…あ」
「確かスバルはんうちらの後ろにおったやんな!?おらんなっとらんか!?」
「ケッ…」
「シアンさん…?」
「アイツはどっか行ったわ」
「どっか行ったってなんやねん!?」
「私に、みんなをお願いしますとだけ言い残してな。勝手なやっちゃ…ほんまこすいやつやでスバル。こんな足枷残しよるとか……私には、重すぎるわ……」
「大丈夫ですよ、シアンさん」
「……マイア」
「スバル先輩には、もう少しだけ時間が必要なんだと思います。──自分を振り返り、自分を知る時間が。自分の命題に答えるための時間が…」
「……なら、うちらだけで頑張っとるうちに…帰って来はるよね。絶対に」
「はい…先輩は帰って来ます。それにいつまでも先輩頼りじゃいけませんから」
「はぁ……んなこと言っとるなら、私もやるしかないんか…全く自信はないけどな……」
「そうですよ。こんな事で弱音を吐いたら、コンクリートに咲いてる花に失礼ですから。アズサさんはあの時、花を見てこう言ってました」
それがたとえ虚しいことであっても、抵抗し続けることを止めるべきではないと。
アズサが、そしてアリウスユニオンの面々がやり遂げて、成しているのだから、4人にもできないことではないだろう。
グッドエンドは訪れる。それがあると思うのであれば。
****
さて、他方トリニティである。
聴聞会が執り行われた。
結論から言おう、聖園ミカはティーパーティーとしての権力は剥奪された。
しかし、退学という処分までには至らず、一般生徒としての権利は担保された。
そして秤アツコという「本来のTimeline」になかった変数により、調印式の日にあったパテル派のスキャンダルまで公となる。
これによって、ミカへの厳しい視線は「本来のTimeline」よりも僅かばかり苛烈さは鳴りを潜めることに。
代わりにパテル派自体にも厳しい視線を浴びせられることとなり、特有の過激な動向は完全に取れない状況となったのだった。
そして、ミカの望んだトリニティとアリウスの和解。
聴聞会が行われた数日後、正式にその一歩が踏み出された。
ミカによって非公式に行われていた支援は公式に行うものとなり、トリニティ総合学園とアリウスユニオンの両校は姉妹提携が結ばれることになる。
そこで発言されたアツコの言葉で、この物語は終わりとしよう。
かつての第一回公会議によって仲を分つことになったトリニティとアリウス。
ですがその長い時を経て再び友となり、共に学び、共に努力し、共に可能性を探していけることとなりました。
…仲を分つその間に、アリウスは新しい教義を。
コンクリートの隅で咲く花のように、強く立つ意志を得ました。
例え全ては虚しくとも、世界が暗く寂しいものであったとしても。
その日一日を諦める理由などにはならないのですから。
Asyu-on Archive fin
こののちに所謂分校派の少女たちがアリウスユニオンに再度加わって、苦悩しながらも立ちあがろうとする様子に、このTimelineにおけるアリウススクワッドの4人がアリウスユニオンへ復帰することを決断する様子もあるようです。
…あまねく奇跡の集う時には、何やら「舟」がもう一隻。
そして混沌の領域ですか。
その領域は児戯を行う為の場ではないと思われますが、まあそれはいいです。
ともかく、物語はこれでおしまい。
もう大丈夫ですよ、安寧の人。
一旦区切りです。
また続くかもしれませんがその時はどうぞよろしくお願い致します。