Asyu-on Archive 作:非キヴォトス人のアコード
EX0.生存を炊け 解錠する必勝する聡明なる暗号なるキミたる灯を
4人の影。
意思を持って、「戻る」歩み。
「ふぅ…」
「なんやマイア、大丈夫か」
「い、いえ、大丈夫です…」
「…なら、ええんやけどね」
覚悟を持って、まずは暗中模索をした。
痛みも伴ったが、その学びは血肉となった。
その学びを持って、帰ることを決めたのである。
「帰ってきたんだね」
「…!アツコ…ええ、お恥ずかしながら…戻りました」
「そや…その時だと思って、戻ってきた」
「なかなか、この世界は大変やったよ?」
「そう、ですね」
詳しくは落ち着いてから、と前置きをして、アツコは歓迎する。
「おかえりなさい、アリウスユニオンに」
****
そうなるに至るまでの話をしよう。
かの「保護者」に付き従っていた少女たちは、トリニティに編入した者、アリウススクワッドのように自らの足で世界を見始めた者、そしてアリウスユニオンに帰還した者に分かれた。
自らの足で世界を見始めた者達には、アリウスユニオン生徒会長直々に訓示を与えていた。
「いつでも帰ってきて良い場所がここにある」と。
「それで、4人の総意で…アリウスユニオンに戻ることを決めたんです」
“そうなんだね…!”
各々がキヴォトスを自分の目で見ていく中で決めた決断。
先生はその心に感嘆している。
「やけど戻る上で、最低限の筋は通さなかんことがあるやろ」
「そうやねぇ、あの件の主犯であるという事実は…なぁんにも精算できとらんから」
「はい。アリウスユニオンに戻る前に、『エデン条約襲撃事件の実行犯』として、ヴァルキューレに出頭しようと思っています」
“…そっか…”
そうした覚悟の下、ヴァルキューレへ出頭した4人。
前段通り、「エデン条約襲撃事件の実行犯」として刑が確定し、収監されることとなる。
そこから数日進んだ頃。
「ちわーっす。うちでの暮らしはどうっすか?」
「ええ、それなりに。あなたは…コノカ副局長、でしたか」
「ああそんなかたくなくていいっすよ、コノカで大丈夫っす」
「…そうですか?分かりました。ですがコノカ、今になって尋問室に呼ぶなんて…何かありましたか?もう私の刑は確定しているんでしょう?」
そのままの意味でどう過ごしているかと思って、とコノカは言う。
ヴァルキューレではそれなりに有名だとも。
「…それ、良いことには思えませんけど」
「キヴォトス中で有名よりはマシっすよ」
それもそうだがと口籠るスバル。
さて、ここからが本題のようだ。
「アリウススクワッド、及びアリウス分校に関する情報が更新されました」
「…?つまり、私たちの刑期に関することですか」
「ま、似たようなもんっすかね」
「まあ、何であれ受け入れる覚悟はとっくに出来てますので」
「普通は逆なんだけどなー」
アリウス出身は、よく言う「普通」から少々ズレた者が多いとはスバルの語り。
「ああ、アリウス分校…というかアリウスユニオンか。連邦生徒会で、今後の扱いが決まりそうって喜んでましたよ。あんまし関係ない話っすけど」
「いえ。聞かせていただいて良かったです、母校に関係のない話ではないので。元々は最悪のテロリストを養成していた学園と見られておかしくありませんから。その事実を否定などする気もないですし、過去を受け入れなければ前へは進めませんからね」
「おー、良いこと言うー」
すると、コノカはこんなことを聞く。
後悔はあるのかと。
「あのテロのことですね」
「他に何があるんすか」
「ふふ」
穏やかな笑顔で笑みを溢すスバル。
「どうかしたんすか」
「いえ、前に誰かと同じ話をしたような、と思い出しただけです。後悔しているか、とのことですけど」
後悔しなかった日は、1日としてない。
スバルはそう言い切った。
「あの頃はまだ未熟だった、って感じっすか」
「まあ、そうですね。今の私なら、絶対にしません。ですが、かつての自分も自分である…これに変わりありません」
「……よし、やっぱり思った通り」
「…え?」
「まあまあ。じゃ、形式的な決まり文句なわけですが──」
コノカは、アリウススクワッドの面々の仮釈放が決まったことをスバルへ通達した。
「はい…?な、なんの冗談ですか」
「まあ、そういう反応になりますよねぇ」
その流れで説明が始まる。
当然だが、罪状と刑期に変更はない。
だがこのキヴォトスにおいて、爆発したり建物が壊れるなどよくあることだと。
そしてキヴォトスの犯罪で、重要視されるものは何か。
「殺意」や「悪意」である。
そういう意味では「殺意」や「悪意」はあったと言えるが、全員が自首し罰を望むというように、反省している姿勢は大いに評価されるに値するのだ。
「何より─嘆願書が届いたんですよ。それも、皆さんが『殺意』と『悪意』を向けたはずの相手から。先生、トリニティ、そしてゲヘナ。……さらにはアリウスユニオンからも」
『先生にまで被害が及ばそうになったことには、少し腹が立った。それでも嘆願書を書いたのは…先生が直々に頭を下げるのだもの。私にはこうするしかないじゃない。残るのはマコトの美容室代くらいだけど…気にしないでいいわ。その話は、本当にどうでも良いことだから』
『これはアリウスユニオン生徒会長である私、秤アツコ以下全生徒の総意としての嘆願。‘現は虚無の演目である’ことを曲解して解釈していたことは褒められたことではないと思うけど、それでも本当の意味を見つけて自分の意思で信じようとしている。それは喜ばしいことだから』
「……これで、いいんでしょうか」
「いいみたいっすよ。これほどの声が集まったら、うちとしても黙ってるわけにはいきませんし。それにほら、ヴァルキューレって更生と矯正を目的にした学園ですから?」
まあ、他にも世知辛い理由があるそうだが。
「まあ決め手は、先生が責任を持つって言ったからみたいっすけど」
「…先生を失望させるわけにはいきませんね」
「もう一人の大人も忘れちゃダメっすよ。あのちょっと小難しそうなオジサン」
「…あの人は私もよく分かりません」