SLEEP COP ―のび太のハードボイルド・アンダーワールド―   作:電機羊

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第5章『Enemy of Enemy -敵の敵-』。

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ーー「コラァ! また授業中寝おって!!」

 

今日もまた先生に廊下に立たされた。

 

ーー「ヘヘッ、『のび太』の特技は昼寝ぐらいってか!?」

 

友達にもいつもバカにされる。

 

ーー「うひゃーまた遅刻だァ」

 

……そうなんだ。僕はいっつもぼうっとして何も取り柄がないんだ。 寝ている時がいちばん幸せなんだ。

 

2年程前まで、未来から来た『多機能ソーシャルロボット』に色々手伝ってもらってたときがあって、あの時は楽しかったな。なんでも上手くいってたし。

 

でも、あいつが帰ってから、結局元の自分に戻っちゃった。 やっぱり僕の頑張りは、ほとんどアイツのくれたチート道具のおかげだったんだ。

 

ガッカリしたし、楽しくもなくなって、ここしばらく頭の中がカラッポになった気分がずっと続いてるんだ。 今更言ってもしょうがないけど、もっとコソコソやってれば良かったんだ。

 

僕の未来の孫は天才で、バカなおじいちゃんの僕を救うために『多機能ボット』を過去の僕に送ってくれたんだけど、そいつは初めて見るような素敵なガジェットで僕を応援してくれたんだ。

 

そしたら未来が物凄く変化して、借金地獄で自殺寸前オワコンの僕の未来を、初恋の子と結婚するっていうハッピーな未来に変えてくれたんだ。

 

これが未来でも話題になって、僕の孫はすっかり有名人になった。 そしてそのインフルエンサーの真似する人間がどんどん出てきて、未来が大きく変わりはじめたんだよ。

 

親の仕事を変えに行く子、いじめを止めに行く子、ウイルスの研究所を作らないようにしに行く人、東京オリンピックがない未来に変える人……。

 

僕1人が変わるんじゃなくて、何百万人の人が勝手に過去を動かして未来を変えたら……その分当然、悪い未来になる人達もいるよね。 そりゃそうだよね。いい事ばかりの世界なんてないのは僕にもわかるし、過去を変えに行けない人が「ズルい!」って言うのもわかるよ。

 

そして2116年8月7日(偶然、僕の誕生日だ)。

 

『昔年永年私財法(せきねんえいねんしざいほう)』 通称:KONDEN(Keep Of "Nothing Destroy, Erase Nothing" ‐そのままに。消すな壊すな)

 

っていう法律が出来たんだ(孫が逮捕されちゃったから良く覚えてる)。

 

“日本人の過去は自分達一人一人のものじゃなくて、日本国のもの”

 

なんだって。 だからこれからは、勝手に過去を変えちゃいけないんだ。

 

それで僕の孫は収容所送りになったし、多機能ソーシャルロボットを過去に送り込んでいた人のボットは全部国が没収、過去で逃げ回っている残りのボットは時空パトロールが全部破壊した。

 

僕の多機能ボットはご近所さんへの挨拶と我が孫へのお土産を買って、道具をほとんど全部残さずそそくさと帰って行った。 一度は国に仕えてみたかったんだって。道具はよく知らないけどリースとかなんとか、借りものだから置いていけないって言われた。

 

……こうして僕はさえないバカに戻った。 からかわれるし、なんにも面白い事はないからただ眠るんだ。よく寝るから夢を操る事もちょっと上手くなって、それがちょっと楽しいけどね。 僕は射的だけは上手いんだけど、夢の中ではそれも活かせるんだ。バン! バン! って。

 

現実でもこうだったらいいなぁ。

 

勉強? 机に向かうとなぜか眠くなるんだ……やっぱり僕ってダメなんだな……。

 

そうだ!

 

多機能ボットがどうしても人生上手くいかない時にこれを使って、ってリースアップ? よくわからないけど残していった秘密ドリンクが1つあったな。 賞味期限も近いし、のんでみようか?

 

『発声したことの逆が発生する』

 

だって。何言ってるのかよくわからないけど、どうせいつものただのチート道具だろう? 願いが叶うってことかな?

 

じゃあ……そうだな……。

 

「ずっと寝ていられる世の中になりますように!!」

 

 

※ ※ ※ ※ ※

――2121年現在

 

うぅっ……

 

『夢』……なのか? 頭がズキズキ痛む……が身体が非常に軽い。フワフワする。

 

あぁ……これが『寝起き』というヤツか。何年も忘れていたな

 

しかし嫌な『夢』だった。最近アマフリ(動画サービス)であんなドラマを観たのだろうか?

 

はっ!?

 

俺は今何処にいる?

 

確かナイトメアを護送中に……そう……襲われたな。そして……眠らされたのか。 という事は此処が奴らの潜伏先か。

 

「起きたかい? 刑事さん」

 

薄暗がりに、天井近くの四角い窓から

白い月明かりが差し込んでいる。

 

クソッ、顔をもっとよく見たい。

 

 

「おいナイトメア! こんな事をしても何も変わらないし、自分の不利になるだけだぞ!」

 

俺は力一杯の熱量で言い放った。

 

 

「……それは違うよ。……全く違う。 まず初めに僕はナイトメアじゃない。彼にはもう他の仕事で出掛けてもらっている。 ……そして貴方に近づくには、少々危険を冒す必要があった」

 

ナイト……ではない?

いったい……。

 

 

「色々聞きたい事があるようだね。僕が知っている事はすべて教えてあげよう。しかし貴方にもおおいに手伝ってもらう」

 

 

No.2のナイトメアに仕事をさせる事の出来る人間っていうのは、つまり……。

 

 

「そう、僕がこの “SLEEP-TIGHT” のリーダーだよ」

 

 

月明かりが、その男の顔を照らした。

 

 

「久しぶりだね

 

 

 

 

 

……おじいちゃん。」

 

 




次回、第6章『Memory -記憶-』。

(※毎日20時頃 更新予定)
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