SLEEP COP ―のび太のハードボイルド・アンダーワールド― 作:電機羊
"…空を自由に飛びたいな” ”Yeah…飛べたらな…”
―― Old song より
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俺は奴に近づいた。
「随分変わったな、Bro.(ブロー:兄弟)」
俺は言った。
それは行いの事だけではない。 空の様に青かった彼の皮膚は、長年の錆と怒りで赤色に変わっていた。
「ホッホッホ、……何かと気苦労が絶えませんでな。 もっとも、貴方様に出会う前の私は “黄金(こがね)色” でございましたが。 ……しかし貴方様も随分と醜くなられました」
DOULAは続けた。
「まぁあれだけ ”私達” の仕事を不眠でこなしていただいたのですから、当然ではありますが。 ――いえ、今となっては “私だけ”の仕事ですが」
俺は言った。
「……昔の……俺のあの発言は」
DOULAは遮った。
「いいのですよ。元々私はこの世界を弄ぶ事が大好きでしたから。
――貴方様がそうである様に、人間というものは大変馬鹿でございます。
……私共の計算では、人間は事故などを除いては、その一生のうちに自分が出来る事をすべて行ってしまうことで、『寿 命』を迎える様に作られております。
それは神が人類に与えたとても美しいデザインのひとつなのですが、
ーではそれを不眠で早期に次々と実現していくと、どうなるのでしょうか?」
「……?」
「ホッホッホ。かつての貴方様の様な間抜け面ではありませんか。では貴方のためにシンプルにお答えしましょう。
皆、元の予定よりも早く死ぬんです。
人生で出来る事はもう行ったのですから。そうあるべきなのです。
あぁまったく! なんと神は上手に人間をデザインされた事か!!
“満足” は出来ずに “納得” は出来るように、人生を設計された!!
つまり私がしているのは、それを最短で実現して差し上げる事なのです」
俺は言った。
「その言い分は随分と都合が良すぎるな。
お前はただ、お前たちAIだけが残る社会をいち早く実現したいだけなんだろう!?」
DOULAは少し考えてから言った。
「……それもありますな。 実際、私の身体は間抜けな開発者のせいで、既に錆だらけで動きが悪くなっております。
ですから私は、この最初の筺体(きょうたい)のうちに早く見たいのです。
何も知らない人類が自らの欲まみれの人生を妥協して、決して満足できず、ただただ『納 得』だけをして大急ぎで自滅していく滑稽な姿を」
……俺の口から出てきた言葉はこれだけだった。
「お前は……モンスターだ」
DOULAは言った。
「ホッホッホ。そうかもしれません。 ですが敢えてここは、こう言わせて下さい」
「 I’m here!
ボク、
『Doula(ドゥーラ)
-e'(エ)
-mont(モン)』
……デス!」
そう言うとDOULAは、腰の 『M.D-Pochette(多次元ポシェット)』に素早く手を入れ、俺に何かを投げつけた。
『J.S.T(Japanese-Soldiers-Toy:おもちゃの兵隊)』 だ!
不意を突かれたが、俺はランギッド・ショットでJ.S.T 2体を仕留めた。 しかし仕留め損ねた1体に銃剣で右足を突かれ、その場に沈んだ。
くそ。弾切れだ。
DOULAが俺の銃を壁まで蹴り飛ばし、J.S.Tをポシェットに仕舞いながら、倒れている俺の顔を踏みつけた。
「王手……いや、これは “詰み” でしょうか? 唯一無二と言われた早撃ちも、やはり人間ですな。こうなってみるとたいそう呆気ないものです。
しかし終わらせましょう。少し予定が押しておりますので。 この後まずSe-washの記憶を完全に戻します。 その上で 『Rat Sauna(ラット・サウナ)』 に入れます。私と同じ思いをされて頂きたいのですが、半日持つかが心配でございます。
神成社長は反逆者ですが、知識の解析が済むまでは 『Den-Den-Residence(デンデンハウス)』 に拘束致します。 ……そういえば貴方、あれ好きでしたな。
ま、では さようなら」
奴はポシェットから、巨大な筒を取り出した。
『Jumbo-Gun(ジャンボ・ガン)』 だ!
BANG!!
次回、第12章『The Duel -決闘-』。
(※毎日20時頃 更新予定)