フェアリィ・ダンス編、第三話へも閲覧ありがとうございます。
僕はキャラクターエディット画面で種族の一覧を見ながら、悩んでいた。
事前に調べた限りだと、この種族の括りは得意分野の切り分け、ということらしい。つまりは自分のプレイスタイル選択、ということになるだろうけど僕のプレイスタイルってどうなんだろうか?調べたときにちゃんと決めておけばよかったなぁ・・・。
でもまぁ、スプリガン、ケットシー、ノームやレプラコーン、プーカは除外していいかもしれない。僕じゃなくてキリトやシリカ、エギル、リズベットなんかが好む種族だと思う。ケットシーなんかは猫科に見えるしアルゴも気に入る――彼女は鼠言われてたな? ん?違うかもしれない。
脱線した思考を戻して僕は絞り込んだ種族を見直す。
単純に武器の扱いを特化させてサラマンダー?でも僕はそこまで複数武器スキル取ったりしてたわけでもないしな・・・。
The Worldでは回復役も引き受けてたこともあるしウンディーネにしてみようか?
シルフの飛行速度が高いのは楽しそう。
インプの暗視、暗中飛行に特化も面白いかもしれない。
よし!いろいろ悩んだけどやっぱり”蒼炎”の名に恥じないようにサラマンダーでいこう!
そう結論を出してキャラクターネームに”Kaito”と入力。作成、と押した時に、ふと疑問が頭をよぎった。あれ?ALOって種族の領地が初期スポーンじゃなかったっけ?案内役との合流、大丈夫かな?
その疑問に対しての答えはすぐに教えられることになった。
背景が高速で変化し、僕は自分の足が地面に着くと思っていたその時。周囲を飾る景色は間違いなく上空そのものだった。
「なんでええええええええええええええええええええええええ!?????????」
いきなりの浮遊感に叫びながら落下を始める体。
まずいまずいまずい!!いくら実際に死なないとは言ってもこの高さからの落下死はしばらくトラウマになりそうだし、なによりログイン早々にデスペナルティなんてもらいたくない。
そうだ!このゲームは空を飛べるはず!!説明書には左手に補助スティックが・・・!あ・・・ヤバい落ちる速度が速い・・・!
僕の視界にはすでに地面と2人のプレイヤーが目に入っていて、補助スティックで操作する暇もなく・・・気が付けば男性プレイヤーにお姫様だっこで救助されていた。
「無事か!!無理して飛行したのか?!なんて無茶を・・・!というかサラマンダーがなぜここに?」
本気で心配する彼に僕は申し訳なさそうに頭を下げつつ、地面に下ろしてもらう。
「えっ・・・と信じてもらえるかわからないけど僕、今初めてログインしたばかりで・・・ログインしたら何故か上空にいて、落ちてきた次第です。はい」
困ったように頬をかくと女性プレイヤーの方が近づいてきて「ナイスキャッチー!バルムンク(^^♪」と言いながらパチパチと手を叩いていた。ん?バルムンク?
「バルムンク?」
「ん?ああ。俺も初心者に名前が届くくらいには有名になったか。そうだ、俺は”蒼天のバルムンク”だ。よろしく頼む」
こう言ってはなんだけど、知り合いが他人行儀に、カッコよく自己紹介すると笑いがこみ上げてくるね。
僕が肩を震わせているせいかバルムンクは少し怪訝そうな顔をしている。
「どうした?」
「ううん。――僕は”カイト”。久しぶりだねバルムンク」
そう挨拶をするとバルムンクは口を少しだけ空けて呆けている。その横でミストラルが満面の笑みで駆け出してきた。
「あー!(^^)やっぱりカイトなんだ!!久しぶりだねぇ!!」
「わ、その喋り方はミストラルだね。うん、久しぶり。案内役ってのは2人のことだったんだね」
まるで息子を撫でる母親のような――いや、実際に一児の母なわけだけど――笑みを見せるミストラルに僕はされるがまま撫でられながら一緒に笑う。
そうして僕たちがわちゃわちゃとしているとバルムンクがわざとらしく咳払いをして僕の前に立った。そして手を差し出してくる。
「久しぶりだ、カイト」
「うん。またこうして並べることがうれしいよ」
「ああ、俺もだ」
僕たちは固く握手をしながら一緒に微笑む。
「男の友情だねぇ~('ω')」
そう茶化すミストラルに照れながら僕は2人をよく見る。
「なんか2人ともThe Worldの頃を思い出す格好だね」
バルムンクはあの頃と同じように白髪に白の鎧、長めの片手剣を携えている。羽があるこの世界だからなおさら”蒼天のバルムンク”を想像しやすい。ミストラルもThe、魔法使いといった格好の帽子とあの頃の白と水色がベースだ。
「ま、オンラインゲームをやるとどうしても思入れのある恰好になっちゃうよね~(;^ω^)」
「わかるよ。僕もSAOは”カイト”をモチーフにエディットしたし」
「だよね~。中学生だったカイトなんかは特に強く記憶に残ってるよね(; ・`д・´)」
「うん。それはもうしっかりと、ね。―――バルムンクがALOやってるってことはオルカもやってるの?」
僕はしっかりと肯きながら疑問に思ったことを聞く。
「一応、な。やっている時間で言えば俺のほうが遥かに多い」
「あれ?そうなんだ?てっきりまたタッグを組んでやってるのかと」
「カイトが意識不明になったVRMMOだぞ?最初は発売されるってにも正直正気を疑ってたし、警戒して誰もやる気はなかったのさ」
「じゃあなんで?」
「俺は
「そこでバルムンクが安全性を私たちに教えてくれて、私たちも始めたんだ~(^^)」
「もしかしたら俺たちがSAOにログインできて、ここでの知識が役に立つかもしれない、と藁にも縋る思いでな」
「すっかり普通に遊んでいるけどね~(^^♪」
SAOにログインする気であったことに僕が大きく目を開いて驚いているとバルムンクはニヒルに笑った。
「俺たちが案内役に指名されたのはおそらくALOを一番プレイしているからだろうな。最初に始めた俺、育児が落ち着いたミストラルがそれこそ家事以外の時間ずっとログインしているからな」
「ずっとじゃありません!ちゃんと子供と家族の時間もあるよ~"(-""-)"」
「俺がログインすると、いつもいるじゃないか」
「それはバルムンクが仕事終わりにログインするからでしょ~(;´・ω・)それに娘もこのアカウントでログインしてるもの」
2人のその会話を聞いていた僕は楽しくなって笑い出し、それにつられて2人も笑い出した。
そうしてひとしきり笑った後、僕はあることを思い出してメニューウィンドウを操作する。
「どうした?カイト」
「ヘルバがログインしたらすぐに使えって言ってたアイテムがあって・・・あ、あった」
アイテム欄に一つだけ。”プライベートピクシーの卵”と書かれたアイテムを選択。オブジェクト化させる。
「”プライベートピクシーの卵”・・・だと?!なんでそんなものをカイトが持っている?!」
「え?珍しいものなのこれ?」
「それはALOのプレオープン時にあった販促キャンペーンで抽選配布されたものだ」
「・・・もしかしてヘルバが抽選応募してた?ダイブしているアミュスフィアもヘルバが用意したものだし」
「俺達とは別の画角で調べてたあの女なら十分にありえるか・・・」
バルムンクは凄く訝しい顔をしながら自分自身を納得させるように唸る。
僕はミストラルと顔を見合わせて互いに困った顔をしながら、僕は卵の使用を選択した。
すると卵は僕の手から少しだけ浮き上がり、光を放つ。
少しまぶしい位の光に思わず目を細めると、見覚えのある少女が光から出てきた。
「お父さん!!」
「ユイ?!!」
見覚えのある少女――ユイが空中から飛び出してとっさに抱き留める。彼女は再び会えたことに涙をこぼしながら強く僕に抱きついてきた。
「また、会えてうれしいです!」
「うん。僕も会えて嬉しいよ、ユイ」
涙を零し続けるユイを宥めるようにさすりながら、僕も頬が緩んでいたけれど、ハッと困惑の視線と、生暖かい視線を感じて、僕は苦笑いをバルムンクとミストラルに返した。
少しして、ユイが落ち着くと僕はユイを下して、彼女を2人に紹介する。
「彼女はユイ。えーと・・・」
「初めまして。《メンタルヘルスカウンセリングプログラム試作一号(MHCP001)》、名前はユイです」
そういってペコリとお辞儀するユイにつられて頭を下げるバルムンクと、目線を合わせてニコニコと彼女に近づくミストラル。
「よろしくね~(^^)ユイちゃん」
「メンタルヘルスカウンセリングプログラム、とはいったい?」
一度聞いただけで”メンタルヘルスカウンセリングプログラム”てスラスラ言えるバルムンクに関心しながら、どう説明しようかと考えているとユイが僕の手を取った。
「お父さん。私が説明しますね」
できた”娘”だなぁ。もう。
ユイは、自分がSAO内でプレイヤーのメンタルケアのために作成されたプログラムであることを含め、SAOでの出来事を話し、最終的に僕がデータドレインで救出したことを話した。
SAO、という単語にバルムンクは大きく眉間に皺がよっていたけどそれでも最後まで黙って聞いてくれていた。
「そうして私はお父さんのナーヴギアのローカルに保存され、お父さんが現実世界に帰ってからはヘルバさんがサルベージを進めてくれていました。
ただ、未だにSAOに居た全員がまだ意識を取り戻していないことや、ALOがSAOに近いことを踏まえて、ヘルバさんは私がALOで何かしらできることがあるんじゃないかって、あらかじめ所持していたプライベートピクシーのデータに私を組み込んでくれました」
ユイの入れ物の話が後回しにしたのこの関係なのかな。
「ヘルバさんの想定通り、私はSAOでの権限と等しいものが確認できています。私が保持している権限でわかることは――このALOは限りなくSAOに近いです。細部は古いバージョンになっているようですが基本ベースはほぼ同一といっても過言じゃありません」
ユイの言葉にバルムンクが大きく目を開き、重いトーンで聞く。
「それは・・・大丈夫なのか?」
「安全面でいえば大丈夫だと言えます。危険なのはSAOのソフトではなくて、ナーヴギア、ハード側です」
そう断言するとミストラルがホッとしたように息を吐いた。
「・・・すまない。少し離席する」
バルムンクがそう言うと彼のアバターは俯いた。
「お父さん、このALOは自分の所属の領地以外では即ログアウトすることができません。その代わり、アバターをそのまま残して、一時的に接続を切り、現実世界には帰ることが可能です。もちろんその間無防備になるのでPKや盗みなどに気を付ける必要はあります」
僕が軽く首を傾げたのを見てかユイがそう耳打ちしてくれた。
「それと・・・これはここだけの話ですが・・・このALOは似ているサーバーではなくて、SAOのコピーサーバーそのもので間違いありません。ヘルバさんは事前にこれを予測していましたが、その・・・その話をしたら、晶良さんを始めとした誰もがログインするのを止めるだろうから、と話すのは控えたそうです」
ユイの言葉に僕は苦笑いする。確かにあれだけ心配かけちゃってるから絶対に止めるよね。
「あと、お父さんが装着しているアミュスフィアはお父さんが使っていたナーヴギアのデータを移行してあります。
”ALOがSAOのコピーサーバーならば、SAOのカイトのデータを呼び出し、基幹フォーマットが同様であるステータス類がそのまま移行できる可能性がある”とヘルバさんが話していました。今、お父さんのステータス類を確認した限り、ヘルバさんの予測通りみたいです」
そう言われて僕は熟練度などを確認すると、確かに初期ログインとは思えないステータス、習熟度、所持金になっている。
「”文字化けして異常アイテムとして運営に認識されるとまずいからアイテムはすべて破棄するわね、ごめんなさい”とも言ってました」
謝ることなんて何一つない。彼女が、僕の身を心配してくれての行動なのだから。
そうしてひそひそ話を終えると気を使って離れていたミストラルがニコニコで近づいてくる。
「お話終わった~?(^^)仲良しさんだね~。ところでなんでカイトがお父さん?」
「ユイはアウラの基本構造を元に、そして僕の経験を学習して生まれたんだ」
「わ~ぉ!(゜-゜)じゃカイトとアウラの子供ってわけなんだね~」
そう言われるのは少し気恥ずかしさがあるのでユイの頭をなでて誤魔化す。ユイは頭を撫でられたことに嬉しそうに微笑む。
「パパとママもいます!」
「パパとママ????複雑な家庭(;´・ω・)?」
「育ての親、的な・・・感じかな」
ミストラルのどこか冷えた目線に苦笑いで返す。別にユイを蔑ろにしているわけじゃないからそんな目で見ないで。
ユイを見れば悪戯が成功した、と言うような顔で僕を見ていた。わざと言ったな、この子め。
そんなユイは何かを思い出したように手をパチンと叩くと、僕の手から離れ、くるりんと回ると光に包まれた。そうして光が消えるとそこには小さくなって翼の生えたユイがいた。
「これがプライベートピクシーとしての私です!これなら他プレイヤーに目撃されてもおかしくはないので大丈夫です!」
Vサインを出したユイはそう言って僕の肩へと乗った。それとタイミングが合うようにバルムンクが顔を上げる。
「すまない、待たせた。――ユイはどうした?」
僕が右肩に乗るユイを指すと、バルムンクは「それがプライベートピクシーとしての姿か」とあっさり納得した。
そうして「出発しよう」と、ふわりと浮くバルムンクにミストラルが声を上げる。
「こーらー!"(-""-)"カイトは初心者なんだよ!いつもの感覚でいかないの!」
「ん、ん、ああ。そうだったな。すまない」
「バルムンクは補助コントローラーなしで飛べるんだ?」
2人の会話よりも僕は違うことに目がいってしまっていた。
「ああ。これを行うには本来人間にはない器官を意識する必要があるが、それができれば補助コントローラーなしで飛行は可能だ」
「どうやってやるの?」
バルムンクは僕の背中に回ると、肩甲骨の少し上に触れる。
「今触っている場所はわかるな?まずはここから筋肉と骨、羽が伸びているイメージを持つ。できそうか?」
僕は一度目を瞑り、触られている箇所に意識を向ける。
「さすが、二年間も仮想世界にいたおかげか吞み込みが早いな。そこから実際に肩甲骨や肩を動かす要領で羽を動かすイメージだ。」
バルムンクの言葉に従うように動かすと僕の身体が一気に浮き上がる。
「わ!あわわっと!」
「落ち着け!細かく動かすイメージだ!」
バルムンク、ミストラルも並んで飛び上がり僕の手を掴んでくれる。2人に倣うように僕も細かく羽を動かしホバリングへ移行すると手を放してくれた。安定した羽ばたきで3人で飛ぶ。
「一発でここまでできるのすごいよ!カイト(^^)」
「先生の教え方が上手だからね」
そう返すとバルムンクはまんざらでもない顔をした。
「ごほん、今度こそ出発しよう。今いるのはスプリガン領の近く。世界樹のある央都《アルン》にいくために、まずはここから南西に向かって洞窟までにつくのが今日の目的。だが一度装備を整えた方がいいな。初期装備ではさすがに厳しいだろう。――カイト、所持金はどれくらいある?」
「うーん・・・結構あるよ?」
「・・・・まあ、いい。金に糸目を付けないならそれなりの装備になるはずだ。必要なら俺からも援助しよう。ミストラル、ここは君の所属の領地だ。案内は任せて構わないな?」
「おっまかせ~!ま、わたし自身《レネゲイド》に等しいからそこまで詳しくないけどね~('_')」
「レネゲイド?」
初めて聞く単語に首を傾げる。
「自身が所属する種族の領地を捨てたプレイヤーを指す総称だ。理由は様々だが・・・ALOの最終目標は『自種族が世界樹に到達し
だから俺達みたいに種族を無視してパーティを組んだり、ミストラルみたいに、そもそもの目的がトレジャーハント、アイテムコンプリートを目指しているようなプレイヤーは領地に対して帰属意識が低いという目で見られるわけだ」
「バルムンクもそうなの?」
俺達、という単語に少し驚いた。バルムンクはこういうの先導して率いると思っていたから。
「詳しくは後で説明するが・・・これから向かう世界樹の攻略、一度だけ挑んだことがあるんだ。それを経験した時に思ったのさ。これは”一種族じゃクリアできない”とな。
ただまぁ、俺が”シルフ”、オルカが”ウンディーネ”を選択して、それでもタッグを組んでいたから他からは元々そういう風に見られていたんだろうけどな」
「オルカがウンディーネ?!(笑)なんで?」
キャラにあってないだろう、と思わず吹き出してしまった僕にバルムンクは少しだけ照れくさそうに横を向いた。
「
あちゃー、つまりは僕達3人はまったく同じことを考えて種族を選んだわけなのか。うん、これは少し恥ずかしいね。
「わたしはスプリガンだよ~(^^)」
「トレジャーハントが得意って話だったもんね」
「種族カラーとは全然逸脱しているからわかりずらいけどな」
「それを言ったらバルムンクもそうじゃない~?どっちかっていうとウンディーネだよ(。-`ω-)?」
ニヤニヤと笑いながらミストラルは先導しながら飛び始める。そうして僕たちは近況の話を挟みながら街へと飛んだ。
「ダガー2本?」
「うん。できれば同じ性能のものほしいな」
ミストラルが勧める鍛冶屋直営店のお店で武具一式を揃えようと店員のプレイヤーが訝しげに返事を返した。
「まぁ、俺としては構わないが・・・二刀流でもやるのか?」
店員は知り合いであるミストラルに心配そうに視線を送っていたけど、ミストラルはサムズアップして返事を返した。
「この子なら大丈夫!お金に糸目を付けないらしいから最高級お願い!(^_-)-☆」
「初心者装備の割に羽振りいいじゃねぇか。要求ステータス足りなくても知らねぇぞ」
そう言って試用で渡してくれたダガー2本を僕は構える。ブランクは二ヶ月程度。久しぶり、なんて感覚はこれっぽちもないね。
あの頃を、双剣をイメージして逆手に構えたダガーを振るう。一振り、二振り、三振り。振るう度にすべてが僕に還ってくるような、洗練されていく感覚を実感する。
よし、問題ないね。そう思って顔を上げるといつも間にかギャラリーができていて、感嘆の声と少しの拍手を貰った。
「えっと・・・これ買います」
照れながら店員にそう言い購入ボタンを押そうとすると店員は待ったをかけた。
「久しぶりにいい剣士を見た!値引かせてくれ!!」
「・・・それ、某漫画の真似?」
「お、わかる口か?まぁさすがに代金はいらねぇ、とは言えないがな。いいもの見たと思ったのは事実だよ」
店員はそう言いながらメニューを操作して金額が3割ほど低くなる。
「うん、好意は素直に受け取るよ。ありがとう。――また近くに来るようだったら寄らせてもらうね」
お礼を言って購入ボタンを押す。店員はサムズアップで返してくれた。
バルムンクが有名なプレイヤーであることも作用してか、人だかりから抜け出すのに少しだけ苦労して。僕は購入した一式を装着する。それを見ていたバルムンクとミストラル、ユイはどこか嬉しそうな顔を向けてくる。
「どうかした?」
「いいえ。やっぱりお父さんはその色がとてもよく似合います」
”カイト”と同じ色の防具、そしてベレー帽。結局、僕もバルムンクやミストラルのことが言えない格好となったわけだ。なので笑って誤魔化す。
「だいぶ時間を食ってしまったな。フィールドに出た時のログアウトの制限もあるからな、何とかしても洞窟前の村に着くぞ」
バルムンクのその言葉に僕とミストラルは「「がんばるぞー!おー!」」と息ぴったりで腕をあげて、ユイも楽しそうに腕を上げ、バルムンクもニヒルに笑いながら腕を上げた。
フィールドに出て、ALOで初めての戦闘をした感想は――ずっと飛んで行けばいいんじゃない?と聞いたら飛行制限があると言われた。無限に飛べる、みたいなキャッチコピーで宣伝してたんだけどな――SAOのコピーサーバーということもあってか、特に違和感もなく。
強いて言えば魔法って凄いなって思ったくらいで、久しぶりのパーティーであるバルムンクやミストラルとも弊害なく、戦闘が行えた。
「双剣、滅茶苦茶板についてるね~(・□・;)」
「
「SAOに双剣のスキルがあったのか?」
「えーと・・・アウラが僕のために用意してくれたんだ。その前はシステム外だけど独学で」
「システム外はデメリットが多いんじゃないのか?」
「うん。だから限られた時にしかやらなかったよ。基本はダガー一本」
そう言いながら片方をしまうとダガーを逆手から構え直して、モンスターを一気に斬りつける。ミストラルから拍手を貰いながら、モンスターを一掃する。
「なるほど。となると問題は魔法か」
「ALOはPK推奨だもんね。一般的なものは一通りある感じだったよね?」
「そうだよ~(*^^*)攻撃、補助、バフ、索敵、回復、あとは通信したりするのもあるね」
結構多種多様に使える感じなんだね。
「ちなみに魔法は必中?」
「必中魔法もある。当然だがその分威力は落ちる」
それもそうだよね。全部必中だったら皆タンクみたいになっちゃうし。
そんなことを考えながら、僕は覚えている火の魔法をユイの指示――ちゃんと詠唱しないと発動できないらしい――に従って放つ。放たれた炎は、結構な速度でモンスターにあたった。
「おお。初めての感覚で面白いね」
「今回、カイトがそこまで使用することはないだろう。メイジとしてミストラルがいる」
「魔法の詠唱覚えるの、おばさんには本当に大変だったけどね~(T_T)」
「戦術は基本的にモンスターもプレイヤーも一緒ってことだね。僕とバルムンクが前衛でどんどん突っ込んで、後ろからミストラルが支援する」
「そうだ。あと俺も回復魔法は使える。場面によってはカイト一人で突っ込んでもらうことになるだろう」
「まっかせて!ソードスキルが無いながらも仮想世界での戦闘には僕に一日の長があるからね」
「わたしも横で周辺の状況をお知らせしてお手伝いできます!」
僕がサムズアップで返事をするとユイも習うようにサムズアップして息ぴったりにポーズを取った。そんな僕たちにバルムンクはスカした感じに笑い、ミストラルは微笑ましく見てくる。
いけないな。なんか子供みたいに――2人からしたら僕は年下だけど――動いちゃってる。少し浮かれてるのかもしれない。気を引き締めなきゃ。
そうしてバトルの確認がてらの周辺モンスターの掃討が終わって、バルムンクが納刀するとマップを開いていた。
「ここからなら飛んで村へと行ける。長い時間ログインしている、急ごう」
「そうだね~。そろそろログアウトしてご飯を作らなきゃ(・ω・)」
ログインしてからおよそ5時間。
ヘルバからは8時間以内に・・・と言われてたけど、そうだよね。以内と言われてるからと言ってそれをギリギリまでログインしてるわけにもいかない。ずっとSAOに居た弊害か、少し気が早いっているのか、ログアウトしないといけない、という感覚が抜けている。現実世界に帰ってきていることをもう少し意識し直さないと。
そう考えながら2人に続くように僕も飛ぶ。まだ初日。最速で、けど焦らず、確実に、一歩一歩進んでいこう。
各々の種族選択が一番の課題でした。アバターのイメージは別にあるけど、スタイルや意味合い的にはどうなんだろう、と暫く悩んでいました。
多くの方に閲覧いただいているようで、感謝感激雨霰です。亀更新にならないように頑張ります。
今回は長くなりましたが、一話にまとめておきたくて、長いながらもこのまま投稿に至りました。
長い一話を閲覧頂きありがとうございます。
評価、感想とても励みになっております。ありがとうございます。