アシュア短編集_遺書   作:イエローケーキ兵器設計局

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 私は過去に嫌っていた者にいつの間にかなってしまっていた。今の私を貴方には見られたくない。私は貴方の前から姿を消します、さようなら。愛していました、代理人閣下。


4-7 自己破壊のロジック
4.親愛なる代理人閣下へ


 貴方は覚えていますか。私が貴方に忠誠を誓い、貴方の剣となり、盾となり、そして伴侶となって愛し合ったことを。子供を望めない身体であっても私は貴方に愛されたかった。そして貴方は私を愛し、満たしてくれた。私はとても満たされていた。貴方と交わす口付けは幾多も重ねた勝利の喜びよりも熱く、貴方と交わす抱擁は女王陛下との謁見よりも温かく、貴方に満たされていた私はあの日を過ごした誰よりも幸せだった。貴方が養子を連れてきた日、

私は嬉しかった。あの子は貴方と私の愛の結晶だと思った。誓ってもいい、あの子はコウノトリが連れてきた私の子。貴方が種を撒いて、私がお腹を痛めて産んだ子。そして私が殺した子。ヒトを愛せない、愛してはいけないと知ったのはあの子が病院で吐いたとき。貴方は私を憎むべきだった。いけないことをした子供には然るべき罰があって当然である。あの子も私もそうあるべきだった。けれど貴方はあの子の言い分も私の言い分も聞いてあの子だけを叱った。勿論、貴方が悪い訳じゃない。手を出したのは貴方でもあの子でもなく私。私に責任がある。絞首刑でも銃殺刑でも市中引き回しの上の八つ裂きでも私は不満を漏らさず執行を受け入れていただろう。結果的にあの子は私が殺してしまった。ヒトとしてはまだ生きている。だけれどもう関係性は直せない。私は、私は、子供の頭に拳を振り下ろしたとき、私は地獄に堕ちるんだと思った。貴方の頭を殴打した時、それは確定した。脳震盪を起こした貴方を私は愛おしく思った。ふらついて、吐いて、私が怖くなって逃げようとして、どんどん壊れていく貴方。追いかけた私は壊れてしまっていた。幸せすぎたから?わからない。間違いなく言えるのは私は愛することではなく殺すことに自己最適化してしまっていた。そんなつもりはなかったなんて事を抜かすつもりはない。さようなら、私。さようなら、貴方を愛したかった私。さようなら、嫌いなDOLLSになってしまった私。

 


 口述筆記器に以上の言葉を吹き込んだDOLLSは自らを家族殺しの殺人鬼と嗤い、ひとしきり泣き、そして夫と子の頭に振り下ろした拳のように自ら情報分解ガス発生装置のスイッチを押した。その間、彼女は笑っていた。自らの魂が夫と子の下に辿り着かないと分かっていても。

 彼女の残り滓は代理人閣下とその養子の墓に改葬された。この場合の残滓とは骨や髪などではなく情報構成体の入れ物や溶け残った衣服、いわゆる"指輪"等である。




 テーマ:介護疲れ,ヒトとDOLLSの違い,ヒトを愛せない愛してはいけない人間及びDOLLS,八つ当たり,救えないヒト
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