Asyu-on Archive 作:非キヴォトス人のアコード
そもそもアリウススクワッドたちはどのTimelineにおいてアリウスユニオンへ帰還したのか。
それは方舟は去り、色彩の嚮導者が眠りについた後。
さらに連邦生徒会長の帰還が報告された後。
そのいつかにあった出来事である。
「師匠、この部分なんだが」
「はい、こちらは…」
「…ねえ、あとで私もいい?」
「承知しました」
これはアリウスユニオンのある一幕。
生徒が勉学に勤しむ姿。
それに何の違和感も抱かない。
だが師匠と呼ばれていながら、なぜその頭頂にはヘイローがあるのか。
衣服もその他の生徒らとは異なり、振袖と袴の奇妙な混成衣装を身に纏う。
それでもその生徒と勉学に励む錠前サオリと戒野ミサキは、何の違和感も抱かない。
彼女はステルス某との違いが多すぎるというのに。
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「さて、まずは遅れましたが一件についてご無事で何より。そして一件には私にも責任がございます故、多大なるご迷惑をおかけしたこと大変申し訳なく存じます」
“そうかな…そうかも…”
先生とステルス某の邂逅であります。
謝罪から入ったのは、ナニとは言わないが仮にもゲマなんとかとしての礼節。
“それで、本題とは?”
「はい。それは、アリウスユニオンに私の預かり知らぬところで、『奏でる用務員』を名乗る生徒が現れているのです」
“『用務員』を名乗る生徒…?”
「生徒らはその姿に何ひとつ違和感など持たず、そして面妖なことに生徒らは本物のヒラサワである私もヒラサワとして認識しているようなのです。私はそのヒラサワと認識されている生徒を便宜上、『アヴァター』と称しております」
全くもって理解不能でしょう?
“その生徒に心当たりは?”
「ない、全くもって。そもそもあの建築様式の中で、和装の生徒など違和感でしかありません。何よりインタラクティブライブで自己を増殖させてきたステルス某的にも、本当に増殖というか別の態様が出てくるとか聞いてないしエグい」
“エグい…”
「あるいは、件の連邦生徒会長復帰以後に関係した話に近いのかもしれません」
“…ライブラリー・オブ・ロア?”
謂わば怪談や都市伝説の類が具現化したナニカである。
ステルス某がそういう類に分類されているのなら、憤慨するべき事案であるが。
「これについては、件の生徒に対して違和感を抱き報告を上げてくれたヒヨリとスバルと共に追求しているところであります。生徒より要求があれば、この件あなたにも援護を頂ければと」
“なるほど…分かったよ”
「あ、そういえばヒヨリはアズサ以上にメンドイ。所謂過激派っていうんですか、アレです」
“えぇ…”
感情表現でバンドの初期メンバーのベースが戻ってきた時よろしくマラカス振り出したし、どうかしてると思わない?
そうだろうオマエタチ。
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“というわけで、アリウスユニオンに来てみたけど…”
かつての姿を留めながらも、建てられたのは最近になってとも思わされるような建築物たち。
全ては自らの意思で学ぶことを選んだ者たちの手によってなされた。
「ああ、先生。いらっしゃいましたか」
“うん、今来たところだよスバル”
“…それで”
「……ええそうです、この生徒が『奏でる用務員』だと」
件の着物の生徒。光輪は曼荼羅を描いている。
どう見たところでステルス某などではない。
白髪だが、いつかの唯一無二のような顔貌に見えないこともない。
「はい。いかにも私は『奏でる用務員』であります」
“……”
「…スバル、何も問題はありません。先生と一対一で話をさせてください」
「はぁ。わ、わかりました…」
母校に帰っていきなりこれの悲哀。
「…さて、確かに私はステルス某でありますが、状況を理解していないわけではありません」
“…というと?”
「私はナニカによって、『奏でる用務員』の役割を与えられている。それによりアリウスユニオンの生徒たちは認識を歪めている、あるいは歪められている。ここまでは理解しております」
“…!”
「私の中の認知的不協和が常に語りかけています。オマエはオマエでない、そのように」
“キミはキミでない…”
「そして得るべき本懐は探しております。今の私が在るべき私でないことも理解しておりますので」
一文字の口と見据える瞳は変わらない。
しかし示すのは自身のアイデンティティに関する一抹の不安。
彼女も彼女で思うところがおありのようだ。
「あの子ですかぁ…?」
“うん。ヒヨリは違うって思ってるんだよね”
「はい、全く違います!それでもサオリさんたちは師匠だと信じて疑わないんです…!何故でしょう!?信じられなくて最初は本気で怒ってしまいました…!」
“あのヒヨリがそんなに…”
ステルスでないと看破しているヒヨリ。
随分と周囲に対して憤怒の濁流を叩き込んでいるようだ。
「まあ、あの子も色々と思うところがあるというふうには言っていたので…それは改めましたが…」
“それは、私も聞いてきたところだよ”
「とにかくこの状況はおかしいので、どうにかしましょう…!」
****
さて、そうすると彼女たちはどうなのか。
このTimelineにおけるアリウススクワッドである。
「なんや、あの和装の生徒か?」
「あの子が用務員さんなわけあるかいな」
「そう見えているなら、非局所性薬膳が必要かもしれません」
“非局所性…なんて?”
“ま、まあ、それはともかく…”
どうやら奏でる用務員とは認識していないようである。
しかしこの騒ぎは、さらに混迷を極めるようだ。
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お姉ちゃん…その頭の輪っかは何?
あら、アナタにもあるわよ。
神秘というより恐怖してるみたいな私たちなのに。
ちょっとお姉ちゃん…私の考えてたこと取らないで。
あらごめんなさいルビイ、まだこの癖は抜けないみたいね。
オマエよ、あまりそのような問答をしてはならぬ也。
オマエ…?あなたもオマエって言うんだ。
そう、私たちは2人よ。
まあ本当は、私たちが何者なのかは分かってるのだけれど。
…奇妙也。ならばオマエは居ないはず也。
認知的不協和から解放され、本当の姿としてあるべき也。
…それが私たちにも、よく分からなくて。
ええ。知らないうちにあなた、Σ-12と一緒に、このキヴォトスという土地に立っているのよ。
そしてどうやらあの男もいるそうじゃない。協力を仰ぎましょう?