アシュア短編集_遺書   作:イエローケーキ兵器設計局

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 私は貴方を愛しています。貴方も私を愛していましたか?


8 快楽主義者達の遺書
8.A-20Gの遺書


 戦闘狂と言われると少し困惑してしまう。私は確かに戦うことが好きだが、だからといって戦う事以外を置いてきた訳では無い。事実、代理人はその点をよく理解して私を運用してくれていたと思う。ただ、だからといって……私を置いて先に逝くのは……。

 

 医師に告げられた。彼は植物状態でもう起きる可能性は非常に低いか、もしくは無い……と。

 

 彼を殺したのは一般市民に偽装した反整備会勢力だった。

「へっ……ざまあみろってんだ。あの連中、いやにお高く留まりやがって、でもその方が殺しがいがあるってもんだ"ろう"な」

 私は、新聞を読みながら歩くこの男の後ろをつけていた。

「言いたいことはそれだけか?」

「……女ァ?一体どうしたんだこんなところで」

 下町のスラムに偽装した……いや、スラムそのものが反整備会勢力のアジトだった。

「言いたいことはそれだけ、か?」

 薄ら汚い笑みを浮かべケタケタ笑うこの薄汚れた男はおそらく実行役だろう。

「ははぁ……お前は俺に泣かされに来たんだな、さてはペッ、ぐはっ……」

「アジトから味方から全て情報を吐け、痴れ者」

 人間より力で勝るDOLLSらしく、男の胸倉を掴み……銃剣を喉元に突きつける。可能ならそのまま後ろに回って羽交い締めにしたいところだが……おっと。

「フンッ……なっ……」

 隠し持っていたのか、ナイフで横腹を反撃される。防刃チョッキを着ておいてよかった。

 

「がはっ、ごほっ……ひゅぅ……ひゅぅ……」

 初めからこうすれば良かったんだ。さっさと頸にナイフを刺してポケットを弄れば情報が出てくる出てくる。

「これは貰っていくぞ」

 胸ポケットにはおそらく家族で撮ったであろう写真。残念だがこの男は家庭のもとには帰れない。

「じゃあな、ウルフ」

 頸に刺したナイフを引き抜く。

 

 

「〜(鼻歌)♪」

 スラム街を歩く。トレンチコートはこの寒く雪の降る街でも私の血で汚れた身体を隠してくれた。

「〜(鼻歌)♪」

 代理人と一緒に遊んだゲームの鼻歌を歌う。

「ぉ……ま……」

「〜(鼻歌)♪」

 瀕死ながら足を掴んできた売女の頭を(自主規制)て進む。代理人との思い出を汚さないで欲しい。

「……作戦にでも出ようか」

 

 

 哨戒任務は重攻撃機の私には不適当な為、対地任務をいつも選んでいた。後輩達と比べて積載量や機動性、特殊性で劣る私は、代理人が私を拾ってくれるまでよくたらい回しされていたものだった。

「ハボックさん、顔色が悪いですが……大丈夫ですか?」

「大丈夫、大丈夫……」

 指示書を代理人の代わりに出してくれる職員に手渡しで貰い、廊下で歩きながら目を通す。地上部隊の救援、か。殺人依存症の私が天使になれるかは分からないがわざわざ暇な後輩ではなく私に流してくれた、とすれば……とても楽か、厄介か……そのどっちか。とりあえず上がって行ってみないと分からない。

 

 追加のブリーフィングを聞きながら空中で補給を済ませる。なるほどなるほど……当たりつきハズレなしの貧乏くじか。状況は劣悪、制空権も地上部隊の追加の救援も絶望的……なら尚更、後輩よりも厄介な私が行くべきだろう。代理人の居ない世の中に用はない。

 

「死神が来たぞ!目標指示!」

 地上部隊は飛んできた増援が貧乏神でも死神であったとしても過剰なまでに喜んでくれた。ん?練度が高いな……目標指示スモークの精度が良い。遠目標には指示レーザーも照射されている。腕の良い誘導員が居るのだろう。なら、期待に応えてやるとするか。

 手始めに長距離攻撃を行っていた共生種に1100lb誘導爆弾(ウォールアイ)を放り投げて引き返し、時々ちらっと見て爆弾の進路を直しながら地上部隊の前にいた遊猟種(スモークでマーキングされていた)に37mm砲弾をプレゼント。よし、どちらもやった。

 地上部隊が攻勢をかけるので邪魔にならないよう上に退避しつつ、指示を待つ。

「死神、白い煙幕が見えるか?我々はこれより前進する。赤いスモークが見えたらそこを攻撃してくれ」

「了解」

 赤いスモークが見えたのでそれにズーニーロケットを投げ込む……本当に投げるわけではない。

 

 

 作戦が一段落ついたので次の支援要員と交代し、空中補給機で一休み。ARMSをケーブルと給油ホースで接続し、オートパイロットをリンク。これであとは手放しで良い。

「代理人……どうして……私を置いて……」

 代理人の写真をポケットから取り出して見つめる。もう何度目だろうか。

「代理人……愛しています……」

 ポケットに丁寧に戻して一眠りする。もし夢で貴方に会えたなら……貴方にまた会いたいと思ってしまった私を許してくれるだろうか。




A-20G
:仇を殺して存在意義を問う快楽主義者。戦争主義者。
 代理人に一目惚れしたものの、片思いだと思っていたのでなかなかくっつくことなく過ごしたがある時、急に関係は発展し誓約にこぎつけた。婚前交渉はしていない。

整備会のコメント
彼女は殺人鬼なんてものではない。彼女に力を与えるのであれば安全弁が必要だ。代理人、異性であり貞操観念が堅く、何より彼女と並んで歩ける貴方が安全弁として適任ではないだろうか?

代理人
:A-20G(A-26B)の夫。
 A-20Gにとっての安全弁として充てがわれたが、彼女を愛してしまった。A-20Gから好意を向けられていることには薄々気がついていたが立場上、応えられずにいた。しかし、整備会の飲み会(参加者には一部DOLLSを含む)にて同僚に発破を掛けられ、ようやく応えることにした。



解説
 A-20G改め……A-20G"ハボック"の皮(スキン)を被ったA-26Bについて。彼女は代理人を殺した犯人と自分が殺した人間が必ずしも一致しない可能性があることを理解して殺しています。でなければわざわざ強調はしません。彼女は戦闘狂であり、休暇よりも前線に出る狂犬紛いの立ち振る舞いを選びます……まあ、代理人が絡むと途端に帰ってくるような忠犬でもあるのですが。
 彼女は復讐がしたかったわけではなく、ただ抑えつけていた、もしくは抑えつけられていた欲求が代理人の死(厳密には植物状態)により解放され……たまたま目についたちょっと怪しい(だけの)連中を殺す事で欲求を満足させつつ自分が非難されにくいように立ち振る舞っていただけだったりします。元来、彼女は仲間も自分自身も信用していません。信じているのは代理人ただ一人……本当は彼女に味方は居なかったのかもしれません。

第三章までの登場人物との類似性
:対DOLLS(と対人)も考慮されたDOLLS(FCS含む)である点

追記
:原案はDOLLSによる代理人の"看取られ"でした。何をどうしたらこうなってしまうのやら。

 旧案では結果的に代理人は植物状態から奇跡の復活を遂げました(ラザロ症候群ではない)……果たしてA-26Bは代理人に合わせる顔があるのでしょうか……わかりませんね。
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