.hack// Vol.SAO   作:imuka

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アインクラッド編を投稿中から閲覧して下さってくれた方はお久しぶりです。

書くかわかりません、といいつつ始まりましたフェアリィ・ダンス編。
コメント頂くと嬉しくて勢いにノッてしまうんですよね。



フェアリィ・ダンス編
プロローグ


 

「ふっ・・・はっ・・・!」

 

「ほらほら!ちゃんと身体全体を使って!」

 

「そうは・・・言うけど・・・ね!」

 

 絶賛僕は身体に鞭を打ちながら必死に歩いていた。汗が頬をつたって床に落ちる。

 

 デスゲーム(ソードアート・オンライン)から帰還して5日。家族や晶良、友人たちとの感動の再会を終えた僕を待っていたのは晶良(鬼教官)のリハビリだった。

 

「ほら!海人!!頑張って!!」

 

 手をたたきながら数m先で待つ晶良に向かって、歯を食いしばりながら歩く。

 頑張って、と言われると「よし!頑張ろう」と思ってしまうのは僕が単純すぎるのか、それとも晶良が乗せ上手なのか。

 恐らくは前者であって、彼女がこのために(僕のために)わざわざ資格(理学療法士)を取ってきたと話を聞いてしまったから尚更なんだと思う。

 はっきり言って晶良(相棒)の想いは嬉しい。それこそ飛び跳ねて喜ぶくらいには。だからこそ僕はその想いに答えたいと思うわけだ。少しスパルタ過ぎない?と言う疑問が胸に宿りつつも。

 

 

 幸いにして僕を始めとした未帰還者達は時間をかけず社会復帰できるように意識がない間も筋肉の維持は行われていたらしい。聞いた話だと元々筋肉があった人物は――エギルかな?――すでに普通に歩行できるほど復帰しているとのこと。

 なんで"聞いた話"なのかと言うと、僕は意識が戻った後、すぐに別のリハビリ用の施設に移されたから。その夜にわざわざリアルの姿で僕に会いに来たヘルバが教えてくれた。いろんな人が僕の為に動いていること、そしてある予防措置のために。予防措置については僕が日常生活に戻れたら教えてくれるらしい。

 

 

 そんなこんなでいろいろな意味で隔離された僕は外の情報は人伝からしか聞くことがなく、情報端末などの使用も禁止されているため世間に疎い人になってしまった。医者と晶良、たまにお見舞いに来る家族や友人だけとしか会話しない日々だから困りはしないんだけどさ。

 

 

 

 

 そんな日々はあっという間に過ぎて帰還から2週間が経って。

 僕は一通りの日常生活が一人で行えるくらいに復帰。食事も通常食を食べれるくらいにはなった。やっぱり味付けがしっかりとした食事の方がいいよね。これで――

 

「さて、海人。話をしようか」

 

 これで晴れて退院!と思っていたのになんだろう、この圧迫面接みたいな形は。

 

「そう固くなる必要はない。これからの君の事についてなのだから」

 

 そう言って僕の正面の右側に座ったのはワイズマンこと火野拓海。その隣にはCC社を退社しているはずのリョースこと土屋浩司。

 

「これからの僕の事・・・?」

 

「ああ、主には就職先、だが」

 

「就職先?――2年前に内定されてた会社からは『入社前だったから内定取消』て話を家族から聞いてるよ」

 

 僕がそう言うと土屋さんは少し頭をかいて聞いてきた。

 

「・・・こう言ってはなんだが、君は本当にあの職に就きたかったのか?」

 

「うーん・・・少なくとも当時は?」

 

「では今は・・・違うと?」

 

「別のことに興味、というか半分責任、かな?は湧いた」

 

 その返事を待っていた、といった顔で拓海が薄く笑う。

 

「それはVR関連ということでいいかな?」

 

「そりゃ、もちろん。2年間も中にいたわけだしね」

 

「それは僥倖。では、無職な君に良い話をもってきた」

 

 拓海の言い方に少しだけ眉を顰めながらも彼の差し出したタブレットを受け取る。そこには『VRテロ対策室の設立』と書かれていた。

 

「VRテロ対策室?ネットワーク管理局(NAB)じゃなくて?」

 

「VR関連に特出した部隊というわけだ。―――正確には別の組織になるわけだが」

 

 土屋さんがそう言うと拓海が言葉を引き継ぐ。

 

「現在のNABは建前上すべてのネットワーク調査の対応している。しかしこれだけ多くのものがネットワークに紐づき、対応が多種多様になりつつある中、新規参入してきたフルダイブ機器に対してまで手が回らないのが現実だ。ましてや事件の事もあり、人員募集するにも大ぴらに募集もかけずらい」

 

「フルダイブ機器に対する疑念を生む?」

 

「そうだ。対策室の設立イコール対策が必要な危険があることに結びつく」

 

「それで・・・僕?」

 

 僕の問いに拓海は肯いた。

 

「第二次ネットワーククライシス、そして今回のSAO事件の立役者。これほどの適任は他にはいないだろう」

 

「でもなんで拓海と土屋さんから?」

 

「私は出資者、と言ったところだよ。公平性を保つために運用面について口出しすることはない。CC社の筆頭株主である私が出すのはお金だけだ。――そして」

 

 拓海の言葉を土屋さんが引き継いで肯いた。

 

「私が組織のトップとなる。あくまでも海人がトップに立つまでの間、だがな」

 

 へー僕がトップに立つまでの間。だから現場から去った土屋さんがわざわざ戻って出てきたんだね。・・・ん?僕がトップ・・・?

 

「僕がトップ?!?!?!?」

 

 頭の中で考えていたことがそのまま大きく口に出た。拓海はなぜか誇らしげに肯いた。

 

「そうだとも。我らがリーダー”蒼炎のカイト”。君以外の誰がリーダーを務めるのかね?」

 

「いや、それは『The World』・・・というか《.hackers》でのでしょう?!」

 

 驚く僕を他所に拓海はあくまでも淡々と続ける。

 

「だからこそだ。君の手で、新生《.hackers》――”黄昏の騎士団”と言った方がいいのかな?それを作る必要がある。そしてその必要があると君はこの2年間の経験で感じた。違うかな?」

 

 拓海の言葉に僕は少し思い当たるフシがあって、思わず黙ってしまう。

 

 確かに今回の経験から、僕はこれからの人生において、ネットワーク事件に置ける何かしらに関わっていくことになるんだろうと、何処か確信めいたことを頭の隅では思っていた。自ら渦中に入る覚悟も必要だと。

 だからこそ今回の内定取消は逆に良いと思っていたし、必要ならNABへの就職、もしくは近しい何かに所属するためにヘルバとかに相談するつもりだったくらいだ。

 

 それがまさか、こんな形でお膳立てされて来るとは思ってもいなかってけれど。

 

「もちろん君が拒否すればこの話は無かったことになる。だがこの先のネットワーク社会において何かしらの問題は避けては通れないだろう。そうなった時、仮に君の知り合いがそこに居た時、ただ黙ってみていることができるかな?」

 

 コレは半分脅しだ。この件を拒否するのなら今後何か起きた時は大人しくしていろ、と。心配の意味も含まれているのかもしれない。

 と、なるなら僕の答えはもう出ている。

 

「わかった。この話を受けるよ」

 

 その返しに拓海は満足そうに肯き、土屋さんは呆れたように首を振った。

 

「では”リョース”。手続きを頼む」

 

「やれやれ。年寄りをこき使ってくれる。―――”カイト”。仕事は次第に引き継いでいく。ひとまず当社の概要がソレに載っているから確認しておいてくれ。まだSAO事件も収束仕切っていない。仕事は山のようにあるから覚悟しておけ」

 

 土屋さんは僕の持っていたタブレットを指さすと部屋から退出した。拓海も満足そうに肯きそれに続いて退出する。

 

 

 

 一人になった僕は久しぶりの電子機器に触れながら会社概要を読み始める。

 概要はざっくりまとめるとこんな感じ。

 活動内容はネットワーク事故、事件、テロに対する調査や未然の防止、解決を目指すこと。主にはフルダイブシステムに対するものを主体として、必要に応じてNABとの協力体制を築いて対応していくものとすること。また、事故、事件、テロ発生の背景やその後の社会的影響についても調査報告することが定められる。

 

 投資者の一覧には拓海の名前の他に、有名な経営者の名前が載っていた。それはどこも事業がネットワークとは切り離せない会社。つまりは皆、何かしらの危惧をしている、ということなのだろう。3度のネットワーククライシスに引き続き、今回のSAO事件を踏まえれば、そう考えるのもおかしくはないことだろうけど。

 

 そして最後に、大きくこう記載されていた。

 

 

 人種的、宗教的、思想的、政治的な、いかなる差別もせず、厳格な中立性と公平性を保ち、事故事件の解決を目指し、人命を何よりも優先することを基本とする。

 

 

 久しぶりの液晶に目がつかれた僕は深くベッドに沈み込む。

 人命、という文字が記載されているのは今回のSAO事件を重く捉えている結果だろうか。なんにしても僕のこれからは決まった。先んじて僕の仕事はSAO事件の調査報告書、だろうか。実際に被害にあった身として、尚且つ茅場晶彦と会話した人間として、何かしらの報告は上げる必要はあるのかもしれない。

 

 そんなことを考えていると部屋の扉がノックされた。

 それなりに遅い時間にも関わらずの訪問。恐らくはきっと彼女だ。

 

「どうぞ」

 

「調子は良さそうね、海人。――良い話と悪い話があるのだけど、どちらから聞きたいかしら」

 

 僕の予想通りの人物――ヘルバは入室しながらそう言った。

 

 

 

 初仕事は思いの外すぐ始まる。そんな予感を感じていた。

 

 

 





ほぼすべてがオリジナル設定の回でした。
フェアリィ・ダンス編は執筆途中ですので一気に投稿はありませんので気長にお待ちいただけると幸いです。

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