アシュア短編集_遺書   作:イエローケーキ兵器設計局

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 私は怖いのです。貴方を失うことが。


4.1 親愛なる代理人へ(規制版)

 とても酷く、見ていて心地の良くないそう……リアルな夢を見た。私が代理人も、養子のプリマスちゃんも殺す夢。最後にはガス室に自分から入って消える夢だった。

「貴方、プリマス……」

 布団の中でプリマスも、代理人も抱きしめて眠るとそういった悪夢も消えやすい、最近学んだことの一つ。

「センチュリオン……プリマス……」

「はい、ここに」

「Zzz」

「あら、寝言でしたか……ふふっ」

 2人の頭を順番に撫でると月明かりに照らされた顔が優しく微笑んだ。

 

 ああ、幸せとはこういうことでもあるんだ。

 


 

「おはよう、センチュリオン……センチュリオン?どうしたんだ?その顔」

「顔?」

「何か深刻に思い詰めているみたいだが……私に話してみてくれ」

「……いや、特には無いが」

「そうか?」

「ああ」

 今はまだこの記憶に気付かれたくない。

 

「今日の作戦は?」

「私といちゃつく、以上」

「ふざけているのか?と言いたいところだが……そうだな、今までずっと働き詰めだったものな」

「プリマスは小学校に行ってるよだから……な?良いだろう?」

 その言葉に私は言葉では返事をせず、唇同士の口付けで返す。愛を交わし、(もつ)れ、(もつ)れ、(ほぐ)れ、交わる。ふと学院の生物の授業で教科書に載っていた図を思い出す。ナメクジは交尾する際に精嚢を出して互いに身体ごと絡ませるのだという。今の私達は精嚢こそないものの、身体が絡まって溶け合いそうなくらいになっているのだろうか。

 


 

「……はっ!……これも……夢?痛っ……」

 夕暮れの中、部屋のベッドで目が覚める。幸せな夢だった。私は夢の中で夢を見ていたのだろうか。身体を起こすと身体中が痛い。腕を見れば包帯で……ぐるぐる巻き……私の手は?どこに?右腕も手が無い……嘘っ……。脚は……脚はあった。右脚もある。包帯に巻かれていても存在していた。

 とりあえずベッドから降りる。手が無いだけで腕はちゃんと機能する。だからそう……ゆっくりなら歩いても大丈夫だった。

「貴方……プリマス……」

 部屋は何も変わってない。私の手だけが無い。3人で撮った写真。五体満足の私と、貴方と、小さな愛娘。子供を残せない私の愛娘。可愛い可愛い私の……。

「センチュリオン……」

「貴方……こ、来ないで!」

 愛しい人の声に振り返ると代理人の服を着た腐肉の塊が蠢いていた。

「センチュリオン……」

「お母さん……」

「プリマス、おいで!」

 蠢く腐肉の塊の後ろに愛娘がしがみついていた。私がおかしいのか?

「お母さん、大丈夫?」

 大丈夫よ……大丈夫、私は大丈夫。

「……貴方、貴方なの?」

「落ち着いて聞いてくれ、私は君の夫だ」

 腐肉の塊が喋る……頭がおかしくなりそうだ。

 


 

 気が付くと私は森に立っていた。装着したARMSは好調で多少、泥濘に足を取られてはいるけれど今すぐにでも動けそうだ。考えてみると……そう、あれも夢なの……か。

ケントゥリオ(百人隊長)、動けるか?」

「庭師、カッコつけても駄目ですよ。センチュリオンは私達を既に知っているはずですから」

 横には見知らぬDOLLSが左右に立っていた。どちらもARMSには翼が生えていていかにも航空型DOLLSであることが分かる。片方は尻尾が生えていて色白い。もう片方はなぜか園芸用のヘッジトリマーを持っていた。

「動けるわ」

「それは良い報告だ。でなければ我々が潜り込んだ理由が無くなる」

「潜り込む?」

「こら、庭師……ごめんね、センチュリオン重巡航戦車ちゃん」

 センチュリオン重巡航戦車ちゃん……?

「ふざけないで!」

「おー、おー、そんなにカリカリすると代理人君に会うのが遠くなるよ」

「代理人……君……」

「そうさね、いっちょ説明を……おい!」

「貴方!」

 泥濘に捕まっていた脚が抜ける。走れる。私は走れるんだ。

「待て!そっちは」

 


 

 自分の脚で立っていた。海の上、鉄とコンクリートでできた要塞の屋上。まるで巨人の頭の上だった。

「綺麗……」

 ここが戦争の為に備えられた施設なのは何も知らない私でも分かった。何故なのかはわからない、きっと私が戦争の為に備えられた兵器だからだろうか。

「センチュ……いや、振り向くな、前を向いていてくれ」

「……貴方」

「絶対に振り向くな、前を向いていてくれ、頼む、私の顔を見るな」

「貴方」

「そうだ……私の顔を見ずに目を覚ますんだ」

「貴方、私は……」

 振り向いた。誰も居なかった。それもそのはず、ここには誰も居なかったのだから。

「私は言ったはずだ、振り向かないでくれ、と」

 背後から声がする。

「怖いのか?」

「……本当の自分を見つめることほど怖いものはない」

 過去に私はこう伝えた。私に取って代わる強いDOLLSが現れたらどうしよう、と不安だったと。そして代理人はそれでも私を選んでくれる、そう言ってくれた。

「だが……」

「すまない……今の……今は救えない……すまない」

「……良いのよ、代理人。わかってるわ」

 風に吹かれて私は屋上から落ちていった。

 


 

 雨の降る夜。路面がツルツル滑って困った。長かった作戦がようやく終わって帰ってこれた。何故か水音とすごく静かな喘ぎ声、「来ちゃうから止めて」等といった抵抗になってない抵抗の声が聴こえる。

「ただい……ま?」

(以下、発禁版に収録)

 


 

 傷心の私は今度もまた、森の中に居た。違うのは足元は泥濘ではなく絡みつくつる植物の塊。罠だ。

 

「センチュリオン、プリマスは君のことを忘れてしまったみたいだ」

「嘘だ」

「本当さ」

「嘘よっ!」

「信じてくれなくても良い」

 

 私の脚はもう動かない。つるに取られてしまった。逃げようがない。怖い。後ろから誰かに羽交い締めにされる。

 

「離して!いやぁ!」

「残念だ」

 首筋に歯を立てられる。とても痛い。それ以上に裏切られた、ということが……。

「いやぁぁぁぁ!!」

(以下、発禁版に収録)

 


 

 心も身体もボロボロになった私は三度、部屋にいた。夕暮れに染まる部屋。私が初めてを喪い、初めてを得た場所。

「手も足も無い……うぅ……」

 この地獄はいつ終わるのだろうか。いっそのことガス室に送ってくれ。私を終わらせてくれ。これ以上は……。

「愛している」

「お母さん」

「来ないで!」




 う……うぅ……うぅ……たすけて……たす……けて……あな……た……



規制版:代理人による捕食を省略+色欲の描写を省略
発禁版:代理人、プリマスによるプリマス及びセンチュリオンの捕食+プリマス(養子)による代理人の逆レ
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