アシュア短編集_遺書   作:イエローケーキ兵器設計局

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 さようなら、プリマス、タラン。お父さんをよろしくね。プリマスもタランも強い子になりましたよ、貴方。


7.センチュリオンの遺言

 長い長い夢を見ていた。私が生まれ、訓練場に立ち、戦場に立ち、代理人、貴方に出会い、私から迫り、そして一緒になった。プリマスを引き取り、赤色十月の友人から貴方に認知していない実子がいる事を知った。私は引き取れるなら引き取ろうと思った。貴方の子として。

 長い長い悪夢を見ていた。私が古城に迷い込み、"女王"に捕まり、家族を壊され、娘たちが苦しむ悪夢。娘達と砲火を交える夢。娘達を殺してしまう夢。

 

「……」

 私が長く長く、そして短かった夢から醒めたとき、私の娘達は意識を失っていた。ARMSは既に錆び、動かず……"時間"に飲み込まれていたことが私にもわかった。2人を傷つけないように丁寧に接続解除して、今にも崩れそうな広間を後にする。両脇に抱えた2人の鼓動はまだ続いている。夢の中で生贄達の歩いた道を、今の私が逆戻りする。彼彼女達は石橋や船着場からこのエレベーターを登り、この広間に来た。そして道は変わってしまっても本質は変わらない。

「Fleeting memories rise...」

 貴方と歌ったあの歌を口ずさむ。きっとこの足を止めてしまうから。

「From the shadows of my mind...」

 エレベーターを降りる。後ろで大きな音が立つ、広間が遂に役目を終えて崩壊したらしい。きっと私は女王の次世代の器になってしまったのだろう……中途半端に。

 

 後ろで崩壊を続ける遺跡を歩き、地下の船着場にようやく辿り着いた。数えてはいないが歌はもう2,3周はしてしまっただろう。

「Slaves to our destiny...」

 プリマスとタランを小舟に乗せる。この舟が無事にCityに辿り着くことを願って。

「I recall a melody...」

 さようなら、プリマス、タラン。お父さんをよろしくね。プリマスもタランも強い子になりましたよ、貴方。

「Sing "Nonomori", seasons lit with gold...」

 遠ざかっていく小舟を見送る。

「Say "Nonomori", legends yet untold...」

 私が去ると、きっとこの船着き場も崩壊に巻き込まれるだろう。だから小舟が見えなくなるまでここに居よう。さようなら、私の娘達よ。

「You were there...」

 河の流れは遅く、小舟はゆったりと離れていく。でも、それで良い。

「Happiness follows sorrow.」

 見えなくなったので引き返す。私の死に場所はここだ。

「Only believing in tomorrow.」

 元気でね……さようなら……。

 

 船着き場に落ちていた剣を拾う。きっと過去にここへ来た誰かが忘れていったのだろう。そしてその刃先を指に沿わせる。痛い。確かに切れ味は落ちていない。自分の腹に向ける。一思いに振り下ろした反動でよろめき、河に落ちた。女王よ、貴様の望んだ魂の器など、もう無い。あぁ……もう少し……もう少し時間があったなら2人の頭を撫でてあげられただろうか……。

 


 朝の光に顔を、全身を照らされて、地下の外に出たことを知る。波の音がする、どうやらここは海岸らしい。ということは……私は死ぬことができずに流れ着いたのだろう。私を覗く影が日傘になった。

「センチュリオン、おかえり」

 ゆっくりと目を開けると会いたかった顔が3つ。太陽を背に私を覗き込んでいた。

 

「〜♪」

 あの女王の気配は"心"の中にも、"外"にも、もう無い。ここにあるのは目の前に広がる海、寄りかかっても受け入れてくれる貴方の肩、そしてスイカを食べる娘達の笑い声。あぁ……帰ってこれたんだ。




補足説明(前回の時点で書けなかったことも含め)
 古城は接近するまで屈折によってただの巨木の森にしか見えない霧に包まれており、接近すると初めて現れる。従って、付近を飛行するにはかなり高度な技術(地形追従等)が必要であり、付近では無線の通信が不可能(強力なジャミングが行われている)。チーフテンとタランの接近段階では渓谷の出現はしていなかったが、門を開いたことにより"女王"によって渓谷が生成され、滝と地底湖に光が差すようになった。地底湖はCity内部の地底湖に川として繋がっており、小舟程度であれば一方的に通過が可能。これは"女王"がCityに興味を持っていたからである。

女王
:霧の城の主。顔の青白い女。魔女。PS2のゲーム"ICO"の女王……に似た何か。センチュリオンを依り代とし、その身体を乗っ取ってCityの支配を目指した…………がセンチュリオンとその娘達が強過ぎた為、中途半端にセンチュリオンを支配するだけで終わった。さらに、本体が死亡した状態で器であったセンチュリオンが船着き場で自刃したことにより行き場を失い、消滅した。

センチュリオン
:霧の城を引き継がなかった者。別名、A41重巡航戦車。女王によって器として見出され、無理やり生かされていた。生贄になったDOLLSや人間達と夢の中で会話する事により一部を味方に引き入れる事に成功。チーフテンMk.11やSU-152のARMSを回収には彼彼女達の尽力が不可欠であった。女王が倒された事によって動けるようになり、娘達を避難させる事ができた。しかし、自らのなかに女王がいる事を自覚していた為、自刃する事を選択。結果的に女王を倒しつつ、自らも家族のもとに帰ることができた。ちなみに夫とは"ICO"を何周かしていた。
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