フェアリィ・ダンス編、第二話へも閲覧ありがとうございます。
電子機器と外の情報を得る許可が下りた僕はリハビリの時間以外は情報取集に当てることにした。2年間の昏睡に、さらに帰還した後の電子機器の使用不可。今の僕にはすべての情報が不足しているといっても過言ではない。
そのためにありとあらゆる情報を2年前から遡り追いかける。食事中もタブレット持っている僕に晶良は怒って没収されたりもしたけどね。
けれどその甲斐もあってか、僕は一月という短時間ながら、世間に疎い状態からは脱却することができたと思う。晶良もヘルバから事情を聴いているのか多くは問わないながらも僕に意味深な目線を向けながら、それでいてよりハードなリハビリメニューを組んでくれた。
おかげで僕は昏睡前と同じくらい、むしろ昏睡前より体力が付いた気がする。その話を晶良にしたらどこか得意気だったけど。
そうして迎えた約束の日。僕は晶良に連れられて指定の部屋へと歩いていた。
「一応言いますけどね。私は反対よ?またダイブするなんて」
先を歩く晶良は振り向きもしないまま、ぶっきらぼうにそう言い放つ。
「みんなが・・・私があの日、チューブとコードに繋がれてるアンタを見た時、どれだけ胸が締め付けられたか、どれだけ心配したか、どれだけ・・・」
彼女が足を止めて涙を拭う仕草をしたのを見て、僕は思わず肩に手を置こうとしたけど晶良はすぐに振り返ってきた。その顔には怒りや心配、様々な想いが宿っているように見える。
「でも、海人がやらないといけないことも、本当の意味で終わらせないと次に進めないことも理解しているわ。もちろん、仕事ってことも含めてね」
「晶良・・・」
「私は私なりに海人を支える。だから・・・・・・必ず帰ってきてよね」
晶良は僕の腰に手を回すと強く抱きしめてくる。
僕が意識を取り戻した時と同じような抱擁に、僕も彼女を抱きしめ返した。
「帰ってくるよ。まだやらなきゃけないこと、やりたいことがたくさんあるし、それに――」
「それに?」
晶良は顔を少し上げて首を傾げた。
「みんなと居れれば僕はなんだってできる。だから大丈夫。そうでしょ?相棒」
僕の言葉に晶良はいつもの、仕方ないわね、という顔を見せて微笑んでくれた。
「ええ、そうね。みんなでやりましょ」
僕たちは笑い合いながら再び抱擁を交わし、歩き出した。
「
部屋に入って何かの操作をしていたヘルバが僕たちを見て放った第一声はからかいの色が含まれたものだった。
その言葉に晶良は顔を赤くしながらアタフタとしていたけれど「そうだね、気力十分だよ」と流して返す。そんなからかいがいのある態度みせたらヘルバの思う壺だよ?晶良。・・・なんだよ、その「これだからコイツは」みたいな顔は。
そんな僕たちの目線だけのやり取りをヘルバはクスクスと笑いながら見ていて、彼女は一頻り笑うとタブレット端末を差し出してくれた。
「ALO内で今、話題になっている画像よ」
僕はその画像を見て目を見開いた。
「アスナ?!」
「あら。知り合いだった?この画像はALOの中心にあるとされる世界樹の上部をプレイヤーが数人で無理やり撮ったらしいわ」
横から晶良が覗き込んできた。
「友達?」
「妹・・・みたいな子かな。オンラインゲームも初心者で右も左もわからない子だったけど一緒にゲームを攻略してたんだ」
画像は荒いけど2年間の多くを過ごした
「幸い彼女がそれなりの立場のおかげで特定には苦労しなかったわ。彼女は”結城明日奈”【レクト】CEOの娘よ。過去の写真から照合からも、彼女が本人である可能性は高いと判断。そして現在も未帰還者。理由は十分ね」
「つまりはその”世界樹”に何かあることは間違いない、てことだね」
「ええ。案内役にもそこへ向かうようにへと伝えてあるわ。――内部のことは彼らから聞くのがいいでしょう。ダイブ中の海人の身体のチェックと面倒は晶良が、機器、ネットワーク周りは私が見るわ」
ヘルバが晶良を見ると肯いた。
「それとダイブに使うのは”これ”よ」
ヘルバが差し出したのはナーブギアと比べるとかなり軽量になった目元だけを覆うタイプのインターフェース。
「アミュスフィア――VRMMO用次世代ヘッドマウントディスプレイで、ナーヴギアの軽量・高機能な後継機として登場したわ。セキュリティが強化され、安全にフルダイブできる機器としてナーヴギアで問題になった”脳への高出力マイクロ波による破壊”を防ぐ安全装置が標準装備されている。それと――」
ヘルバはまるでいたずらをした子供のように薄く笑うと人差し指を口の前に持っていく。
「”こちらから”もいくつか手を加えてあるわ。ああ、安心して安全面の対応が主体よ」
堂々と改造宣言をされたことに僕と晶良は同じ顔をしただろう。とはいえ、命を預ける可能性があるものだということは身に染みていることだ。
――本来は取り締まらないといけない案件な気もするけどね。人命を優先するって書いてあったし、今は目をつぶることにしようかな。
「ALOの基本的なことは――」
「ばっちり調べておいたから大丈夫だよ」
「食事中もタブレットから手を離さないでね」
僕がサムズアップすると晶良がわき腹を突きながら嫌味を零す。
「そう。案内役とはログインしてすぐに会えると思うわ。それとアイテム欄に”プライベートピクシーの卵”があるからログインしたらすぐに使いなさい。必ず役に立つわ」
「わかった。結局、案内役は誰なの?」
「会えばわかるわよ。長くても8時間前後で戻ってきなさい。案内役の都合もあるから大丈夫だとは思うけれどね」
肯くと、ベッドに横になりアミュスフィアを装着。晶良とヘルバの顔を交互に見る。
「それじゃいってきます。――リンク・スタート!!」
今度こそ終わらせよう。本当の意味で、僕たちの旅を。
* * *
なんの変哲もないフィールドの丘の上。そこに2人の男女が、女性は座って足をフラフラとさせ、男性は腕を組んで何かを待っていた。
「こんな中途半端な場所を集合場所にするとは・・・一体なんの意味があるんだ?」
「さー(。´・ω・)?彼女の考えることはわたしにはわからないよー」
「初期ログインの場所はそれぞれの領地内。種族の選択も重要だとちゃんと伝わっているんだろうな」
「だ・か・ら。わたしはわからないってばー(';')でもカイトなら大丈夫でしょ」
「だいたい”こっち”で会うまで連絡を取るのを禁止したのもわけがわからない。一方的にメールをよこしたと思ったら一方的に命令だけして。やはりいけ好かない」
「そう言いつつ集合時間の30分も前から来てるんだから”バルムンク”も大概だよねー(^_-)-☆」
「あの女はいけ好かない上に信用ならないが、カイトの事となれば別だ。そう言う"
ミストラル"はどうなんだ?」
「わたし?わたしはカイトとまた一緒に遊びたいだけだよー(^^♪それにほっとおけないしね」
そんな二人の会話を遮るように空から声が落ちてくる。
「うわああああああああああああああああああああああ!」
ブラックローズこと晶良は少し過保護になるくらいには海人を心配しています。
相棒が自分の意志でしっかりと決めたことは応援してあげたい、でもまたあんなことになるのは不安で心配にもなる、の気持ちでせめぎ合っている感じですね。
第二次ネットワーククライシスで弟を、SAO事件で”大切な人”を囚われれば嫌になるのは当然といえば当然かもしれませんが。
ちなみにカイトは情報が隔離されているために誰が現実世界に帰ってきていて、誰が未帰還者なのかを知りません。
.hack//からの参戦者については皆様の予想通りだったでしょうか?
個人的にはALOの世界観に合い、イメージしやすい2人をチョイスしました。
ALOには他にも数名参加させるつもりです。お楽しみに。