Asyu-on Archive 作:非キヴォトス人のアコード
「いけない、他のTimelineから別次元のヒラサワが来ている」
“えぇ…”
“分かるの…?”
突拍子もいいところだろう。
ただ事実として観測されたのだ。
「確実にステルス某をナニカが現象として認識してきている。創作上では確かにそうした実績はありますが、こうもされると非常に厄介であります」
「その通り。存在を定義するものがさらに揺らぎ、このままではパラドックスによる対消滅もあり得ます」
“…キミは”
「『ホンモノ』が『アヴァター』と呼ぶのです、それに倣い今は『アヴァター』とお呼びください」
いつかの過去向く士について来ただけの抜け殻─アヴァター─とは違い、自身で問題解決に向けて協力する姿は、アヴァターという呼称を与えたことに少々の申し訳なさも感じないわけではない。
「それで、別次元のヒラサワがこちらにコンタクトを取ってきました。『ルビイとシトリン』、『Σ-12』と呼称しましょう」
“Σ-12も気になるけど…”
“ルビイとシトリンはどういう…”
「認知的不協和による不安定性から、分裂体となってしまったヒラサワであります。そしてΣ-12は、狂気の宗教が支配する世界において異を唱えた結果、改造手術の末サイボーグにされたヒラサワです」
“そ、壮絶だね…”
「『ホンモノ』と私がこうしているだけでも本来は危険なこと。それに重ねて私たちが彼らと邂逅することは更なる悪影響を及ばしかねません。『奏でる用務員』という存在を確定のものとするべく、どうか」
「アリウスの生徒たちも助力すると進言しています。問題解決を、申し訳ありませんがアナタと生徒たちに託したい」
“分かった、任されたよ”
“生徒であるキミ…『アヴァター』からもお願いされたからね”
「左様ですか」
ステルス的にもむず痒い。
****
“それでキミたちが…”
ある領域において、2組と先生は邂逅する。
「そう、私たちがルビイとシトリン。私がシトリンでこっちがルビイよ」
「それから喋れないから代わりに紹介するけど、こちらはΣ-12」
「うわ」
「確かに聞いた通りです!Σ-12さんの顔は師匠そのものです…!」
同行したヒヨリとスバルの反応は対照的であった。
(随分な反応也。しかし致し方ないこと)
Σ-12の腹部付近にあるディスプレイがスバルの反応にひとりごつ。
そうしていると、ルビイがさらなる情報を落とす。
「それで、先に言っておくべきだと思うけど…私たちみたいな存在は、この先さらにこの世界に来るかもしれない」
「そうね。そして一番来て欲しくない奴もいるわ。仮に『ルーク・サトワン・コンディアオ』が来た時は、急がないといけないわよ」
(奴のいた世界の因果が、奴を無限に増殖させる可能性がある也。そうなればこの世界は破滅に向かう也)
え、まだ来るの?という先生の困惑をよそに。
「…それで?どうすればこの状況を解決出来ると言うんです?」
「私たちは、もう一度本来の姿に戻れればどうにかなると思うよ」
「問題はΣ-12ね。ただ、私たちが戻った時にどうにか出来る可能性もあるわ」
「じゃあ、ルビイさんとシトリンさんの状況からですね…!」
「それで私たちが元の姿に戻るには、『PHOTON』という物質が必要なんだけど…」
「…あら、向こうから来たわね」
どことも分からないところから扉をしつこくノックする音。
そして向こうから開け放たれる。
保護者だ。
慈悲の涙を流す万民の保護者だ。
この保護者は、赤肌の女を揶揄する時に使った『保護者』ではない。
彼女たちの世界において現れた保護者である。
「あいつら…やっぱり現れたね」
「何故だか知らないけど、私たちも得物は持ってるわ。一緒に倒しましょう」
“それじゃあ、ヒヨリとスバルも”
「はい!」
「…なんなんですこれ」
****
赤い保護者はいとも簡単に燃え尽き、慈悲の涙を流す青い保護者はその涙を止ませた。
「…お姉ちゃん、これって…」
「ええ、『PHOTON』よ。あの心地良い気分が戻ってきたわ」
「じゃあ、あの時みたいに」
深く息を吐き吸い込む2人。
そして、地に沈み込んでいく…。
「…ああもう…めちゃくちゃですよ…」
“ま、まあまあ”
すると。
「ぶはぁっ」
「えぇーっ!?師匠!?」
「やかましい。しかしいかにも、まあ別のTimelineのステルスですが」
“えぇ…”
「さて、Σ-12についてもあとは私にお任せを。ある種の時の旅人でありますから、Timelineを渡ればそれをきっかけとして新たな旅を続けられるでしょう」
(僥倖也)
すると空間が割れ、別のTimelineへの入口が開く。
「pai duai」
(ではさらば也。そして、また会うことのない方が良きこと也)
“キミがそう思うなら”
“さようなら、良き旅を”
****
別Timelineの奏でる用務員達が去った後。
「まずは2名の懸案が解決しました。しかしまた別Timelineのステルスが現れました」
「はぁ…またですか…」
「次はどんな師匠なんですか?」
次に現れたのはなんとあちら側の「アヴァター」である。
そう。このキヴォトスにおけるアヴァターではなく、ギャル語を話し、シブセンのマックでダブチでも食べてそうな、WORLD CELLを代わりに起動させたアイツだ。
「本来なら思慮の羽を得てそれでいて自我を得たはずですが、元のチンケな存在に戻った上でこちらに来ているようです」
“チンケ…”
「ただそうなると『ホンモノ』、自我を再び忘れているなら『過去向く士』について来ていたおかしくはないのでは?」
「心配ご無用、アレが現れていなければWORLD CELLが出現したりもしていません」
“つまり、まだなんとかなる?”
「その通り」
本当にどうにかなるかはまだ分からないというのに。