野球要素のある乙女ゲーの悪役令嬢に転生したらスラッガーとしての才能開花させちゃいました(仮) 作:ウホウホ長打マン
悪役令嬢に転生するというのが流行ったが、なんと自分の身にも降りかかるとは人生わからないものだ。自分でもそんな妄想をしたことはあるしあってもいいななんて思っていた
うろ覚えのカオスな野球乙女ゲームでなければ
生前、私はごく普通の一般家庭で育ち、生来の運動能力とコミュ力の低さと太めの体型からいじめられはしないもののクラスでは3軍扱い。それでもそれなりにゲームや漫画を楽しんだり、それを共有できる友達も居た。それはそれとして、心機一転大学デビューに向けてのダイエットの一環としてジョギングをしていたら、断食による低血糖がたたってよろけて道路の縁石に頭をぶつけてしまった。意識が薄れゆく中で、死ぬのか、もっとやりたいことあるし、お腹が空いてしょうがないし来世はもっと食べたいなと薄れゆく意識の中で思っていると、気づいたら見知らぬ美女に抱かれていた。
オタクとしてそういう妄想もしていたので転生ではと思ったが、はたしてそのとおりだった。
私が再び生まれ与えられた名前はクリーナ・スラッガー。スラッガー侯爵家の長女として生まれた。どこかで聞いたことある名前だと思いつつとりあえず無視することにした。幸いにもスラッガー家は裕福であり、中世ヨーロッパ風な世界にも関わらず毎日美味しいご飯が食べられとっても幸せだった。
ある日、父がクリーナにも父さんの仕事を見せてあげようと言われ、書類仕事をする書斎ならよく行くのになんて思っていたら馬車に揺られついた先は王都近郊の野球場だった。父は球場かチームのオーナーなのかと思っていたら、母に連れられ席に座らされた。何の変哲もない応援席、VIP待遇なんてない、じゃあオーナーという線はないかと考えていたら魔法で拡声されたウグイス嬢の声が球場内に響き渡った。そして、父はファーストとして紹介された。
その試合父は4打数3安打1ホームラン、偶然にもホームランボールは私がキャッチした。
帰りの馬車で、とうとう私は今までに抱いていた既視感の正体に気づいた。
この世界は乙女ゲームの世界である。私が亡くなる数週間前プレイした野球要素のある中世ヨーロッパ風の異世界が舞台の乙女ゲームだ。タイトルは、覚えていない。
ストーリーは、貧しい生まれの主人公が多彩な変化球と制球力を武器に商人の運営する独立リーグで齢12才から活躍、そして王国立の貴族が通う学院からの誘いを受け入学、国の運営するプロリーグからオファーされるべく野球に励んだり、イケメン令息球児たちと恋愛したりするという感じだ。この世界ではとにかく野球が重視されていて、多くの貴族がたしなみ、国家間の紛争も野球の試合で解決される。
そんな中でクリーナ・スラッガーは、攻略対象の一人、王太子のイマキュレート・ベイスの婚約者で、主人公を扱いてくる。また、凄まじいパワーを実現する身体強化魔法の持ち主で周りにもてはやされ、増長しており、入学直後の主人公に自信満々で勝負を挑むも全て三振に打ち取られてしまう。そしてその後も嫌がらせを続けるが断罪され終身アオダモ伐採刑に処されてしまう。豪快な三振っぷりと、物語の途中からほとんどのキャラが身体強化を使いこなしているという事実からネットでかなりネタにされていた記憶がある。要は序盤から出てくる噛ませ犬だ。
もちろん断罪はされたくないが、ストーリーの細かいところを覚えていないので、とりあえず現実逃避もかねてひたすら美食を食べ尽くすことにした。両親は甘いのでそのくらいの我儘は許してくれた。しかし、少し太り始めたのを見かねた父に野球の練習を始めさせられた。走り込みと素振りと自重トレーニングをひたすら繰り返す。かなりきついしやめたいと何度も思ったし言った。しかし、辞める前に父に強制されて貴族の子供の野球大会に出て、自分の球が遠くの観客席に吸い込まれていく様子を見て、なぜだかやめたくないと思ってしまった。それから、16歳‐王立学院に入学する年齢‐になるまでひたすら食べてトレーニングして食べてトレーニングしてを繰り返し続けた。その間、王太子殿下との婚約が結ばれたり、年代別代表として国際試合に出たり色々あった。そして今日、私は学院の入学式を迎えた。学長の話の間も野球のことしか考えられない。次はどんな相手と勝負できるのだろう。主人公の魔球を今の私に打てるのだろうか。
そして、入学式も終わり寮に歩いていると誰かにぶつかられた。
「申し訳ございません」「ごめんなさい」同時に言って相手と顔を合わせると、どこか見覚えのある顔だ。
「私、新入生のマジカ・ピッチです。先程は不注意で大変申し訳ございません」
「いえ、私も不注意でしたわ、お互い様よ。同じ新入生のクリーナ・スラッガーよ、以後お見知り置きを」えぇー!主人公じゃん、主人公様じゃないですか
お互いの球歴について話しつつ寮に向かった、部屋の前についても一緒なので部屋を聞いてみるとなんと同室だった。野球以外でも退屈しない学校生活になりそうだ。