Asyu-on Archive 作:非キヴォトス人のアコード
1、2、3、4…
この4つの音節からなる旋律がデュンクだ。
デュンクが1、2、3、4の順番で聞こえるなら、応答のアンは3、1、4、2と奏でる。
応答のタイミングは今ではない。
こちらがキューを出した時に行っていただく。
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「漸く、思い出さなければならないものが思い出せたよ。デュンク・アンは音の循環の中で、自分の中に取り入れた情報を洗い出すための行動だって。それは今のアリウスに必要なことだよね」
「その通り、今この地の果てに足りないものはそれだ」
奏でる用務員はテロートマトンで来よう。
そして秤アツコの視界には、雲の切れ間の陽が差し始めた様子。
「あの時の!!!!」
「おや」
実際にあの時以来会ってみると、白洲アズサはヒラサワにあまり宜しくない影響の受け方もされていそうだが…まあいいでしょう。
「ああ、姿は見たかも…アンタだったんだ」
「しかし未だ、アリウススクワッドの中であなただけ虚無の信奉者のまま」
「…何?なんか文句でもあるわけ?」
こうなれば私が強引にやるしかない。
あまり他人に講釈垂らしたところで実入りはないというのに。
「あなたの抱く憎悪の変遷に整合性がないことに気付いていますか?Aに突如として付属されたB、そこに矛盾があろうと説明はされません」
「矛盾……………ゲヘナも敵として叩けと言われていることかな」
秤アツコの補足をさらなる推進力にステルスは続けよう。
「そうです。かつ、今トリニティへ激情の火を灯したところで自身に良い転機が来る道理がありません。これもまた整合性がありません。それは偽物だからです」
「…っ」
「今のあなたは、常に起こり得るかも分からない結果だけを信じています。しかし、あなたがユートピアに住んでいようとディストピアに住んでいようと、その領域はあなたが誰であるかに従います」
揺らぎが強くなる。戒野ミサキとは誰であるか、という視座が、アリウスの現状に対しての疑念につながり始める。
「そんなこと、言われたって…」
「ゆえにあなたが誰であるかを忘れさせる為に、あらゆる人工物で取り囲み恐怖と不安のみが確実であるかのような世界に、あなたを閉じ込めているのです。あなたが『それは無い』という瞬間まで」
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「…だとしても私達は……全ては虚しいものだと…」
戒野ミサキが迷いを語ろうとしたのを遮るように、いつかのように道化師がカットイン。カタストロフにもカタルシスにもなり得る狂言回しを始める。
【オォイ?(楽)『vanitas vanitatum. et omnia vanitas.』だったかお前達ぃ〜?(哀)そんな歪んだ教義いつまで信じているんだお前達ぃ(怒)元々はそれに続く言葉があるのにな!(喜)】
「続き…!?」
錠前サオリの愕然とするような様子をスルーし、道化師は続ける。
【疑うことを奪われた可哀想なお前達ぃ〜(哀)オレサマが続きの言葉を(怒)お前達に分かりやすく教えてやろうじゃないかぁ(楽)いいかこう続くのさ!(喜)『どうせ世界が不条理ばかりならぁ(哀)執着し過ぎず逃避もし過ぎないで(楽)程々に生きればいいじゃないか!(喜)』って続くんだアハー↑ハハァー(楽)学びになったなお前達ぃ〜(哀)】
五者五様に、隠されていた真のアリウス分派の教義に対して反応を示し始める。
そして奇跡的か必然的か、全員がカタルシスの方へ向かっていく。
「あの言葉に続きがあった、だと…知ろうとすることを捨ててしまったばかりに…!」
1人はこれまでの自身を悔いつつも戒めとして受け取り。
「教義の一説を切り取って、私達の行く先を操作していたってこと…?なるほど…」
1人はアリウス支配法の推察を行い。
「そうだったのか!私は知らず知らずに、本来の教義に近いものを導き出せていたんだ!」
1人は再認識を以て自身を肯定し。
「うわぁん!!じゃあ『マダム』は私達のこと何だと思って接してくれていたんでしょう!?辛いですよぉ!!苦しいですよぉ!!」
1人は相変わらずこれで以って良き我が道を行く、不思議なヒト科である。
そして最も強い反応を示したのは、意外や戒野ミサキであった。
とはいえこの5人の中で最も虚無と行動の無意味を盲信していた少女にとって、非常に良い動向である。
「は……?じゃあ、私達の教えられたこと、って…何………??こんな………ふざけるな…!」
「そうだ、それでいい。今お前の中に発火した怒りという感情を向ける先は、遠すぎる過去の一件に関した怒りの対象であるトリニティでも、まして根付いた憎悪感情を利用して怒りを仕向けられたゲヘナでもない。アリウスに本来根付いていた教義を歪め、自身の望む野望の為にキミ達を供物としてのみ見るかの『マダム』に向けるものだ」
男の肯定により、自我を再獲得する手筈が整った少女に臨界点が訪れる。
「…あのさ!!この感情どうすればいい!?私は今あのクソ女をアリウスから叩き出して、二度と私達と関われなくしてやりたいって思いが止まんないんだけど!!」
堰を切ったように行われた自身が望む行動の発信。戒野ミサキが、ついに果たしたヒトのあるべき振る舞いである。
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「私は手伝うよ、ミサキ。私たちは、いつまでも幻影の崖を登らされることを望まない。自らの脚で立っていることを否定させる道理はないからな」
当初より自己を取り戻している白洲アズサがまず呼応する。
「ミサキ、あなたも自らの意思で動く時が来たんだね。私もやるよ…私ももう、耐えるばかりのつもりはないからね」
自身の宿命から来る諦観を脱した秤アツコが続く。
「えへへ…もしこの反旗を折られてしまったら心が痛いでしょうねぇ、苦しいでしょうねぇ…でもそれを恐れて、何もしない方が苦しいですよね…!」
欲する傲慢さもあれど一つ強い信念の根付いた槌永ヒヨリも共鳴。
能動的決心を固めた4人が、錠前サオリの決断を待つ眼差しを向ける。
「……………………腹を括ろう。マダムの追放、私も私の意思で行うことにした。それとミサキには一つ…その怒りに飲まれて、冷静さは欠かないでくれ」
「言われなくても…!」
アリウススクワッドは有り得ぬと封じられていた『ベアトリーチェ追放への分岐』を、規定されていたタイミングより早く辿ることとなる訳だが。
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「マダムを追放って…本気で言っているんですか、あなた達は…!」