「おはようございます。ミコトさん。先日は本当にありがとうございました。」
事務室に退部届を提出しようとティーパーティー本部に訪れたら話しかけられた。
先日、病欠していたから私が仕事を肩代わりしてあげた子だ。
「これはほんの気持ちです。受け取ってください。」
私が肩代わりしたとバレるのはこの子の世間体に影響出るかなーと思い、誰にもバレないように終わらせた業務のプリントを彼女の家に届けにいった。
手ぶらで、終わらせた業務だけ持っていくと、自分の成果を見せつけに来たみたいだし、私のイメージダウンに繋がりかねないので、適当にゼリーとか持っていって軽食も作ってあげた。そのお返しだろうか。
「わ!これ〇〇の通りにあるケーキ屋さんのですよね?!前から気になってたやつです!いいんですか?!」
「ええ、勿論。」
「わざわざありがとうございます!!」
驚いた、500円以下で買ったゼリーと栄養剤と有り合わせで誰でも作れる軽食を差し入れしただけなのに、そのお返しが超人気店のケーキだ。軽く倍の値段はするだろう。お人好し過ぎないか?それともこれがお嬢様流なのか?もしかして「お前の差し入れ貧相すぎやわ」と皮肉られているのか??
「い、いえ、気にしないでください。その、他にも美味しそうなお菓子が沢山ありましたから、今度は一緒に行きませんか?」
良かった。単に好意か。まぁ辞める前の最後の晩餐として食べに行くか。
「え!いいですよー!いつにしますか?えっと予定は、
「ミコト様。ナギサ様がお呼びです。」
! 急に後ろから声をかけられた。なんか声怒ってる?
というかナギサ様から?なんで?
「へ、あ、わかりました。すみません、行かなければならないので予定の方はまたモモトークで送っておきます!失礼します」
さっき話してる時は気づかなかったが、周りから凄く目線を向けられていた。こわ。なんか派閥内に既に広まってるレベルのやらかしをしたか?
ひえー辞める前に怒られたくないよー
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コンコン
「
「どうぞ」
「失礼します」
ギィィと鈍い音を立てる重厚なドアを開く。
そこにはナギサ様が姿勢を正して上座に座りこちらを見ていた。
机の上には何かの資料が2山程ある。大変ですね…
「早かったですね。すみません今すぐ紅茶を用意します。座っておいてください」ニコッ
そう言って笑いかけてきた。可愛い。
良かった。ひとまずやらかし関連では無さそうだ。
用意を手伝いたいが来客に手伝われるのは嫌だろうと思い大人しく座る。
改めて辺りを見渡すと、インテリアの一つ一つが荘厳で重苦しい。自分の部屋の家具全てと、あの煌びやかなキャビネットの値段は同じくらいだろうか。
最初の頃こそ、少しでも粗相をしたら各々の家具から放たれる威圧感に突き刺されるのではないかと思っていたが、今はそれほど緊張しない。
何度もナギサ様に呼ばれて来たことがあるし、さっきの笑顔のおかげもあるのだろう。
「どうぞ」
そんなこと考えていたら紅茶の用意は終わったらしい。
「ありがとうございます。ん!これすっごくフルーティーですね!」
「ええ、以前フレーバーティーの方がお好きと仰っていたので…、それはバラとヤグルマギク、あと少しストロベリーの風味も入ってます。」
「砂糖なしでも十分甘く感じます!これ好きです!」
うっま。何これ。というか前、渋いのが苦手でよくフレーバーティーとかミルクティー飲んでるって伝えたこと覚えててびっくり。
「ふふ。喜んでもらえて良かったです。気に入っていただけたのなら少し茶葉を分けて差し上げましょうか?」
「いえ!そんな悪いです!」
「いえ、私がしたくてしていることなので、どうぞ持ち帰ってご自宅で飲んでくれると嬉しいです」
「な、ならお言葉に甘えて、少し頂きます!ありがとうございます!」
なんでそこまでしてくれるのだろう。
あれか、有名な政治家が言ってた「官僚とどれだけ仲良くなって掌握できるかが大事」というやつか。
流石ナギサ様。私のようなモブにまで配慮を欠かさないなんて。
「それで、話ってなんですか?」
「今回お呼びしたのは、この間の件への返事が聞きたいからです」
「この間の件?」
え、なにそれ、なんか頼まれてたっけ。まずい、トップからの依頼を忘れてましたとか笑えない。
「……覚えてないのですか?私の補佐官の件です」
あー……?あーーー!!あー!あー!あー!話が見えてきた。
この前、お茶会した時に
(「私の補佐官になりませんか?返事は直ぐにとは言いません。1週間後でも結構です」)
とか言われた!そーいえば!
あれ冗談じゃなかったの!?
いやだって、私が補佐官になる必要全くないどころかデバフじゃない??
完全にそーゆうお世辞だと思ってた。
「まさか、本当に1週間も返事をくれないとは思ってませんでしたが……ミコトさんは人気者ですからね。忙しいのでしょう。それとも実は私の事が嫌いでした?それなら、自惚れた私が悪いです。ミコトさんには申し訳のな━━━
「違います!違いますから!決してナギサ様の事が嫌いとかではないですから!!」
すっごい早さで自己嫌悪に突っ込んでいきますね!?私も人のこと言えないけど
思わず食い気味に否定してしまいましたよ
「本当ですか!では、補佐官になるということでいいですね??」
「本当ですから!えー、、なります、はい、補佐官、やらせて頂きます」
やられた。あんなに落ち込んでた癖に直ぐにパァっと笑顔になった。断れるわけがないでしょう。謀りましたね?
「では、こちら補佐官に任命するにあたって貴方が書く必要のある書類です。推薦書等はこちらで用意して後日渡します。」
すごく準備いいですね!?実は断られること考えてなかったでしょう??
私が扱いやすい奴みたいでちょっとムカつく。
「了解です。しかし本当に私でいいのでしょうか?」
「というと?」
「私以外に事務処理能力や洞察力、その他全てにおいて私よりも勝っている人材がティーパーティーには沢山所属しています。お誘いは嬉しいのですが期待に応えられるかどうか心配で…」
「大丈夫ですよ。貴方は私の傍に常にいるだけでいいのです。これからも、ずっと。」
「……恐悦至極に存じます。至らぬ点が数多あるでしょうがナギサ様の補佐官として分不相応でないように精進して参ります。本日は呼んで頂きありがとうございました…。」
つまり、置物であれということだ。納得した。今までも1人で難なくこなしてきたナギサ様だ。
本来、補佐官など必要ないであろう。
しかしホストの1人となった今、形だけでも補佐官を雇う必要が出てきた。
だが、有能な人物を補佐官にすると、自分の政策に口出しされるかもしれないし、反ナギサ派のトップとして神輿に担がれる可能性もなくはない。
だから、敢えて平凡な私を補佐官に据えることで、その可能性を抑えるつもりなのだろう。
流石はナギサ様だ。
私は友人だと思っていたから完全に駒として扱われるのは少しだけ寂しい、が、別に嫌悪感はない。
だって、私も自己中心的な欲求を満たすために他者に優しくしている偽善者、優越感に浸るために人を利用する性悪者。
仮面を被ったまま、都合よく関係を消費している私たちは案外、似た者同士なのかもしれない。
ただ一つ違うのは、
向こうには才能があり、抗いようもなく魅力的だということだけだ。
「それでは、失礼します。」
あーどうしよ、辞めれなくなっちゃった。
まさか今更、今日来たのは退部届を提出するためですーーとか言えないよな。
もうしんどいんだけどな。
でも置物補佐官だし、案外仕事は減ってナギサ様以外の子らとの関わりも減って好都合かも??
とりあえず、この退部届も処理しとかな、、
「あ」
貰った書類をバッグのファイルに仕舞おうとしたら、退部届を落とした。
大理石の床の上に着地したそれは、扉の下の隙間から吹かれる風に乗ってナギサ様の足元まで飛んだ。
最悪だ。
「これは……退部、届……??」
「あ、いえ……燃料です。焼き芋用の」
「いや、でも、しかし、」
「燃料です。野焼き用の」
「」
「燃料です」
「そうですか……火遊びは気をつけてくださいね…」
「はいッ!失礼しますッ!!本日はありがとうございましたッ!!!」ダッ!ガチャ!バタン!!
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あっぶねーー!!!!何が燃料だよ、無理やりすぎるでしょ!!
てか今冬じゃないし!トリニティ野焼き禁止されてるし!気づかれる前に退室できてよかったー!!!
こうして御形ミコトは桐藤ナギサの補佐官となった。
なんか何番煎じか分からないレベルの典型的な無自覚勘違いモノですね
主人公にクソ重感情向けてほしいキャラ
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ミカ
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セイア
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サクラコ
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ミネ
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ハナコ
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イチカ