SLEEP COP ―のび太のハードボイルド・アンダーワールド― 作:電機羊
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
……ナイトメア(神成 貴成)が、これまでの経緯を話してくれた。
「……遡る事6年程前、MATSUSHIBA電機はSe-wash様と3体のAI・ソーシャルロボットを過去に送り込む事を計画しました。 1体目と2体目の間に10年、2体目と3体目の間を50年と異なる年代に送り込み、その運用データを会社に譲渡する条件でSe-wash様に協力したのです。
3つの筐体(きょうたい)はそれぞれ、
“SIRI(=シリ)”
“ALEXA(=アレクサ)”
“DOULA(=ドゥーラ)”
と呼ばれていました。
そして、
“SIRI” を送り込む相手には、嘘つきで詐欺師のどうしようもない孤児 “Steven Paul Jobs(スティーヴン・ポール・ジョブズ)”。
“ALEXA” には、キューバ移民の養子で心配性の “Jeffrey Preston Bezos(ジェフリー・プレストン・ベゾス)”。
そして “DOULA” は、実験の発案者であるSe-wash様の何の取り柄もない祖父 “Nob- ……若きあなたが選ばれました。
しかし、第一世代のソーシャルロボット達にはパラサイト属性があり、宿主の彼等に強い絆を生ませて相互依存させてしまう傾向がありました。
その絆は最初はいいのです。 スティーブはSIRIのチート道具のおかげで、コンピュータ業界の王と呼ばれるようになりました。 ……が、その後SIRIから一人立ちする計画がバレて、彼女の秘密暗器具の人工癌で死亡。
ジェフは小売店からスタートして、ベゾス家始まって以来の巨万の富を僅か一代にして築き上げました。もちろんALEXAがいなければ、こんな事は不可能です。 ――彼も独立しようとした結果、妻と別れ、会社のCEOの座をも奪われました。命があるだけALEXAの方がマシですが。
こんな事が起きたので、MATSUSHIBAはDOULAを過去に送り込む時に、その時代のトラブルにすぐに対応できる様にサポートセンターをそばに開設したのです」
「……それがカミナリさんの家か」
「はい。引退こそしましたが、長い間『多機能ソーシャルロボット:(AIマルチ生活支援機)』の『最終評価責任者』であった父が志願しました。ずっとあなたがまっすぐに育っていくか、見守っていたのですよ」
俺は目尻が熱くなった。 どうりで町中で騒ぎを起こしても翌日には元通りになってたし、道具を学校で無くしても数日間ヒヤヒヤしたが結局何も起こらなかった。
ありがとう、神成さん。盆栽ばっかり壊してごめんなさい。
「……しかし予想外の事態が起きました。数年後に『昔年永年私財法(せきねんえいねんしざいほう)』ができたのです。 ……これは我々の元の歴史にはなかった出来事です。 ……そしてサポートセンターは撤収、DOULAも撤退させました。ここまでが経――」
「! ちょっと待て。ドラミ……D-ramはどうなった? いつ出てくるんだ?」
「? D-ram…なんの事です? …ノビタさん」
「おじいちゃんそれはなんだい? …武器?」
――!?
ついさっき話し……
……そうか。
――DOULAの仕業か。
なるほど、さっきのスパイ蝿で2人の座標を捉えたか。 Cloudの記憶を書き換えて、CO2通信で彼らの記憶をいじっているんだな。
早めに蝿を潰したので、俺の座標までは無理だったって訳か。
「おいAsh!!神成も、しっかりしろ!!」
「え!? おじいちゃんじゃない! 何でここにいるの!?」
くそっ。同期を切らないと。 脳がツルツルになるまで記憶を消すつもりか。
俺は駄目元で空(くう)に叫んだ。
「おい!! 久しぶりだなぁ! 兄弟!! お前の狙いは記憶を取り戻したこの俺だろ!! コイツらは無視して、俺と1対1で対決しろ!!」
……返事がない。
くそ、ダメか。
「おい! 聞いてるんだろ!? ドゥーラ!! まったく、お前……この名前嫌いだったよな? 女みたいだって。
だから俺がいつも……之助や……之進、……衛門なんて付けて、男っぽく呼んでやってたんだよな?
でもコソコソするなんて、やっぱりお前は女なんだな!!」
……GACHA.
――ある筈がない場所に立つ、そのドアから “それ” は入って来た。
「……その発言はコンプライアンス刑法第2条違反ですよ。 しかもコソコソ何かやるのは、寝てばかりの間抜けな男の子の方ではなかったですかな?」
「……Mr. NOBYTA。」
次回、第11章『D-E-M-O-N -悪魔-』。
(※毎日20時頃 更新予定)