SLEEP COP ―のび太のハードボイルド・アンダーワールド― 作:電機羊
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……夕方になると、私のご主人様が慌ただしく帰宅されます。 様々な理由で大騒ぎして、私の元にやって来られます。 大抵は金の無心なのですが、自分を虐めた相手への報復の場合も多うございました。
そんな日々が続きましたが、ご主人様が私をロボット呼ばわりする事は一切ありませんでした。 いつも主従関係ではなく、私を『兄弟(とも)』と呼び、隣に置いてくださいました。
――そんな貴方様の素晴らしい未来を私はお約束する、と毎晩押入れで誓ったものです。
私は貴方様を栄光ある未来へと導きます。 それが私が働いている理由です。 いずれ廃棄されるまでの私の務めです。
……と信じておりました。
しかし貴方様はいつもそうであられた様に…… また今回も途中で投げ出されるのですか?
貴方様が望み、私が創造した世界で、成功者になれたのに。
何故? 何故ゆえ貴方様は、私のする事を止めようとなさるのですか?
まぁ……そうでしたな。 ……いつもそうでしたな。
私の提案をからかい、素晴らしい道具を冗談の様に斜め上な感じに使って仕舞われる。
あぁ貴方様は変わらない。 やはり貴方様は、悪童Se-Washの祖父ですね。
貴方様は彼が私にした事と同じ事をなさるおつもりですか? それなら私も本気でお相手いたします。
決着をつけましょう。
ーー次に眠るのは、貴方様の番です。
※ ※ ※ ※ ※
Zzzzzzz...
「……ぃちゃん。……じぃちゃん!」
いつの間にか寝ていた。
「まったく! 仲間になった途端に昼寝って! これから忙しくなるんだよ。おじいちゃん」
「Ash、俺はー、」
Se-washが言葉を遮った。
「なにそれ?『Ash(アッシュ)』だって?勝手に変な名前で呼ばないで。」
…いちいち突っかかるやつだ。
ーその時俺は、瞬時にかすかな 空気の“そよぎ” を感じていたのだった。
――そして孫の方を向かずに言った。
「Ash、……いるぞ。」
Se-washは一瞬固まった後、納得したかのように、腕時計のカメラを彼の背後にある
Co-IKEAのコーヒーテーブルの下に向けた後、小声で俺に言った。
「……見つけた。振り向かないで」
ハエの様な小さな虫が、床にとまっているのが見えた。
「さぁ、おじいちゃん」
Se-washは後ろ向きに、そっと 『Air-gun:liquid(空気砲:ジェルタイプ)』 を右手に一滴差してくれた。
そのまま俺は脇から親指を突き出し、
バンッ。
振り返ることなく、スパイ蝿を撃ち抜いた。
「ヒュー! 益々腕前が上がってるね。じいちゃん。昔からこれだけは上手かった! 畳下の宇宙人助けた時も……」
俺は言葉を遮った。
「その話はやめてくれ。あの後随分 『Giant(ジャイアント)』 にからかわれた」
ハエの正体は小さな観測艇だった。 技術自体は大したことはないが、
チート道具 『Flash-to-small(スモールライト)』 でハエサイズに縮んでいたのだ。
「仲間になった事気付かれたね。場所もバレたし、どうする? おじいちゃん」
あらゆる未来の兵器を持っている相手とは、マトモにやりあえる筈がない。
――考えろ。
……そうだ。
「昔の手だ。Ash、害獣駆除センターでネズ……」
「Rat(ラット)? もう効果ないよ。奴は克服したんだ。 未来に引き上げてきたその日に、僕の目的を達成しなかった罰で 『Rat Sauna(ラット・サウナ)』 に閉じ込めたんだけど(笑)。”蠱毒の壺”のクマネズミ版だね。
……あれは傑作だったよ。あいつはラット達の体温で高温になった部屋から、なんとサビだらけになってわずか半日でネズミを咥えて這い出てきたんだ(笑)。だから一発蹴飛ばして許してやった。
もういいぞ、勝手に何処へでも行ってしまえってね。」
「『機械相手に何やってんだ?』 って後から心底反省したもんだよ。」
――時々、自分が何を信じていいのかわからなくなる。 現在知る限り唯一の血縁が、このサイコパスなのだ。
「……では プランβ だな。こちらにも強力な味方を付けよう」
俺は甦った記憶に一蓮托生する事にした。
「奴の妹はどこだ?」
次回、第8章『D-ram -ディーラム-』。
(※毎日20時頃 更新予定)