「引き継ぎしないとなー」
私がナギサ様の補佐官になることが決まって数日。
私は仕事の引き継ぎに追われていた。
以前までの私の仕事は他校との外交が中心で、2年生に入ってからは主にゲヘナ学園担当として、誰もやりたがらない仕事を押し付けられていた。
ゲヘナ専門になったきっかけは、美食研究会やら温泉開発部やらのテロリスト達の引渡しを何度か繰り返していくうちに向こうの風紀委員長に気にいられたからだった…と思う。正直よく覚えてない。
気づいたら風紀委員会だけじゃなく、万魔殿との交渉まで任されるようになり、ゲヘナ全般の外交で直接現場で交渉を取りまとめる立場として向こうからも名指しで選ばれるようになってしまった。
「流石に、直接会いに行って挨拶した方がいいよね……」
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「━━━━━以上が、こちら側の条件となります。また当日の警備体制の案に関しましては、こちら側で詳細が決まり次第伝えます。」
「そう、わかったわ。」
「でしたら、本日はここまでということで、ありがとうございました。」
「こちらこそ、いつもありがとう。」
「いえいえ。」
「……」
「……?」
「……会議は終わったのだから、口調、戻していいわよ」
「いや、そう言われましても」
「戻して」
「……はい。でも結局、敬語なのは変わりないですよ……?」
「ふふ、そっちの方が断然いいわ。どこの受け売りか知らないけれど、仕事モードの貴方は他人行儀すぎて、ゾワゾワするもの」
「こ、こっちの方が外交らしくていいと思ったんです!」
「そうね。でも相手が壁を感じてしまうようじゃ、ネゴシエーターとして失格だとは思わない?」
「うう……確かに…。善処します…」
「まぁ私の前では本当に素でいていいわ。それで、今日の仕事はもう終わり?」
「そうですね。今日はこの後、アコさん達に挨拶してホテルに帰って、明日万魔殿に顔を出して、その後温泉に浸かって、夜にはトリニティに帰ります。」
「そう。なら、ゆっくりして行くといいわ。」
「まぁ、最後かもですし、そうします。」
「……最後?」
「はい。この度、人事異動があって、ゲヘナ担当から外されることになりました。以後はフィリウス分派代表の補佐官となります。」
「……え?」
「ああ、でも心配しないでください。引き継ぎは完璧にしますし、後任は私より優秀な筈ですから。」
「……本当なの?」
「? はい。」
「……そ、そう……」
「あと、これ。今までのお礼です。つまらないものですけど受け取ってください。」
「あ、ありがとう……。」
「いえいえ。ヒナ委員長にはすごくお世話になってますからー」
「……ねぇ」
「あ、もしかしてアレルギーとかありましたか?」
「いや。ひとまず出世おめでとう。それで、今夜うちに来ない?出世を祝って、ご馳走したいのだけど」
「はい……?」
「時間、あるのよね?」
「ですけど、急にどうしたんですか……珍しい。それに仕事は?」
「可愛い後輩の門出を祝ってあげたいだけ。仕事は私じゃなくても出来るものばかりだからアコがいれば大丈夫」
「え、アコさん連れていかないんですか?」
「私と二人きりは嫌?」
「いや!全然!びっくりしただけで……」
「そう。なら、決定ね。」
┈┈┈┈┈┈
その後、ヒナ委員長が仕事にひと区切りがつくまでの間、他の風紀委員達のもとにお別れの挨拶をしてまわった。
あまりに急だったらしく、皆、驚いて「何も用意してないよ!」と私は少し怒られた。皆それぞれ机の上やら棚の奥からその場にあったお菓子とか色々渡してきた。
特にアコさんには「そんな事急に言われても困ります!」と言われ、後日また会う約束をした。
両腕に色んなお菓子を抱えた私を見てヒナ委員長は少し呆れてた。
その後、2人でスーパーに寄り、食材を買い、一緒に台所に立ち、夕食を作り、食べ、後片付けをした。
なんだか、その光景が夫婦のように思えてしまって
「なんか新婚みたいですね」フフッ
とつい言ってしまった。
すると、ヒナ委員長は暫く俯いたまま黙り込み、それから、咎めるようでありながらどこか勢いの欠居た視線を向け
「そうゆうところが良くない」
と歯切れの悪い調子で言った。
……もしかして、セクハラだったかな?
それからは、お茶を飲みながら少し昔話などをして、解散となった。
「じゃあ、今日はご馳走ありがとうございました。」
「満足してくれたのなら、よかった。貴方は交渉官ではなくなるけれど。仕事でなくても、困ったことがあったら言ってほしい。。」
「はい!本当にありがとうございました!!」
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「はぁーー。ヒナ委員長、すっごい料理上手かったなーーー。私もああなりたいな。」
そんな独り言をぶつぶつ呟きながら、今日の出来事を反芻して、ホテルへ向かう。今日泊まるホテルはトリニティの使者として用意されたものだけあって、そこそこ良いホテルだ。
なんでもレストランは「超一流」らしい。デカデカとネットのホームページにそう書いてあった。
「さーて、着いた着いたー。明日の朝ごはんはここのレストランで食べてみるか━━━━━
━━━━━ドッッゴォォォン!!!!
「美食研だッ!!」
「誰かー!風紀委員呼んでーー!!」
「捕まえろッー!!!」
「」
は?え?ばくはつ??美食研?
┈┈┈┈┈┈
「すみません、お客さま。先の爆発でガス栓からガス漏れが起きており、全館立ち入り禁止となっております。」
「」
待て、まだ空いてるホテルを探そう。
「すみません。本日はもう満室でして……」
「大変申し訳ございません。今夜は━━」
「すみませ━━━━━」
「ごめんなさ━━━━」
「」
詰んだ!?
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「それで、私の所に泊めてもらいに来たと?」
「頼むよ、アコちゃん。私、野宿になっちゃう」
「誰がアコちゃんですか!!このドア閉めますよ!?」
「冗談です。ほんとにすみません。調子乗りました。神様、仏様、天雨様、中に入れてください。」
「なんか、まだ若干馬鹿にしてる気がしますけどッ、まぁいいでしょう。」
「アコちゃーーーん!!」泣
「前々から思ってましたが、貴方、私のこと舐めてますよね!!?」
連邦生徒会長が失踪する前なので、ヒナちゃんはまだ少し仕事に余裕がある時期です。
ミコトはアコの前ではふざけてましたが、アコに助けを求めるかどうか、すごく悩んでましたし、無視されたり面倒くさがられたりすることを想像して怖くなり、連絡するかどうかその場で10分くらい迷ってました。(実際はすぐ返信がきた模様)
あとアコがヒナに並び立つために努力していた事を知っているのでミコトはちゃんとアコのことを尊敬してます。本人の前だけ「アコちゃん」呼びで他の人の前では「アコさん」と呼んでます。(アコちゃん呼びはイオリの影響)
あとがき2
思いつきで投稿した話が予想の100倍伸びてて腰抜かしてます。
こつこつ書いてて、ストックがもう1話あるので明日とかに投稿すると思います。
各キャラとミコトとの馴れ初めについて
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あった方がいい
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無くてもいい