いつか魔王と勇者になる、その日まで。   作:彩白 莱灯

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第5話

「シュウ、行くぞ」

「もういいの?」

「ああ。次は買い出し」

「はーい。じゃーねオババ。死んだら顔見に来るから教えてねっ」

「なンまいなクソガキャぁ!! みかん持ってさっさと出てけゃあ!!」

「ありがとー! ばいばーい!」

 

 

 騒がしさを他所に、振り返らずに暖簾を潜った。

 

 

「キョウカ、どしたの?」

「あ?」

「めっちゃ駆け足じゃん。顔も怖いよ?」

 

 

 無意識に足は早くなっていた。

 立ち止まって、息が上がっていることに気付く。

 身体も火照っている。

 

 

「……なんでもない」

「そ? じゃあゆっくり見てまわろーよ。みかん食べる?」

「あとで食べる」

「じゃあよけとこーっと」

 

 

 気を遣う時、シュウはまず先に食べ物関連の話をする。

 普段は気にしていないくせに。

 自分の好きな物事を避けてでも心配してくれている。

 そのお陰で、冷静さが戻ってくる。

 

 

「買い物したら風呂行くか」

「いいねぇ。まだ行ってないところ行かなきゃ」

「みかんは冷やしておこう」

「最高!」

 

 

 珍しいものを物色し、長居は無用だから適当に退散。

 部屋に荷物を置いて、みかんは冷蔵庫に入れて、湯浴みを堪能した。

 その日はあまり眠れなかった。

 この先のことを1晩考えた。

 

 

「シュウ」

 

 

 今日はまた旅の続きの日。

 部屋の中のものを整え、荷物を整理し終えたところ。

 あとは自分たちの体だけとなったところ。

 

 

 元より手ぶらほどに荷物を持たないから、暇そうにごろごろしていたシュウ。

 声をかけても仰向けのまま俺を見る。

 頭の付近に腰をおろし、胡座をかいた。

 

 

「次の国のことについて話しておきたい」

「ふむ?」

 

 

 何を感じ取ったのか、軽やかに跳ね上がり、向き合って胡座をかく。

 いつの間にか食べていた飴で頬が膨れている。

 

 

「ちょっと遠いんだが、オババの紹介してくれた奴に会いに行く」

「遠いのは別にいいよ。どんなところ?」

「前回のテーマパークの国……みたいだが、もっと年齢層が上の国」

「ふーん……? 楽しいところ?」

「人によっては。シュウは楽しくないかもしれん」

「そっかぁ」

「でも飲み屋が多いし、味にうるさいやつも多いだろうから、飯は美味いと思う」

「そこが一番大事だよ! それなら早く行こう!」

 

 

 また跳ね上がるように立ち上がる。

 美味い飯と聞けばそうなることは予想済みだった。

 対照的に俺はゆっくりと立ち上がる。

 

 

「この国を出る前に買いたいものがあるんだ」

「また? 何買うの?」

「行けばわかる。一緒に見てくれよ」

「えー珍しいこと言うなー」

 

 

 怪しまれるかと思ったが、むしろ反対の反応をされた。

 満更でもないご機嫌なシュウを折って、受付に鍵を返却。

 建物を出て、事前に調べておいた通りに出た。

 

 

 若い人間が多い。

 ガラス張りには土産物や名産物が並んでいる。

 この国の名前や、よくわからない名言も書かれてる。

 その中で一つ目の目的地。

 

 

「え」

「なんだよ。意外か?」

「んー、ちょっと。今なんか付けてたっけ?」

「なんも」

「どういう心境の変化……?」

「まあ、いいから」

 

 

 店の前で立ち尽くすシュウを手招きして入店。

 調べた通りあまり人はいない。

 客一人と店員一人。

「いらっしゃい」と声をかけて、それまで。

 

 

「シュウ、選んで」

「え、僕が選ぶの?」

「俺のとシュウのも」

「……僕別に欲しくないよ……?」

「俺が買いたいから」

 

 

 怪しむ目線をあえて《・・・》逸らさない。

 すると諦めたのか、渋々商品を眺める。

 

 

「……これ、色違い」

「いいじゃん」

 

 

 装飾品をゲット。

 即会計。

 次は二件先の店。

 

 

「あー、まあ、うん」

「ここは別に不思議じゃないだろ?」

「うん、珍しいことには変わらないけど」

「ま、たまにはな。また選んでくれよ」

「自分で好きなの選びなよー。僕入りたくない」

「じゃあお互いに選ぼうぜ。シュウもたまにはこういうのいってみろよ」

「……うーん」

 

 

 納得のいかない顔だが、見てないフリをした。

 気が乗らないまま、けれどしっかり吟味して、シュウは俺に向けた物を見繕う。

 俺も俺でシュウに合いそうなソレら《・・・》を探し、たまに好みを聞いて、服を購入。

 

 

「なんなのさー」

 

 

 二点目にして痺れを切らしている。

 最後まで持ってくれ。

 

 

「最後」

「あ、いいね」

「だろ?」

 

 

 好感触だった。

 実はだいぶ年季が入っていたらしく、三箇所目にして一番乗り気で入店。

 

 

「シュウってサイズどれくらい?」

「これぴったりだった」

「俺より小さいな」

「大きくなりたいなー」

 

 

 それぞれで気に入った靴を購入し、退店。

 最低限の物は買えた。

 

 

 荷物を持って国を出たところで、シュウは声を低くして問いかける。

 

 

「んで、なんなの? これが次の国になんの関係があるの?」

 

 

 ムスッと顔でいかにも不機嫌を装っている。

 なんの圧もない。

 黙っていた方がいい……のだが、どことなく良心が痛む。

 何故か頭が痒くなくなった。

 

 

「えー……怒るなよ?」

「怒る」

「じゃあ言わない」

「じゃあ動かない」

「じゃあ飯抜き」

「やだぁ!」

 

 

 チョロい。

 

 

「わかったよ怒らない! 怒らないから教えて!」

 

 

 言質をとったことで、喉が空気を取り込みやすくなった。

 ふと空を見上げれば暗雲が立ち込めている。

 今にも雨が降りそうだ。

 国を出てしまったので、早く雨をしのげるところに移動しなければ。

 

 

「次の国は、遊郭の国」

「ゆーかく」

「女がいっぱいいる」

「その国を潰していいってこと?」

「お前も女になる」

「殺すよ」

 

 

 女装アイテムは買い揃えた。

 シュウは絶対似合うと思う。

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