ハリー・ポッターの呪われた双子   作:フォンテ

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第11話 そして旅立つ

 

 その日も、アイラは夜明け前に目を覚ます。

 育ての母親であるペチュニアの部屋で眠る日々も、日常になっていた。

 

 ちらりと目を向けて確認するように、彼女の顔色はいい。

 

 最近、アイラとペチュニアが一緒にいる時間は多くなり、でも会話の頻度は減っていた。

 いつものようにキッチンを丁寧に清掃し、朝食の食材を用意して、途中でペチュニアが起きてきて紅茶を渡せば感謝され、朝食作りを再開して。

 とても早い時間なのに、ハリー、バーノン、しかもダドリーまで起きてくれば、朝食が始まる。

 

 変化したところだと、ハリーやアイラの分のトーストは2枚まで、ベーコンは4枚まで、スクランブルエッグやサラダは食べ放題となったことだろうか。最初は2倍以上に増えた食事量に慣れなかったが、ハリーとアイラは、ほどよく肉付きがよくなってきていた。

 

 他にも、ダドリーがだいぶ静かに食事するようになった。相変わらず大量に食べるが、おかわりしなくなり、何事かと思った。

 

 そんな朝食が終われば、今日はいよいよ駅に向かう。

 

 アイラやハリーは、それぞれ荷物が残ってないか最終確認する。

 昨日のうちに8人乗りの車には、ほとんど入れさせてもらっていた。

 

 最初は、アイラは公共交通機関を使って駅に向かおうとしていた。1度では運べる量ではないから、1ヶ月の間に近くにホテルでも借りて、そこに荷物を置いていく。今はそれだけの財力は持っている。金貨だから換金方法は悩むが、それこそ、いつか今までの恩を金銭で返そうと思っているほどだ。

 だが、それにペチュニアやバーノンは首を振る。『万が一、世間様に魔法の道具をばら撒いてもらっては困る』、世間体を気にする2人らしい発言だ。

 

 バーノンが車で駅まで送ってやるし、ペチュニアは協力して駅のカートには荷物を乗せてやる。

 ハリーなんて、何か悪いものでも食べたかと疑っていた。

 

 そういうわけで手で持てるトランクには、移動中に読む教科書、ローブなど制服一式、万が一の時の金貨を入れる。それでもアイラにとっては、なかなかの重さである。大切な杖は、ズボンのポケットに入れておく。

 

 部屋の隅に私物を置いて、絨毯の上で眠る1ヶ月だった。

 最後に綺麗に掃除して、借してもらっていた冬用の毛布を綺麗に畳む。

 

 もはや何がどこにあるか全て把握しているキッチンは、もうすでにペチュニアが掃除してくれている。彼女はそれなりに潔癖症なので、アイラは何度も指導を受けたものだ。

 

 あくまで居候で、住ませてもらっていた。

 本当の親子でもない。

 

 でも赤ちゃんだった頃から、育ててもらった。

 

 そんな『家』から、何か月も離れることになる。

 

「……いってきます」

 

 すでにバーノンやペチュニアやハリーは車に乗り込んでいる。

 お留守番となるダドリーの部屋は、カーテンの隙間が見えた。

 

 

 振り返って、アイラも車に乗り込む。

 

 

 駅に着くまでの車内は、静かだった。

 荷物は後ろの席にまで押し込まれいて、普段はダドリーやペチュニアが座っていた席に座る。

 

 景色が流れていく。

 知っている道なのに、もう戻ってこない場所のように思えた。

 

 かなり遠かった。

 

 ハリーは興奮を抑えきれないように、何度も話しかけてくる。

 アイラは相づちをうつ。

 

 そして、キングス・クロス駅に到着する。

 

 あらかじめ言っていた通り、バーノンとペチュニアも、カートに荷物を乗せるのを手伝ってくれる。これなら予定時間の11時に、余裕を持って間に合うだろう。

 

「ありがとうございました……今まで」

「……ありがとう」

 

 車の前で、バーノンとペチュニアとは別れることになる。

 アイラは丁寧にお辞儀し続けるし、ハリーもなんだかんだ感謝する。

 

「……2年になる前に、夏休みはあるのよ。帰ってくるのなら、必ず連絡することね」

 

 なぜペチュニアがそれを知っているのかは、アイラとハリーは知らない。

 

「はい。その時は、よろしくお願いします」

 

「ふん、慣れもしないバスで、迷子になられても困るからな。警察ごとはごめんだぞ」

 

 再びアイラが2人に頭を下げれば、バーノンは腕を組んでそっぽを向いた。

 

「いこう、アイラ」

「……ん」

 

 ハリーが提案し、アイラも行かなければならない。

 義理の親子として抱きしめることも、きっと見送る言葉もないだろう。

 

「いってきます、おかあさん、おとうさん」

 

 それだけ言って、アイラは背を向けたら。

 

「……いってきなさい、どこまでも」

 

 そんな小さな声が聞こえて、アイラは思わず振り向きそうになる。

 目頭が熱くなるのを感じながら、でもすでに歩き始めているハリーを追いかけなければならない。

 

 ペチュニアは大きな音をわざと立てて、車に乗り込んだ。

 

 引き止めないこと。

 それが、ペチュニアがしてあげられることだったのだろう。

 

 

 アイラは袖で目元を拭いてから、駅に向かってカートを押し込むように進んでいった。

 

 

 

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